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2009年7月4日

内閣府国民生活局
消費者安全法施行令(案)等意見募集ご担当者殿
FAX03−3581−0641

東京都千代田区六番町15プラザエフ6階
TEL:03-5216-6024 FAX:03-5216-6036
全国消費者団体連絡会
事務局長 阿南 久

 

消費者安全法施行令(案)及び
消費者安全法施行規則(案)に対する意見
 

 消費者安全法の施行に必要な事項を定めるための標記政令案及び内閣府令案についての意見を提出いたします。

 消費者安全法の政省令は、消費者庁及び消費者委員会の機能に大きな影響を及ぼす非常に重要なものです。そこでこの意見書を提出します。

 なお、生命身体被害(安全)分野と財産被害(取引)分野に分けて述べています。

I .生命身体被害に関わる分野

1 消費者事故等の要件について(施行令案第1条、2条・規則案1条)

(1)意見

 @ 安全法2条5項1号の「政令で定める程度の被害」は、「死亡及び治療を要する被害」とすべきです。
 
 A 安全法2条5項2号の「政令で定める要件」は、次のとおりとすべきです。
 
  i 安全基準への不適合
 
  ii 破損・故障・汚染、変質その他の劣化又は加熱、異音その他の異常の発生
 
  iii 飲食の用に供する物質について、腐敗、汚染、有毒・有害物質の含有・付着、異物混入、異臭・容器等の破損その他の異常の発生
 
  iv 商品等・役務の使用等における消費者の生命・身体に対する危険の発生
 
  v 商品表示の抜け漏れ、誤りによる消費者の生命・身体に対する危険の発生

(2)理由

 消費者事故等の要件を定める場合、消費者の生命と身体の安全を確保するために、重要な情報が抜け落ちることなく、消費者庁に報告されることを重視しなければなりません。報告義務者(行政機関等)の判断のしやすさに重きをおいて要件を細かく定め、消費者事故等に該当する事故が限定されることは、重要な情報が抜け落ち、消費者の生命や身体が危険にさらされるおそれにつながります。消費者の目線に立って多くの事故情報を収集するためにも、消費者事故等の要件を限定するべきではありません。

 したがって「政令で定める程度の被害」については、広く「死亡及び治療を要する被害」とし、家庭内での薬等を用いた治療をした事故等も含むべきです。

 また「政令で定める要件」について、施行令案の内容は、製品等の異常に重点を置いた規定であり、製品の使用方法により危害が生じるおそれがある場合(いわゆる誤使用問題)については「商品等・役務の使用等における消費者の窒息その他の生命・身体に対する著しい危険の発生」に当たらない限り、消費者事故等に含まれず、「著しい危険の発生」の捉え方次第では、いわゆる誤使用により被害が生じた事故の情報はほとんどくみ取れない内容となっています。ヒヤリハット情報や製品を長時間使用して生じた被害(おしゃぶりによって生じた歯やあごの変形)、製品を使う上で生じた低周波や電磁波などによる被害などの情報も、消費者事故等に関する重要な情報として収集すべきであり、要件を「著しい危険の発生」に限定すべきではないと考えます。

 あわせて、政令案では、「政令で定める要件」に「窒息その他」とあげていますが、消費者の生命・身体に対する危険の発生の内容は様々であり、一つだけを取りあげる意味はないと考えます。同様に施行規則案では一酸化炭素以外の物質による中毒をあげていません。硫化水素や塩素による中毒死亡事故は現に発生しており、製品を使用することで遭遇する危険のある中毒の原因となる物質を広く施行規則に定めるべきです。

 アレルゲンの表示漏れや誤表示問題については、アレルギーを持っている消費者にとって生命・身体に危害が及ぶ状況になりますが、消費者事故等に該当するかどうか不明確なため、改めて該当するように政令・省令で定めるべきです。

 

2 重大事故等の要件について(施行令案第4条・5条、規則案5条・6条)

(1)意見

 @安全法2条6項1号の「政令で定める程度の被害」は、次のとおりとすべきです。

  i 死亡
 
  ii 治療に要する期間が10日以上である負傷・疾病または後遺障害
 
  iii 一酸化炭素中毒その他内閣府令で定める物質による中毒

 A安全法2条6項2号の「政令で定める要件」は、次のとおりとすべきです。

  i 商品等の消費安全性を確保する上で重要な部分に、破損・故障・汚染又は変質その他の劣化・異常が生じたこと
 
  ii 飲食の用に供する物質に安全基準への不適合等があり、前項に定める程度の被害が発生するおそれがあること
 
  iii 商品等・役務の使用等における消費者の生命・身体に対する危険の発生で前項に定める程度の被害が発生するおそれがあること、火災その他異常な事態が生じたこと
 
  iv 商品表示の抜け漏れ、誤りによる消費者の生命・身体に対する危険の発生で前項に定める程度の被害が発生するおそれがあること

(2)理由

 重大事故等についての情報は、消費者の生命・身体の安全の確保にとって欠くことのできない情報であり、すべての重大事故等に関する情報が漏れなく消費者庁に報告されなければなりません。また、消費者事故等と同様に消費者の視点に立って要件を細かく限定せず、多くの事故情報を収集すべきです。

 「政令で定める程度の被害」について、政令案は、「治療に要する期間が30日以上である負傷・疾病又は内閣府令で定める程度の後遺障害」としています。しかしながら、事故発生時、すぐに治療期間が30日以上かかると判断できるとは考えにくいこと、事故発生から30日を経過しなければ重大事故か否かを判断できず、事故情報の報告が後手に回るおそれがあること、一旦は30日以内での完治が見込めたものの、実際には治療が長期化する場合もあることから、「少なくとも10日以上の治療を要する負傷・疾病」とすべきです。

 また、後遺障害については具体的な規則案が列挙されています。製品に起因する被害は様々で、どのような被害と後遺障害が発生するかはわかりません。したがって後遺障害について限定列挙して指定するのはやめるべきです。

 政令案は、「政令で定める程度の被害」の対象として「一酸化炭素中毒その他内閣府令で定める物質による中毒」としており、施行規則案では一酸化炭素以外の物質による中毒をあげていません。硫化水素や塩素による中毒死亡事故は現に発生しており、製品を使用することで遭遇する危険のある中毒の原因となる物質を広く施行規則に定めるべきです。

 「政令で定める要件」については安全基準違反を必要条件としていますが、まったくの新しい分野の製品で該当する安全基準がないものや安全基準自体不十分な製品等については、重大事故等に該当しなくなりますので、安全基準違反は要件から削除すべきです。

 飲食に要する物品に関し、毒劇物取締法及び薬事法に違反する毒性、劇性を有する場合に限定しています。毒劇物取締法および薬事法に規定されていない、新たな毒物、劇物や、原因物質が特定できない場合に情報を収集できないおそれがあります。食品衛生法等の安全基準に違反し、死亡や重症等の被害が生じる可能性がある場合は、重大事故等として情報を収集すべきです。

 上記の施行令案の要件の中では、「商品等・役務の使用等における消費者の窒息その他の生命・身体に対する著しい危険の発生、火災その他著しく異常な事態が生じたこと」とありますが、この要件のハードルは高いため、「商品等・役務の使用等における消費者の生命・身体に対する危険の発生で前項に定める程度の被害が発生するおそれがあること、火災その他異常な事態が生じたこと」とすべきです。

 

第2 財産被害(取引)分野

1.意見

(1)

取引分野における「消費者事故等」の範囲は、法令違反の一部に限定せず、その他信義則に反する行為全般を幅広く含めるべきです。

金融商品取引法や商品取引所法における事故確認制度においても、事故概念は法令違反行為をすべて含む概念としています。ましてや消費者被害を防止しその安全を確保するための消費者安全法の消費者事故の概念には、直接的間接的を問わず消費者保護のために事業者の行為を規制している法令に違反する行為を含むこととすべきです。
 

(2) 政省令に法令等を列挙する場合には、あくまで例示的なものであることを明確に述べた上で、特定商取引法に基づく取消権、不招請勧誘禁止違反、適合性原則違反、説明義務違反、書面交付義務・情報提供義務違反、善管注意義務違反、信義則違反などを盛り込むべきです。

2.理由

 取引分野は重大事故等には該当しないため,安全法17条ないし19条のすき間対応を取ることができません。また、16条の措置要求は、各省庁が所管する法律の範囲内の措置を要求するに止まっています。

 しかし、取引分野の消費者被害は、適用すべき法律がない領域において生じ、社会問題がおきるたびに、法律の改正や新規立法が行われてきました。

 取引分野においては、消費者庁の企画・立案機能、消費者委員会の建議・勧告の機能が特に重要であり、その活用が期待されています。そのためには、直接の業法・特別法がない領域においてこそ迅速な情報の収集と分析が求められます。直接の業法・特別法がない領域における被害こそ、「消費者事故等」の概念に含める必要があります。

 また、業法違反によって消費者被害が生じている場合には、内閣総理大臣は安全法16条の措置要求ができることから、その違反の情報が収集される必要があり、直接的であるか間接的であるかを問わず消費者保護のために事業者の行為を規制している法令に違反する行為を含めることは当然です。

 法令違反を広く含める規定のあり方は、金融分野においては既に採用され実施されてきています。消費者安全法は、「消費生活における被害を防止し、その安全を確保するため」「消費者事故等に関する情報の集約等」を行うものですから、なおさら限定すべきではないと考えます。

以上