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「独占禁止法改正」に対する意見
 

2008年2月
全国消費者団体連絡会
 

 2007年10月16日、公正取引委員会は「独占禁止法の改正等の基本的考え方(大綱)」(以下「大綱」)を公表しました。この大綱は、「独占禁止法基本問題懇談会(座長 塩野 宏 東京大学名誉教授)」でまとめられた「独占禁止法基本問題懇談会報告書」(2007年6月。以下「報告書」)に基づいてまとめられたものです。

 私たちは、懇談会の論議を尊重し、独禁法の改正はこの「報告書」の趣旨に沿って行われるべきであると考えており「大綱」を支持します。

 経済界や自由民主党調査会などからは「審判制度」についての反対意見や「不当廉売に対する課徴金賦課」についての意見が出されていますが、公正取引委員会の根本的なあり方そのものに関わる検討や消費者利益を損なう恐れのあるものに対しては、より慎重さが必要であり、拙速にことをすすめるべきではないと考えます。現在、福田康夫内閣総理大臣の指示のもと「生活者・消費者を重視する行政」への転換をめざし行政のあり方総点検作業がすすめられており、これは公正取引委員会のあり方にも深く関連するものであると考えます。これまでも公正取引委員会は「審判」権限を武器にして多くのカルテルや入札談合を取り締まり、日本経済の発展と消費者利益の擁護に多大な貢献をしてきました。そして今日、不正表示などの事件が社会問題化している中、ますますその執行力は強化されることが求められています。

 以下に、私たちの考えを述べます。
 

1、「審判制度廃止意見」について

 懇談会報告書では、「平成17年度改正により導入された不服審査型審判方式は、処分の早期化・審判件数の減少等一定の成果を上げていると考えられることから、当面は、これを維持することが適当である。しかしながら、行政審判は、行政過程において準司法的手続を採用して被処分者に十分主張・立証の機会を与えることにより適正手続を保障するとともに、紛争の専門的早期的解決を図るものであることから、一定の条件が整った段階で、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当である。」と提言しています。

 まず、論議されるべきは、平成17年度独禁改正法が目指した「不服審査型審判方式」の成果と検証であり、早急な「審判制度廃止論」ではないと考えます。

 「審判制度」は、公正取引委員会が政治的な独立性を保ちながら専門性を発揮して法執行にあたるための重要な根拠です。執行力は「審判制度」によって高く保たれていると言えます。また「審判」はあくまでも行政処分をより丁寧に慎重に行うためのものであり「裁判」とは違います。現行でも「審決」に不服があれば高裁に訴えることができるのです。

 「審判制度」の廃止は公正取引委員会の執行力はもちろん、独立性・専門性といった基本的あり方に重大な影響を及ぼしかねません。

2、「不当廉売」への課徴金について

 「不当廉売」に対しては、もともと「公正な競争を阻害するおそれがある不公正な取引方法」として公正取引委員会の「注意・警告」や、事案によっては「排除措置命令」の対象になっており、命令後も違反行為を行う事業者には確定命令違反に対する罰則があります。またこの中には競争に与える影響が大きくないものも含まれていますので、もし「注意・警告」や「排除措置命令」に加えて課徴金を課してしまうと、規模の大小を問わず事業者の通常の価格競争までをも萎縮させてしまい“事業者の競争によってよりよい商品を手ごろな価格で購入できる”という消費者利益が損なわれるおそれが出てきます。

 すべての「不当廉売」に対して課徴金賦課の対象とするのではなく、私的独占に該当する「不当廉売」を課徴金対象とし厳しく取り締まることによってその抑止効果を波及させる方が適切だと考えます。