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2004年8月13日
総合資源エネルギー調査会
電気事業分科会
会長 鳥居泰彦殿
東京都千代田区六番町15
全国消費者団体連絡会
事務局長 神田 敏子
Tel:03-5216-6024

総合資源エネルギー調査会電気事業分科会中間報告
「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」について


1.中間報告は、試算隠しに係る総括と原子力委員会・新計画策定会議における長期計画見直しの結論を得るまで凍結すべきです。

 電気事業分科会における「バックエンド事業に対する制度・措置のあり方について」の論議の中では、消費者代表の委員より、制度検討に当たっての前提として、再処理をする場合のコストだけでなく、直接処分する場合のコストについても試算を出し、比較評価すべき、と再三主張されてきました。

 しかし、その論議の中では、「直接処分のコスト試算はしたことがない」とのことで、これを前提に議論がされて参りました。ところが、実際には経済産業省などで過去に試算がされていたことが明らかになりました。前提に関わる重大な事実が明らかになった以上、当然その前提に立ち返って論議がされるべきところ、再処理のみを前提とした中間報告のパブリックコメントの募集が開始されたことは、たいへん問題です。試算が公表されてこなかった事実経過についての分科会への報告すらないまま、このような進め方をすることについては、国民・消費者の理解を得られものではありません。今回の試算隠しの事実経過についての詳細な調査とそれに基づいて経済産業省としての総括と公表が必要であり、その上で国民・消費者に意見を求めるべきだと考えます。

 現在、原子力委員会の新計画策定会議において、直接処分のコスト試算を含めて、長期計画の見直し作業がはじまりましたが、この結論を待たずして今回の中間報告に書かれた内容を前提に政府において進めることは本末転倒といえます。今回の中間報告については、原子力委員会の新計画策定会議で結論を得るまでは、凍結すべきものと考えます。

2.原子力の収益性は「他電力と比較して遜色ない」という評価を前提として、これまでも様々な制度的措置が手厚くとられてきたにもかかわらず、その上さらに「経済的な措置が必要」というのは、その必然性が理解できません。「過去分(既発電分)」をなぜこれからの消費者が負担しなければならないのか、理解できません。今回中間報告で示されているような新たな消費者負担は必要性を認められません。

 原子力発電の収益性はバックエンド費用を含めても「他電力と比較して遜色ない」としているわけですから、特別な経済的措置は必要ないはずです。原子力については、すでにこれまでも様々な制度的措置が手厚くとられており、これ以上の措置を消費者負担で行う必要性がどこにあるのでしょうか。電力会社は、毎年9社合計で1兆円もの巨額の利益をあげており、別途積立金や原価変動調整積立金など利益剰余金も5兆円規模で持っています。新たな消費者・需要家に巨額の負担を求める必要性があるのでしょうか。

 また、いわゆる過去分(既発電分)について、なぜこれが私たち消費者・需要家の負担となるのか。過去に政府と電力会社で先送りしたツケを、現在の消費者・需要家にまわすのは、いかなる論理で正当性を持つのか、理解できません。過去処理については、まず過去の積立金や利益の中で検討すべきではないでしょうか。将来にわたり全国すべての消費者・需要家に広く薄く負担を転嫁するのは、過去処理のために新たな税金を導入することと同じ意味を持ちます。最低でも国会できちんとした審議が必要です。

 ※8月9日、福井県美浜町の関西電力美浜原子力発電所で、4人の死者をだすなど過去最悪の事故が発生しました。放射能漏れの心配はないとの報道ですが、多くの死傷者を出し、地域住民に大きな衝撃と恐怖を与えました。早急な原因究明と、他の原発や同様の構造をもつ火力発電所での安全確認、原子力発電所での安全管理項目や管理・点検のあり方の見直しが急務です。関西電力の管理責任も問われなければなりません。

 これまで原発事故が何度も繰り返されていますが、今回の事故も米サリー原発事故の教訓が生かされず、消費者・国民の原子力発電に対する不安感や不信感を増幅する結果となりました。

 原子力に依存したエネルギー政策の検討に当たっては、「試算隠し」などあってはならず、慎重な検討がますます必要となっています。中間報告が、上記2点を踏まえ、消費者・国民の理解が得られるものとすべきであることを、改めて申し添えます。