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総務省は、本年4月、「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」を情報通信審議会に諮問しました。

諮問を受けて、情報通信審議会電気通信事業部会の下に設置された接続委員会及び基本料等委員会で審議が行われ、第44回電気通信事業部会にて答申案が取りまとめられ、この答申案に対するパブリックコメントの募集しました。

そこで、全国消団連では、接続料の一部(NTSコスト)を基本料に転嫁することを決める前に、不明瞭な基本料の中味の検討を行い、基本料の抜本的な引き下げを行うべきだと考え、別紙のような意見書を提出しました。




意見書

平成16年8月26日

情報通信審議会
電気通信事業部会長 殿

全国消費者団体連絡会
事務局長 神田 敏子

 情報通信審議会議事規則第5条及び接続に関する議事手続規則第2条の規定により、平成16年7月27日付け情報通信第81号で公布された「平成17年度移行の接続料算定の在り方」の答申案に関し、別紙の通り意見を提出します。
 


「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」に関する意見

全国消費者団体連絡会
 

1.接続料の一部(NTSコスト)を基本料の費用範囲で回収すると決める前に、まず基本料の中味の抜本的な見直しが必要です。

 今回の答申(案)の中で、「14年度答申は、『料金とコストとの関係が必ずしも明確になっていない現行の料金体系の下で、NTSコストを基本料に転嫁することは、なお慎重な検討を必要とし、社会的合意も困難』と指摘した上で、総務省に対して『NTSコストの取扱いを現行の基本料、施設設置負担金、各種の付加料金の取扱いと併せて、抜本的体系的に再検討する場を早急に設け、そこでの検討結果を踏まえて可及的すみやかに、現行の電気通信料金体系の見直しを図る』よう要望を行っている」と書いています。今回の答申(案)の内容では、この14年度答申レベルをクリアーする検討には至っていないと考えます。NTSコストについては「長期増分費用モデル研究会」の新モデルが公表されましたが、基本料については、昨年度の「スダティグループ」による検討結果が基本料等委員会の討議に付され、基本料収支や費用の配賦方法の見直し方向が示されました。しかし、配賦基準の見直しはこれからNTTで行われることになっており、まだ費用の見直し内容が明らかになっていません。今回の答申(案)ではまた、基本料の「費用構造がブラックボックス化しており、透明性を欠いていることから、結果として、効率化が進まず、料金が据え置かれているのではないかとの指摘もある。」と書いています。これでは14年度答申で指摘している「抜本的体系的に再検討」が行われているとは言えません。こうした不透明な状況のもとでNTSコストを「基本料に転嫁」することは、基本料の値上げにつながる可能性を残しており問題です。

2.NTTは基本料の引き下げの検討をすべきです。

 国民・消費者は、現在、住宅用の基本料で毎月1750〜1450円を支払っています。事業者の基本料(月2600〜2300円)やISDN(事務用月3630円、住宅用月2830円)を含めると、合わせて年間1兆5,161億円(15年度)の基本料が徴収されています。これはNTT東西の4役務合計の営業収入4.1兆円の37.0%を占めます。電話網が全国に行き渡っている現在、既存設備の維持管理コストを勘案しても、毎年1.5兆円もの金額が必要なのか、膨大すぎないかと思われます。

 基本料収支の資料が出されていますが、基本料の費用配賦方法の1つに「収入額比」が使われています。基本料収入が他の収入との比率で費用配賦している費用項目があるわけです。しかし、これではNTTの営業収益に対する基本料収入の構成比(音声伝送役務合計収益に対する構成比。15年度で東日本46.5%、西日本46.3%)がそのまま、営業費用の構成比(同、東日本45.2%、西日本46.0%)となってしまい、意味がありません。むしろ、事業ごと(固定電話、公衆電話、電報等の事業分類ごと)の損益が分かりにくくなってしまいます。徴収した基本料が、その額面通り支出されるような仕組み(他の事業分野の経費を固定電話の経費に計上することができる)になっていると言えます。

 今回の見直しに当たっては、まさにこうした基本料の「ブラックボックス化」を解消し、明確化が求められています。今回の答申(案)では、NTSコストの基本料への転嫁が焦点になっています。NTTは基本料の配賦基準の見直しと基本料コストの大幅削減のための検討を早急に行い、それこそ「抜本的な」基本料引き下げを行い、最低でも平成14年度答申の要請レベルの状況を整えて、最終答申に反映されるべきと考えます。

3.級局区分は、基本料の抜本的な見直しを受けて検討すべきです。事住区分の見直しは、使用目的や負担能力を勘案し、現行制度を維持することが現在のところ妥当と考えます。

 級局区分については、加入者の多い地域ほど基本料が高く(住宅用月1750円)、加入者の少ない地域ほど安く(住宅用月1450円)設定されています。答申(案)によれば、級局区分の設定当時、加入者の多い地域ほど市内通話の利用価値が高いことが理由とされていたということです。しかし現在の日常生活では行動範囲が広がり、都市部でも地方でも生活空間が広がっています。日常的に市外通話も発生するし、市内通話だけですむとも限りません。そういう意味では、地域による格差はなくなってきていると予想されます(実態数値がでるのであれば資料補足すべきです)。よって、級局区分の必要性は薄れていると思われますが、基本料が高い方に揃えられるのでなく、前項で述べたように基本料が全体的に下がる方向の中で同一金額に設定されるべきと考えます。

 事住区分については、従来、負担能力の違い等によって事務用を高く(月2600〜2300円)、住宅用を安く(月1750円〜1450円)しています。負担能力で言えば従来と変わらない状況にあり、事住区分は、現在も一定の説得性があると考えます。

4.施設設置負担金について

 固定電話のネットワークが形成され、投資資金調達の役割がなくなり、徴収する意味が低下しているのであれば、徴収をやめるべきと考えます。ただ、「加入権」に関しては、多くの国民・消費者の間で売買可能な債権と理解されています。しかし、現在そうなっていないのであれば、NTT並びに総務省は、そのような実情となった背景・理由・責任の所在を明らかにして、国民・消費者の理解を得ることが必要です。

 今後の対応については、加入権売買市場や、質権設定による貸付の実態を踏まえた対応が必要と考えます。税制措置では、現在、電話加入権が相続税の対象となっていることも国民の負担になっていることを考慮し、対象から除外すべきと考えます。

5.新たな料金負担増は、国民・消費者の理解が得られません。

 総務省の家計調査によると、消費支出が平成12年度281,208円から年々減少し平成15年度には266,946円となっており、3年間で5%減少しています。そうした中でも、固定電話と移動電話を合わせた通信料が、同年比較で7,549円から8,857円へと17.3%も増加しています。消費支出に占める割合が、やはり同年比較で2.7%から3.3%に伸び、家計にとって負担増となっています。

 このように通信費の負担が年々増加している中では、これ以上料金負担が増えることは、国民生活にとって受け入れがたいことです。