[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る




「消費者団体訴訟制度導入の法律案骨子」についての
パブリックコメントを内閣府に提出しました
 

2006年1月13日

内閣府国民生活局 消費者団体訴訟制度検討室
法律案骨子意見募集担当 御中
 

「消費者契約法の一部を改正する法律案の骨子」について
 

全国消費者団体連絡会(全国消団連)
事務局長 神田 敏子
〈連絡先〉東京都千代田区六番町15プラザエフ6F
TEL 03−5216−6024
Eメール:webmaster@shodanren.gr.jp
 

 「消費者契約法の一部を改正する法律案の骨子」(「消費者団体訴訟制度」の導入について)に対して、消費者被害を未然に防止するとともに、被害拡大を防ぎ、市場の健全化をはかるためのこの画期的な制度が、実効性ある制度となることを求める立場から、意見を述べます。
 

1. 本法律案(消費者団体訴訟制度の導入)の本年通常国会での実現を求めます。

 消費者団体に差止請求権を認めるこの制度は、多くの消費者団体が長年にわたって求めてきた、わが国初の制度であり、本年通常国会で実現することを求めます。
 

2. 骨子の各論点について、下記のように考えます。

(1)訴訟規定の「他の適格消費者団体による確定判決等が存する場合、同一事件の請求は原則としてすることができない」という注意書きの削除を求めます。

 6月のとりまとめでは「ある適格消費者団体が提訴した差止請求事件における判決の既判力の範囲については、当該事件の当事者限りとし、他の適格消費者団体には及ばないとすることが民事訴訟法の基本原則に整合的である」とし、また、「一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組み」の必要性を指摘していました。しかし、今回の骨子によれば「同一事件の請求は原則としてすることができない」こととなり、「一定の不適切な訴え」ばかりでなく、全ての訴訟に及ぶこととなり、考え方が全く変わってしまいます。

 しかしながら、適格消費者団体は個々に認可を受けた団体であり、その権利はとりまとめにある通り「それぞれの適格消費者団体に認められた権利」と考えます。一定の「他団体との相互の連携協力」は必要ですが、だからといって、一度の判決によって同一事件について以後訴訟できなくなることは、個々の団体に存する権利を奪うこととなります。2003年度の内閣府での調査によれば、当制度の先進国であるEU各国でも多くの国が「判決の及ぶ範囲は当事者限りが原則」としています。

 第2回国民生活審議会消費者政策部会では多くの委員から、この項目についての疑問が出されました。その発言にもあったように、時代の変化の流れが速い中で判例が変わることは考えられますし、先駆的訴訟で敗訴しても、その後多くの被害が出て、あらためて実態がわかってくるということも考えられます。一度の判決が何年にもわたって効力をもつことで、悪質な事業者にお墨付きを与えることになりかねず、消費者被害の救済・予防とはなりません。部会でこれだけ多くの意見が出されたことを真摯に受け止め、制度導入の主旨とも反するこの注意書きについて削除を求めます。

(2)管轄裁判所は、営業所所在地のみならず、被害が実際に発生している地でも、訴訟が起こせるようにすることが必要です。

 とりまとめから一歩広げ、事業者の営業所等まで管轄を広げたことについては、評価致します。しかし、被害のある地域に必ず営業所があるとは限らず、ことに昨今の電話やインターネットを使った事業、通信販売事業では、営業所などは必要がないことも考えられ、今後それらの被害が増えていくことは容易に想像できます。そういった消費者契約をめぐる状況の変化を見ても、実際に消費者が被害を受けている地域での提訴を認めることが必要であると考えます。

(3)差止の対象に「推奨行為」も含めることが必要です。

 いわゆる「推奨行為」による被害はすでに多く存在しています。モデル約款を使用する個々の事業者に対して差止訴訟ができるとは言え、その判決の及ぶ範囲はその事業者に限られ、他の事業者がその判例をどう受け止めるかはその事業者の判断にゆだねられることとなります。「推奨行為」を差止の対象に含むことによって、消費者被害の拡大防止につながると考えます。

(4)適格消費者団体が消費生活相談情報等、とりわけ省庁・自治体が持つ個別情報を十分に活用できるようにすることが必要です。

 消費者相談情報の多くは、国民生活センターや各地の消費生活センターなどに集約されていますが、その情報を適格消費者団体に提供する、としたことを評価致します。団体自身が独自に情報を集めることが大事なことはいうまでもありませんが、正確な被害実態を把握するためには、より広い範囲での情報が提供されることが重要です。そのためにも、提供される情報はPIO-NET情報に限らず、各省庁や地方自治体の消費生活相談の個別情報、ならびに相談に付随して入手した具体的な資料も活用できることが必要となります。よって、「個別情報を含む消費生活相談情報(PIO-NET情報)等」と修文すべきと考えます。 *個別情報とは、例えば、消費生活相談カードの個人氏名を除く情報等を想定しています。

(5)適格消費者団体への、資金面における行政支援策を明示することが必要です。

 適格消費者団体がその財政基盤を強固なものとするために、自助努力は当然のことですし、基金や自治体の補助金などを活用していくことも大切なことです。しかし、訴訟請求関係業務には弁護士費用、交通費等、多額の持ち出し費用が必要であり、本法律案においても行政支援策として、弁護士費用の負担軽減の措置(片面的敗訴者負担)を盛り込むことが必要であると考えます。

(6)適格消費者団体への「第三者の調査」は、必要以上に過剰な負担とならない措置とすべきと考えます。

 外部監査的な措置の必要性は理解できますが、全ての法人は倫理・法令遵守の立場で、業務および経理に関する情報開示を行うことは当然のことであり、適格消費者団体にも、骨子において、情報開示と内閣総理大臣への提出が義務付けられているところです。また、適格消費者団体は審査の上で認定を受け、さらに更新制や内閣総理大臣による監督措置により、その公開性・透明性は十分に担保されています。

 公認会計士等との調査契約締結などは新たな財政的負担を伴います。運用の中で総合的にガバナンスを確保していくことは可能であり、義務付けによって、必要以上の過剰な負担とならないことが大切であると考えます。

(7)適格消費者団体の認定に関する規定によって、団体の活動が過度に制約されることのないよう、団体の目的は「消費者全体の利益擁護」の範囲でまとめるべきと考えます。

 骨子では適格要件として「消費生活に関する情報の収集及び提供並びに消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の不特定かつ多数の消費者の利益の擁護を諮るための活動を行うことを主たる目的とする」としていますが、現在活動している消費者団体は、初めからこの制度を担おうとする専門的な団体ばかりでなく、それぞれ独自の視点で活動を積み重ね、そのことが各団体の強みともなっています。こうしたさまざまな団体が、日常の活動の中からの問題意識をもってこの制度を活用しようとすることも考えられます。

 また、遵守事項の項では「差止請求関係業務以外の業務については、定款等に記載した上で、差止請求関係業務に支障がない限り、行うことができる」としていますが、上記のような団体では差止請求関係業務以外の業務が多くを占めています。

 また、「政治的目的」の解釈によって、団体の活動が制約されることは問題です。

 これらの項目が、制約的に働くことを懸念します。とりまとめで述べているように団体の目的は「消費者全体の利益擁護」の範囲でまとめるべきと考えます。

(8)適格消費者団体の更新期間は5年とすべきと考えます。

 適格消費者団体の認定に当たっては、一定の有効期間を定め更新制を取ることは妥当ですが、骨子では「認定の有効期間は3年」としています。しかし、裁判の現状を見ると、実際の裁判となったとき3年はすぐに経ってしまいますし、更新業務のための負担も大きなものがあります。一定の情報公開義務や監督措置を受けることも考えれば、再審査の期間は5年が妥当であると考えます。

3. 法律案の実現後、下記の点を要望します。

(1)独占禁止法、景品表示法、特定商取引法など、他の消費者関連法についてもこの制度の導入に向け、早期に検討が開始されるよう、内閣府がリーダーシップをとって各省庁と調整されることを要望します。

(2)被害救済、不当利益の吐き出しにつながる、損害賠償制度についての検討を開始されることを要望します。

(3)法律に基づくガイドライン策定に当たっては、その策定段階からオープンにし、国民意見の反映に努めるとともに、国民生活審議会に諮ることを要望します。