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消費者団体訴訟制度の導入に向け、「消費者契約法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。これを受けて、全国消団連では、以下のようなアピールを出しましたのでお知らせします。




2006年3月3日

「消費者契約法の一部を改正する法律案」の閣議決定にあたって

全国消費者団体連絡会
 

 本日3月3日、消費者団体訴訟制度(団体訴権制度)導入を盛り込んだ「消費者契約法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。

 消費者団体訴訟制度については、消費者契約法制定時の附帯決議(2000年)や司法制度改革推進計画(2002年)、国民生活審議会(以下、国生審)『21世紀型の消費者政策の在り方』で、制度の必要性や早期導入が指摘されていました。

 架空請求、住宅リフォーム、外国為替証拠金取引、学習塾学納金返還問題等、消費者被害・トラブルが増加し、多様化・複雑化しています。契約に関する消費者被害が増加傾向にある中、消費者団体でも、消費者被害の拡大防止や被害救済に役立つ制度として、消費者契約法制定当時からその導入を要望してきました。

 全国消団連では、消費者団体としての要求案を作成するために、「消費者団体訴訟制度研究会」を設置し、弁護士・司法書士・相談員など専門家も交えた検討を行い、2004年9月に「要求書」をまとめ、合わせて「要綱試案」も提言してきました。団体訴訟制度には、差し止めと損害賠償がありますが、全国消団連では消費者被害の急増の中、被害防止・拡大防止のため早期の制度実現が重要と考え、差し止め請求に絞った制度導入を求めてきました。

 2005年6月には国生審で『消費者団体訴訟制度の在り方について』がまとめられましたが、この間、全国消団連も最重要課題の1つと位置付け、この議論に積極的に参加し、また内閣府との意見交換会も独自に開催し、都度意見書を提出するなど、消費者団体が使いやすい制度の実現を求めてきました。

 今回閣議決定された法案には下記のような問題点や不十分な点を含みつつも、消費者団体に訴権を認めようとする日本で初めての制度であり、いよいよ今国会で実現しようとしていることは、これまでの消費者団体の願いや取組みの経過からすると、大きな前進であり歓迎すべきことです。

 消費者被害の防止・拡大防止のために、消費者団体が社会的要請や期待に応えられる制度として実現していくことが重要と考えます。適格消費者団体の要件が過度に制約的に働くことのないような制度設計が必要です。

 法案の閣議決定にあたり、法案の評価と、今後の国会審議で重要と考える点を以下に述べます。
 

1.本法律案(消費者団体訴訟制度の導入)の本年通常国会での実現を求めます

 団体訴権制度は、消費者被害の拡大防止・市場の健全化に資する制度として消費者団体が長年要望していた制度です。本法律案については、下記の点などについて評価できると考えます。

○被害当事者でない適格消費者団体に訴権を認めたこと

○不当契約条項に加え、不当勧誘行為も差止めの対象となったこと

○裁判管轄について、事業者の本店所在地に加え、営業所所在地も追加されたこと

○適格消費者団体への情報面での支援措置が盛り込まれたこと

拡大する消費者被害への対応のためにも早期に制度をスタートさせることが重要であり、ぜひとも今通常国会で実現されることを求めます。

2.国会での法案審議では、下記の点についての審議を求めます

 本法案については、民事訴訟法の原則を覆した同一事件での提訴に関する問題(いわゆる「既判力」問題)をはじめ、運用面での実効性を確保する措置などで不十分な点が残されています。

 国会での法案審議では、以下の論点について明らかにしていただき、制度の充実を図っていただくことを求めます。

法案は「他の適格消費者団体による確定判決等が存する場合、同一事件の請求は原則としてすることができない」という構成になっているが、例外規定の内容について明確にすること。特に「当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論の終結後又は当該確定判決と同一の効力を有するものの成立後に生じた事由」(第12条6項)の内容を具体的に明らかにすること。
 
適格消費者団体への情報面での支援について、PIO-NET情報に限らず、各省庁や地方自治体の消費生活相談の個別情報(例えば、消費生活相談カードの個人氏名を除く情報等)や、相談に付随して入手した具体的な資料も活用できるようにすること。また、適格消費者団体への資金面での支援策も含め検討すること。

○法律に基づくガイドライン策定について、策定過程での透明性確保と、消費者意見の反映に努めること。

○法律の見直し時期について明確にすること。

3.本法案成立後の消費者団体訴訟制度検討についても、国会での審議を求めます

 今回の法案では、消費者契約法への差し止め制度の導入という形で制度が実現する設計となっていますが、消費者被害の拡大防止・被害救済をより実効的に進めるために、下記の論点についても国会での審議が重要と考えます。

独占禁止法・景品表示法・特定商取引法など、他の消費者関連法における団体訴権制度の検討を早期に開始すること。

○被害救済や不当利得の吐き出しにつながる、損害賠償制度の導入に向けた検討も開始すること。

以 上