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全国消団連は「地方消費者行政専門調査会報告書案(骨子)」に
関する意見募集に対して意見を提出しました。

2011月2月15日
 

地方消費者行政専門調査会報告書案(骨子)に関する意見
 

全国消費者団体連絡会
東京都千代田区六番町15 プラザエフ6階
電話 03-5216-6024
FAX 03-5216-6036
E-mail webmaster@shodanren.gr.jp


 今回の意見募集に対して、全国消費者団体連絡会として、以下のとおり、意見します。
 

1.「1.消費者行政における国と地方のあり方」について

【意見】
 「(1)身近な相談窓口ネットワークの構築、(2)消費者事故等の情報収集体制の整備については、国としても責任を持って推進を図る必要があり、一定程度の負担や技術的支援等を検討する必要」との記述のうち、「一定程度の負担」については、「一定年数、消費者行政の強化に活用できる財政支援」である旨の記述とすべきです。

【理由】
 平成21年度から3年間の地方消費者行政活性化基金により、全市町村の約半数において消費者行政を推進する体制がとられました。しかし、3年間の「集中育成・強化期間」の最終年度を前に、地方自治体の中には、「現在の財政状況では、4年目以降は財源確保が不透明であるため、相談体制などの拡充した部分を縮小せざるをえない」との声があります。昨年10月に日本消費経済新聞社と東北大学大学院が実施した地方消費者行政アンケートでも、消費者行政担当職員・相談員の7割近くが、国の恒久的な財政支援を求めていることが明らかになっています。全国の消費者相談件数は依然として年間100万件近くに高止まりしている中で、地方消費者行政は充実・強化の途上であり、自治体の間でも大きな格差があります。一定の水準のサービスが行える消費者行政を定着させるためには、「集中育成・強化期間」後も引き続き財政支援を行う旨を明記すべきです。
 なお、一括交付金での財政支援では、他の部門へ優先的に活用する自治体が多く、消費者行政にほとんど利用されていません。年末から取り組まれた「住民生活に光をそそぐ交付金」では、使途の一つに消費者行政が挙がっているにも係わらず、実際の活用は進んでいません。そもそも消費者行政に係る経費の大半が人件費であることを鑑みれば、単発の交付金では相談体制強化(相談員人件費)等への実際の活用は困難です。単に財政支援を一括交付金だけとせず、少なくとも地方消費者行政活性化基金のように、消費者行政の強化に数年間活用できる支援を行う旨も記載すべきです。
 

2.「2.相談ネットワークのあり方について」

【意見】
 「消費者行政の拠点整備を推進する必要」について賛成します。そして、広域連携体制を取る場合だけでなく、市町村単独で相談窓口を整備する場合にも国は財政支援を行う旨を記述すべきです。

【理由】
 消費者被害は複雑化・広域化しているにも関らず、全国1772の市町村のうち413市町村には相談窓口が設けられていません。消費者の相談を受ける権利や救済される権利を擁護すること、相談や救済などを通じて悪質な事業者が市場から駆逐されて公正な市場を形成することが消費者行政の最大の任務であり、特に直接消費者(住民)と向き合う市町村の重要な役割です。居住地はどこであろうと消費者としての権利を擁護され、同質同程度のサービスを受けられるよう、市町村は、まずは消費者相談体制を整備すべきです。そしてそのためには国の財政支援は必要欠くべからざるものと考えます。
 なお、骨子では、広域連携体制を取れば財政支援を行うと読み取れる記述となっていますが、市町村単独で相談窓口を整備する場合にも国は財政支援を行うべきであり、文章構成を改めるべきと考えます。
 

3.「3.消費生活相談員の処遇のあり方」

【意見】
 「継続的な研修と経験の積み重ねによる知識、能力の維持・向上が不可欠。その点でいわゆる雇い止めは適当でない。」との記述に賛成します。

【理由】
 複雑化する相談内容に対応するためには、専門的な知見やスキルが必要であり、それを培うためには、研修と長年の現場での経験の積み重ねが重要な要素であることから、人材育成としても長期雇用が必要です。
 

4.「4.情報収集・分析及び情報提供のあり方について」

【意見】
 PIO-NET入力事務費は、国の財政措置として負担することを明記すべきです。また、PIO-NETの設置範囲の拡大について、適格消費者団体等への配備についても記載すべきです。

【理由】
 地方自治体は消費者安全法に基づき、重大事故等の情報を国へ通報する義務があり、国はこの情報をもとに、国民全体への注意喚起や企画立案、法整備等に活用しています。そのことからみても、PIO-NET 入力人件費等のコストは、国の財政措置として負担すべきだと考えます。
 更に、PIO-NETの設置範囲の拡大については、消費者被害の情報収集・拡大防止の役割を果たしている適格消費者団体等への配備についても記載すべきです。
 

5.「6.地方自治体における法執行の位置づけ」

【意見】
 「(3)都道府県等の執行権限強化」について賛成します。特に(3)(2)の特商法に関する記述については一日も早い実現を望みます。また、法執行に係る経費への財政支援についても記載すべきです。

【理由】
 消費者被害には、通信やマルチ商法など複数県や全国にまたがる事案が圧倒的に多く、その被害も急増しています。しかし、都道府県が行った行政処分の効果は当該都道府県に限定されており、他の都道府県での被害発生を防ぐことが出来ません。従って処分の効果を全国に及ぼすことが必要です。
 なお、執行権限強化に際しては、国による地方の担当職員に対する徹底した教育の実施などの支援が必要なことはいうまでもありません。
 また、都道府県をまたぐ広域的・全国的事案に対して自治体が行う法執行業務は、事実上国の補完的役割を果たしていることに鑑み、自治体の法執行に係る経費への財政支援についても記載すべきです。
 

6.「7.地方消費者行政の基盤・環境の整備について」

【意見】
 「○ 地域の現場で活動する多様な主体の参画による社会教育の充実を図ることが望ましい。」「○ 行政と消費者団体、事業者団体などの協働により、消費者教育や啓発活動等の推進を図る。」について、多様な主体間の面的なネットワーク構築を国・自治体の役割として明記してください。そして、協働の主体としての消費者団体等に対する支援策を明記すべきです。

【理由】
 多様な主体の参画による社会教育の充実や、行政と消費者団体等や事業者団体等との協働による、消費者教育・啓発などを盛り込んだことは評価できます。多様な主体が行政と協働して教育・啓発という基盤整備を進めるにあたっては、行政−消費者団体等間、行政−事業者団体等間という主体別の直線的な関係構築ももちろん必要ですが、関係主体間の面的なネットワーク形成も必要です。多様な知見や技術をつなげることで、地域の消費者行政の基盤・環境はより充実したものとなります。このようなネットワーク形成のためには、国・地方自治体の役割は大きいと考えます。従って面的なネットワーク構築のための国・地方自治体の役割に焦点を当て、情報ネットワークや課題検討のための「円卓会議」づくりなど、具体的に明記すべきです。
 骨子では、消費者団体等の活動が地域の消費者行政に刺激を与えて、内容を充実させてきたと評価しています。消費者団体等のボランタリズムに頼るのではなく、協働の主体として継続的な活動を展開できるようにするためにも、消費者団体等に対する活動支援制度の構築や充実についても記述すべきです。

【意見】
 地方自治体が消費者団体、福祉関係者など多くの主体の取り組みを積極的に支援するためにも、消費者教育を消費者安全法の中に位置づけ、国が技術面、財政面での支援を行うことを明確に記述すべきです。

【理由】
 児童・生徒に対する消費者教育は学習指導要領に位置付けられましたが、それ以外の世代については置き去りにされている感があります。
 幅広い世代が消費者教育を受けることの担保として、消費者教育を消費者安全法の中に位置付けることを明記すべきです。
 

7.「8.今後の地方消費者行政の充実・強化の進め方」

【意見】
 「○ その他法執行の強化等に係る法令改正等が必要な事項やPIO-NETの入力事務に係る国の財政負担の検討については、平成23年度以降、速やかに作業に着手し、遅くとも平成24年度には、実施されることが望ましい」とありますが、国の財政負担の検討は、「PIO-NET入力事務」に限定すべきではありません。また、今後の国による財政支援の検討にあたっては、これまでの財政支援の活用状況の分析を行い、最も効果的に活用されうる形で具体化する旨を記述すべきです。

【理由】
 地方消費者行政をめぐる最大の課題が財政難であることをふまえると、今後の国による財政支援は、最も有効な形で具体化する必要があります。また、本意見書で述べてきたように、「PIO-NET入力事務」以外の財政支援も必要であり、これらも地方消費者行政活性化基金が終了する平成24年度には実施されることが必要です。

以上

【この件に関するお問い合わせ先】

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