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「消費者行政一元化についての意見」をまとめました
 

 全国消団連の消費者行政のあり方検討会議にて検討を重ねてきた標記意見について、1月22日の第6回運営委員会にていただいたご意見をふまえて取りまとめましたので、ご案内いたします。

 今後、政党への働きかけを始め、意見表明の場で活用していきます。

「消費者行政一元化」についての意見
 

2009年1月30日
全国消費者団体連絡会
 

全国消団連・消費者行政のあり方検討会議では、消費者行政一元化のあり方について、2007年12月以来18回にわたって検討を重ねてきました。このペーパーは、消費者庁関連法案の国会審議で論議いただきたいポイントについて、全国消団連・消費者行政のあり方検討会議としての考え方を表したものです。
 

<論点>

 1.消費者庁の早期創設

 2.消費者視点に立った行政監視組織のあり方

 3.各省庁における消費者視点の強化

 4.地方消費者行政強化とそのための支援

 5.食品安全行政の強化

1.消費者庁の早期創設

消費者重視社会を実現するために、消費者庁を早期に創設することが必要である。消費者庁は以下に掲げるような、消費者行政における司令塔機能、事業者監督機能、消費者支援機能を発揮する必要がある。

  1. 総合的・省庁横断的な消費者政策の企画・立案・調整(消費者基本計画の策定と検証・評価・監視など)
     
  2. 各省庁に対して政策起案・執行を求める勧告権の発動(所管省庁が対応に消極的な場合、所管が複数省庁にまたがり対応が遅れる場合、緊急性を要する場合等)
     
  3. 直接的な法執行権限の発動(所管省庁が明確にならない場合、緊急性を要する場合、専管分野を持つ場合等)
     
  4. 消費者相談、被害情報等の一元的情報収集・分析、調査研究
     
  5. 地方自治体・消費生活センターへの情報提供や研修等の各種支援
     
  6. 被害救済(違法収益の吐き出し、消費者訴訟支援等)
     
  7. 消費者教育・啓発、消費者への情報提供
     
  8. 消費者団体支援
     
消費者の生活に影響を及ぼすのは、法目的に「消費者被害の発生・防止」を掲げる法律が所掌する事項に限られない(例:食品の安全、医薬品、社会保障、金融、通信、住宅など)。したがって、消費者庁が各省庁に対して行う勧告は、消費者被害の発生・防止を直接の目的とした法律に関する事務に限定されることなく、幅広く行えるようにする必要がある。
 
なお、消費者庁が行う「すき間事案」への対応については、消費者安全法案で規定されているが、対象が安全分野に限定されている(第17条)。しかし、為替証拠金取引問題(金融庁と経産省)、近未来通信問題(金融庁と総務省)など取引分野でのすき間事案も発生し多くの被害を生み出しており、消費者庁が取引分野のすき間事案についても対応できるようにする必要がある。
 

2.消費者視点に立った行政監視組織のあり方

行政の施策を消費者視点で監視し、執行させるための組織が必要である。この組織は、意見具申内容が各省庁の施策に確実に反映されるように作られることが重要である。ついては、既存の審議会のように各省庁の中に置かれるだけでは不足であり、消費者庁を含む各省庁に対して強い影響力を確保できるようにするため、消費者庁からも半ば独立したポジションに位置づけることが重要である。加えて、この組織への権限の付与(意見具申、調査権限)・事務局編成のあり方などがポイントである。
 
この組織にまず求められる機能としては、発生した問題や事故について行政の対応が十分に取られていない場合(例:こんにゃくゼリー、瞬間湯沸器中毒事故、汚染米問題)に対して、消費者被害情報や内部告発情報をもとに、行政対応の不備を問うようなチェック機能が必要である。
 
また、被害が起こった後の事後対応だけでなく、事前のリスク察知が重要である。ヒヤリハット情報などをもとに、被害が起こる前のセンサー機能も担う必要がある。たとえば食品安全分野では、関係省庁が日常的に海外の食品安全情報(食中毒・農薬・動物用医薬品など)を収集・分析し、汚染防止や基準づくり等のリスク管理措置をとっているが、食品安全以外の分野においてもそのような事前対応は重要であり、そうした角度での指摘も期待される。
 
この組織は、内閣総理大臣や各省大臣からの諮問があった場合に限定されることなく、自ら意見具申できるようにする必要がある。また、この組織から意見具申があった場合に、消費者庁に対して一定期間内での応答義務を課す(意見に対する対応方針を明らかにするなどの応答を義務づける)必要がある。
 
この組織の委員は消費者庁を含む各省庁から独立していることが監視機能を果たす上で重要であることから、委員の独立性を担保するために、委員の任命は国会同意人事とする必要がある。
 
分野で分ければ、安全(食品、製品)・取引・表示などに幅広く対応する必要があり、委員のバックアップ体制(事務局)の作り方は工夫が求められる。この組織が、各省庁の持つ情報を自由に使えるようにしておくことが必要であり、調査権限を付与しておく必要がある。なお、消費者行政においては、日頃の業務の中で被害者や事業者と接しているからこそ得られる現場感覚を持つことが重要であり、委員のバックアップ体制に現場や現場感覚をどう持たせるかが課題である。事務局構成としては、規制改革会議事務局のように民間人の登用も検討する必要がある。
 

参考:規制改革会議令(資料の提出等の要求)

第五条 会議は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の陳述、説明その他必要な協力を求めることができる。

2 内閣総理大臣は、会議からその所掌事務を遂行するため必要があるとして申出があったときは、関係行政機関の長に対し、会議への資料の提出、意見の陳述、説明その他必要な協力をすべきことを求めることができる。

3.各省庁における消費者視点の強化

「消費者重視の行政」を実現する上では、消費者庁の創設とともに、日常的な個別施策の実施を担う各省庁が消費者の視点に立つことが重要である。おりしも農林水産省において事故米をめぐる問題が発生したが、このことは消費者庁ができたとしても、各省庁の産業育成部局や各部局においても消費者視点をより強化していく必要性をあらわしているといえる。ついては、各省庁における消費者視点を強化していくために、各省庁の政策評価の項目に「施策が消費者視点に立っているか」を入れることが必要である。
 
また、各省庁における消費者視点を強化していくため、各省庁にも消費者政策専任セクション(例:経済産業省消費経済部、農林水産省消費・安全局)を設置し、このセクションが省内の施策を消費者視点からチェックするとともに、消費者庁が各省庁消費者政策専任セクションに対して政策起案・執行を勧告できる仕組み(消費者庁と各省庁が連携して政策起案・執行を行う仕組み)が必要である。
 
各省内部においては、消費者政策専任セクションが自ら所掌する消費者行政施策の起案・執行を行うとともに、同セクションが省内各部局の施策動向把握や情報収集を行い、消費者視点の角度から分析を行う必要がある。その上で、同セクションが各部局に対して、消費者の視点に立って施策(許認可権限の行使や事業者指導等)を行うよう提言していく仕組みとする必要がある。消費者行政担当審議官を配置し、各部局の施策が消費者視点に立っているかどうかを日常的にチェックすることや、消費者政策専任セクションに他部局に対する省内勧告権を付与することも一案である。

4.地方消費者行政強化とそのための支援

行政全体として消費者行政の充実がはかられるためには、政府だけではなく、地方自治体の消費者行政強化がはかられることが不可欠であり、政府は地方消費者行政充実のための支援を行うことが必要である。
 
「地方消費者行政活性化事業」については、基本的には全都道府県で取り組まれることが必要であり、活性化事業に取り組まない都道府県が生じないよう、国は都道府県を支援することが必要である。また、活性化事業の対象について、相談業務はじめ消費者行政には必ず人件費が発生することからも、事業目的が明確であれば、活性化基金を人件費に充てることも認めるべきである。
 
地方自治体においては、国の支援に頼るだけではなく、消費者行政部門の位置づけを高め、消費者行政予算・人員の拡充をはかるなど、主体的に消費者行政強化に取り組むことが重要である。消費者相談、事業者規制、情報提供、消費者教育・啓発、消費者団体支援などに積極的に取り組むことが必要である。

5.食品安全行政の強化

食品安全行政については、リスク分析の考え方に基づきリスク評価機関(食品安全委員会)・リスク管理機関(農林水産省・厚生労働省など)が切り分けられているが、こうした考え方や仕組みが社会的に認知されているとは言い難い状況であり、定着が必要である。
 
すきま事案(例:こんにゃくゼリー問題)や緊急時対応(例:冷凍ギョーザ事件、乳製品メラミン混入事件)においては、情報の収集と危害情報の発信が大切である。消費者庁関連法案では消費者庁が食品安全基本法を所管し食品安全に関する総合調整機能を持つこととされており、こうした事案への対応においては、消費者庁が司令塔機能を発揮することが必要である。
 
食品安全委員会については、独自の研究機関を保有していない、事務局人員が少なく他省庁からの出向者によって構成されている、などの課題があり、今後はリスク管理機関からの独立性を一層高めながら体制を強化していく必要がある。
 
行政のリスクコミュニケーションに参加しているのは一部の人だけにとどまっている。また、情報は専門用語が多くわかりにくいことも多い。リスク評価結果やリスク管理措置の判断、ならびにその科学的背景をわかりやすく伝えることなどがポイントであり、各省庁自身が努力するとともに、消費者庁がリスクコミュニケーション・消費者教育におけるリーダーシップを発揮することも重要である。

以上