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12月2日に全国消団連は「新たな『消費者基本計画』に
盛り込むべき施策等へについての意見」を提出しました

2009年12月2日

消費者庁企画課御中

全国消費者団体連絡会
事務局長 阿南 久
〒102-0085東京都千代田区六番町15
プラザエフ6F
電話 03-5216-6024
FAX 03-5216-6036
EMAIL webmaster@shodanren.gr.jp


新たな「消費者基本計画」に盛り込むべき施策等についての意見


 日頃より国民生活の充実のため、消費者行政の推進にご尽力いただき、誠にありがとうございます。

 消費者基本法をもとに、平成17年度からの5年間計画として、現行の「消費者基本計画」が策定されました。本年度はその最終年度にあたりますが、消費者庁・消費者委員会発足というタイミングの中で新しい「消費者基本計画」を策定されるということは、大変意義のあることと考えます。

 つきましては、消費者行政が新たに展開するための一つの契機として、消費者基本計画を消費者の多くの希望や期待の詰まった計画としていただくよう要望いたします。

 下記のとおり、意見を述べさせていただきます。

1.新たな「消費者基本計画」の基本的な方向性と課題について

(1)項目整理のあり方について

 消費者基本計画は、全省庁の消費者政策上の課題を幅広く網羅することが重要です。今回の意見募集で示された「新たな消費者基本計画の基本的な方向性と課題」の案に記載された大項目は、主として消費者庁の重点課題の視点からの整理となっており、消費者庁の重点課題には当てはまらないが消費者政策上重要となる課題の多くを「消費者の自立支援」の一項に当てはめる整理には無理があると考えます。白紙の状態から消費者基本計画の検討を開始するのであれば、より消費者にとって分かりやすい項目整理を行うことが重要であり、次項で触れるように、テーマ別に項目をまとめる方が簡潔なとりまとめになるものと考えます。

(2)「消費者の安全・安心の確保」について

 別紙1中の「消費者の安全・安心の確保」には、平成21年7月の国民生活審議会の意見が引用されていますが、たとえば「消費者行政一元化の中での重要な視点」が原案の3点でよいのか等については、さらなる検討が必要です。「消費者の権利の尊重と自立の支援」などを明確にした消費者基本法や、消費者基本法改正の基礎となった『21世紀型消費者政策の在り方について』(第18次国民生活審議会消費者政策部会報告書)との関係で重要な視点を検討することも必要であると考えます。なお、別紙1には「被害に遭いやすい生活弱者」「被害者救済」といった消費者被害に焦点を当てた表現が散見されますが、基本的に消費者政策を「消費生活に関わる政策」として、より広い視点で捉えることが必要です。

 また、消費者基本計画は、行政機関が自ら実施する事項、及び関係者の取り組みを行政機関が支援する事項をとりまとめるものであると考えますので、「消費者の安全・安心の確保」中の「社会全体の中でそれぞれの取り組むべき課題と役割・責務」についても、その目的を達成するために消費者行政(各省庁)が何を取り組むのかについて、明確に記述する必要があると考えます。

(3)消費者基本計画の組み立てについて

 消費者基本計画自体については、3ヵ年計画とすること、毎年見直し修正をはかること、毎年の検証・評価の時期を十分検討すること(各省庁の次年度予算・事業計画に影響を持ちうるようにすること)、が必要と考えます。また、消費者基本計画は、本来消費者庁も含めた各省庁の施策を検証・評価・監視するツールであるという趣旨を踏まえれば、今後の原案の作成や検証・評価・監視作業などにおける消費者庁と消費者委員会の役割分担についても十分な協議が必要と考えます。

2.新たな「消費者基本計画」に盛り込むべき施策の例

 新たな消費者基本計画には、以下の施策を盛り込むべきと考えます。項目立ても、テーマごとに整理する方が簡潔で分かりやすいものと考えます。なお、以下の論点のうち、消費者教育・消費者団体支援などについては、各テーマの項目の中でも触れるとともに、テーマ横断的に取り組むべき部分については独立して項目を立てています。

(1)製品安全関連

消費者庁・関係省庁の事故情報の公表のあり方検討
事故情報データバンクの運用方法・改善検討
海外での消費者事故情報について、事業者の国への報告義務化と国の分析・検討
メディアやIT(携帯メール等)の活用を含めた社告・リコール情報の提供のあり方検討
PL法改正の検討
安全教育として、交通事故や火災だけではなく、製品が本来持つ危険性を教えること
(電気製品は感電・発火する、ガス機器は不完全燃焼で一酸化炭素が発生する、
化粧品など化学物質は過敏症になることがある、薬は副作用がある、等)
商品テスト機関(国民生活センター・NITE・FAMIC等)のあり方・連携強化策の検討と、分析を行う人材育成・確保策の検討
中立的な第三者委員会の設置を含めた、消費者事故等についての事故原因調査機関のあり方検討

(2)食品安全、食品表示・広告、食品に関する教育・食育関連

食品の安全行政に関わるリスクコミュニケーションの推進
  政府全体で行う食品安全行政に関する総合的なリスクコミュニケーションについて、実施計画の策定・運用及び実施後の定期的な改善が有効に実施されるよう、消費者庁による総合的な調整
  関係省庁(厚生労働省、農林水産省、食品安全委員会、環境省等)が個別に行うリスクコミュニケーションについて、運用の改善・推進に関わる計画の策定と実施後の振り返りの実施
  リスクコミュニケーションで関係者から出された意見・情報について、反映の有無の工夫、及び反映の有無の理由が明確となるような情報提供の実施
  リスクコミュニケーションを担う人材育成の推進(例:関係省庁職員に対する教育訓練、リスクコミュニケーターの養成など)
関係者によるリスクコミュニケーションの推進
  食品の安全に関わる機関・組織(事業者、消費者団体、地方自治体等)が行うリスクコミュニケーション活動への国の支援策の検討(例:リスクコミュニケーションを向上させるためのフォーラム、保健所の公開見学会など)
食品の安全に関わる考え方・知識の情報提供と理解促進
  リスク分析の基本的な考え方・知識の理解促進と普及:現在の食品安全行政推進の基礎的な考え方であるリスク分析や食品安全に関わる基本的な考え方・知識について、関係者(議員、行政担当者、消費者、メディア等)間で理解を深めるための施策の実施
  妊婦、高齢者や食品の安全に高い関心を持つ消費者など特定の階層を対象とする情報提供や知識の普及への支援
  食品の安全について科学的なものの見方を養うための教育(学校教育、社会人教育など)
事故・問題発生時の拡大防止策の検討
  事故・問題発生時に、発生地の速やかな特定や問題の拡大防止に役立つトレーサビリティーの普及促進
食品表示・広告の適正化と、消費者・事業者に判りやすい表示・広告制度のあり方の検討
  悪徳な事業者による食品表示偽装・誇大広告への監視・制裁及び健全な事業者の育成による食品表示・広告の適正化の推進
  現行の食品表示に関わる法制度・運用の検証とあり方の検討(例:健康食品に関する表示・広告、栄養改善法に基づく栄養表示基準の運用、JAS法や食品衛生法に基づく表示記載事項、など)
食品表示を理解するための基礎的な知識についての周知及び普及啓発
  人の健康と栄養摂取との関係、食品の劣化や腐敗など食品の持つ性質、賞味期間と消費期限の理解等についての教育・普及啓発(学校教育、社会人教育など)
食にかかわる教育を通じて、消費者が生きるための基本的な力を身につけられるような取り組みの検討と実践
  食育基本法にもとづいた関係省庁の食育活動との有機的な連携
  食品の安全に関する基本的な概念や考え方についての教育(学校教育、社会人教育など)

(3)環境関連

環境に関する消費者教育の推進
  製品の環境負荷をライフサイクルで捉えるという考え方の普及
  環境ラベルの内容理解の促進
  カーボンフットプリントなど新しい環境情報に関する普及啓発
  カーボンオフセットなど新しい仕組みに関する普及啓発
  生物多様性の保全を含めた持続可能な社会づくり、「環境の保全」のための環境教育の推進のための人材育成(化学物質アドバイザー、環境カウンセラー等)
環境リスクコミュニケーションの充実
  化学物質のリスクのわかりやすい表示の検討
  環境アセスメントの対象事業の拡大及びアセスメント実施者の中立性を確保できるような措置の検討
  誰もが簡単に見つけることができ、利用できるMSDS(化学物質等安全データシート)の情報提供のあり方の検討
  消費者に身近な化学製品に関する危険有害性情報の提供と理解の促進
  化学物質ファクトシートの作成継続と、家庭用品など身近な製品中の化学物質への対象拡大
環境に関する消費者団体への支援
  環境保全団体も含めた消費者団体への支援方法やあり方の改善
  新技術や国際的な環境情報についての情報提供とあり方の検討
  NPO・消費者団体などが実施する、省資源・省エネルギー・生物多様性保全などに関わる先駆的な実践活動や普及啓発活動の支援
環境関連の規格の充実
  新技術に関する進捗状況等の情報提供の検討
  規格作成段階への消費者の意見反映
適切な環境情報の提供
  信頼できる環境ラベルの普及を目指し、業界に対する適正表示の指導の継続及び消費者を裏切る表示が発覚した場合の措置の検討
  生物多様性の保全、循環型社会の形成の実現のために、個別製品の生産段階から廃棄段階に至る、全体的な環境負荷の大きさに関する情報や、情報提供の方法等のあり方を継続して検討

(4)取引ルールの整備・執行強化

消費者契約法の実体法改正の検討
行政処分を受けた事業者が別法人を設立して同様の行為を繰り返すことを止められないこと、都道府県の消費生活条例に直罰規定を盛り込むことが困難であることについての法制上の検討
改正特定商取引法で適用除外とされた部分について、消費者被害の状況と監督官庁の対応の把握、及び適用の検討(例:電気通信事業法をはじめとする情報通信関連法など)
地方自治体における特定商取引法・景品表示法・消費生活条例の執行強化に向けた国の支援策検討
景品表示法への課徴金制度導入の検討

(5)消費者団体訴訟制度関連

集団的消費者被害救済制度の一環として、適格消費者団体による損害金等請求制度の検討と実現
適格消費者団体への財政支援の具体化
差止請求対象の拡大の検討
  民法等の強行規定違反の行為
  景品表示法4条1項3号により内閣総理大臣が指定した不当な表示
  特定商取引法に定められた以下の行為
再勧誘の禁止違反(特商法3条の2等)、書面交付義務違反(特商法4条等)、禁止行為の一部(特商法6条4項等)、指示事項違反(特商法7条等)
  不当約款、不当勧誘の推奨行為
  差止請求における後訴制限効(消費者契約法12条の2、1項2号)の再検討
差止請求における後訴制限効(消費者契約法12条の2、1項2号)の再検討

(6)金融・信用関連

改正貸金業法の完全施行と広報の強化、施行後の運用状況の把握
都道府県の多重債務者対策本部(協議会)の動向把握と国による支援策の検討
金融・信用に関する相談・カウンセリングの強化
家計・生活設計・金融経済教育(被害に関する教育のみならず、投資やお金の使い方・借り方なども含めた教育)の強化
課徴金制度の強化と違法収益の吐出し制度の導入検討
金融分野における集団的被害救済制度の導入検討
金融分野横断的に不招請勧誘禁止ルールの導入検討
少額決済サービスや企業ポイントサービスの利用者利益の保護に関する取り組みの強化
資金決済法施行による新たな送金サービスの普及・発展に伴う利用者トラブル防止など、利用者利益保護の視点からの取り組み検討と実施

(7)情報通信関連

情報通信技術サービスのうち、特定の階層(例:未成年者、高齢者など)を対象とした情報サービスや、個人の購買行動等を活用した広告サービス分野(行動ターゲティング広告)等における、消費者のプライバシー保護ルールの作成
「テレビショッピング番組」における提供情報について、過度な広告・宣伝内容等の現状調査や、提供されている情報の量や内容のあり方についての検討
複数の電気通信事業者が関与する課金サービス(例:携帯電話におけるコンテンツ等)における消費者の苦情への的確な対応など、責任分担の明確化やルールの整備の検討
苦情相談窓口の明記など、情報通信技術サービス事業者全体に対する横断的なルールの検討

(8)住宅関連

住宅に関する公正中立な紛争処理機関の強化と消費生活センター等との連携強化
民間賃貸住宅の一時金(礼金・更新料)等について、賃貸住宅標準契約書の見直し検討
「追い出し屋」問題への対応として、家賃債務保証業の適正化(参入規制・行為規制の導入等)検討
賃借人の信用情報のデータベース化への規制の検討
高齢者向け住宅(有料老人ホーム・高齢者専用賃貸住宅等)の契約トラブルへの対応強化

(9)消費者相談・情報収集・行政体制関連

各省庁にある消費者相談窓口や消費者ホットラインの運用状況の検証
各省庁にある消費者相談窓口で集められた情報を、各省庁での施策に反映させる明確な仕組み作りの検討
各省庁で集められた苦情情報を、消費者庁に一元的に集約することの検討
各省庁のホームページの消費者視点での見直し検討
消費者庁と消費者委員会の協力のあり方検討
国民生活センターと消費者庁との役割整理
各省庁における消費者行政推進窓口(例えば、消費者庁への報告・相談・事例共有や、消費者基本計画の当該省庁担当部分のとりまとめ等を任務とする)の明確化
地方消費者行政強化プランの動向把握(例:地方消費者行政推進本部の活動状況、相談体制や法執行の拡充状況)と国による地方消費者行政支援策の検討
「消費者主体の行政への転換」を支える行政職員育成計画(相談窓口や消費者団体への出向研修を含む)の策定と実施

(10)消費者教育関連

消費者市民教育のあり方検討(被害の未然防止や知識の習得にとどまらず、自ら考え行動する「消費者市民」教育の考え方の普及とあり方の検討)
消費者市民のメディアリテラシーを養成するための方策の検討
消費者教育の効果測定指標(目標設定のあり方、施策の効果測定・検証のあり方など)の検討
「内閣府・文部科学省消費者教育連絡協議会」「関係省庁消費者教育会議」の定期的な開催を通じた、「消費者教育の体系化」など過去の各省庁における研究・実践成果の共有化と、各省庁の施策状況の把握・検証
「消費者教育ポータルサイト」の広報強化と、各省庁・自治体・民間セクターの先進実践事例や教材等の紹介(紹介の基準づくり含む)
消費者教育ツールの効果的な配布手段の検討と実践
自治体・消費者団体・事業者団体など関係セクターの連携強化に向けた支援方策の検討
教員養成段階や教員免許状更新時における消費者教育の履修化の検討
消費者教育推進法の制定検討

(11)消費者団体支援関連

消費者団体の公益的な活動(例:消費者教育・広報啓発、被害救済、事業活動の是正等)に対する財政支援の検討

以上