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主婦連合会、(社)全国消費生活相談員協会、日本消費者連盟、全国消団連の消費者団体4団体が、今年3月から4月にかけて食品産業154社に対しアンケート調査を実施し、その結果がまとまりましたので、以下、概略をお知らせします。
なお、報告書については、4団体のところで実費で販売しています。



「食品産業の消費者重視経営の評価に関するアンケート調査報告書」
の公表について(概要)

2004年7月23日
主婦連合会

1. 経緯

 国産牛肉偽装事件や食品の偽装表示、自動車のリコール隠し問題など、事業者による不祥事があとを絶たず、消費者の事業者に対する信頼が、根底から大きく揺るがされ続けている。

 国は事業者の自主行動基準への取組みの必要性を認識し、2002年12月に国民生活審議会において「消費者に信頼される事業者となるために−自主行動基準の指針−」をとりまとめた。その中で、自主行動基準を評価する役割を担う消費者団体やNPO等の第三者評価機関が発展することが重要とされている。主婦連合会は、内閣府より事業を請け負い、「消費者重視経営の評価基準研究会」を組織して、2003年5月に「消費者重視経営の評価基準‐食品産業を中心とした評価基準‐」(以下、「評価基準」)を公表した。今回もこれに続き、内閣府より事業を請け負い、「評価基準」に基づいたアンケート調査を実施し、企業の消費者重視経営の現状やその傾向、問題点等について調査した。

 本評価結果を広く公表することで、企業の消費者重視経営に向けての取り組みをいっそう促し、健全な経済社会の発展に貢献することとしたい。

2. アンケート結果

(1) 食品産業 株式上場154社のうち、98社が回答(回答率63.6%)

 アンケートは、上記「評価基準」に基づき作成した。アンケートは10項目で構成され、1項目につき10点ずつ配点し、合計100点満点で採点した。さらに、「評価基準」に従い、採点結果を5段階で評価した。

(2) 評価の概要

<総合評価>

  • 「自主行動基準」の策定や、コンプライアンス経営については着手されているが、実質的な運用は今後の課題となっている。
  • 全体的に社会に対する「公開性」に弱さがみえる。特に、「自主行動基準」の社会に向けた公開では、低い評価となった。
  • 消費者の関心が最も高い「商品の安全確保」では、食品産業各社の取組みは広がりを見せている。

(3) 全体評価は、5段階評価(ABCDE)における「C 」(67.1点/100点)

 「評価基準」を基に、アンケートの回答内容及び回答に添付された企業資料の評価・採点を行ない、点数により5段階に分けて評価した。その結果、全体平均は67.1点となり「普通をやや上回っている」という評価となった。

3. 食品産業への改善要望及び提言−食品産業全体の消費者重視経営の前進を求める−

 今回の調査は、企業の消費者重視経営の評価活動の第1歩として、アンケート調査により現状把握することをねらいとして実施した。アンケートのみによる調査という点では限界があるが、食品産業の現状について全体像の把握ができた。そこから消費者団体としての改善要望・提言をまとめ、報告書に掲載している。本報告書は、食品産業全体の消費者重視経営を実現するために、参考資料として回答企業に送付する予定である。

 なお、今回の調査では、総合評価が5段階評価の「5」となった企業名を公表することとしていた。評価の結果、五十音順で、アサヒビール(株)、味の素(株)、(株)日清製粉グループ本社、日本製粉(株)、明治製菓(株)、森永製菓(株)、雪印乳業(株)の7社となった。

 今回の調査では、企業による差は非常に大きいことも明らかとなった。食品産業各社が、上記の企業など他社の取組みを参考に、食品産業全体として消費者重視経営が前進することを望む。

報告書は実費にて販売する予定です。

 

全体評価と改善要望・提言

評価に当たって

 今回のアンケート調査では、4つの大項目のもと、以下の10項目にわたる設問をした。

〔経営トップのコミットメント〕

  1. 経営トップが消費者重視経営の方針を明示し、リーダーシップを発揮しているか。

〔企業における自主行動基準の有無とその公開〕

  1. 自主行動基準が策定され、組織内に周知徹底されているか。
  2. 自主行動基準が、社会に向け公開されているか。

〔消費者重視の主な対策〕

  1. 製品・商品の安全が確保されているか。
  2. 製品・商品は、地球環境保全に十分配慮したものとなっているか。
  3. 製品・商品・サービスについて、的確な情報開示と十分な説明がなされているか。
  4. 消費者が苦情・意見を述べる手段・方法が確立しているか。
  5. 製品・商品事故発生時に、被害拡大を防止するための大勢が十分に整っているか。

〔コンプライアンス経営のための組織体制〕

  1. コンプライアンス経営推進のための組織体制が整備されているか。
  2. コンプライアンス経営のモニタリングや、再発防止策が適正に運用されているか。

評価は、5段階評価(A,B,C,D,E)とした。

 評価については、巻末に掲載した『食品産業を中心とした評価基準』(以下、『評価基準』)に準じて評価した。『評価基準』では、上記1〜10の各項目について10点ずつ配点し、全体で100点満点としており、それに従って採点した。採点結果に基づく「総合評価」について『評価基準』では、以下のように5段階で表わしており、それに従って今回のアンケート調査結果についても、各項目及び全体評価を5段階で評価し、A〜Eで表記した。

[総合評価]

☆特別に優れている :90点以上 → A
☆優れている :75点〜89点 → B
☆普通をやや上回っている :61点〜74点 → C
☆普通 :50点〜60点 → D
☆改善を要する :49点以下 → E

全体評価

【評価結果】 C:「普通をやや上回っている」

  〔点数〕 〔評価〕

全体評価(回答98社の平均)

67.1
     
1.トップのコミットメント 7.0
2.自主行動基準の策定 5.9
3.自主行動基準の公開 3.0
4.商品の安全 8.6
5.商品の環境配慮 7.4
6.商品の情報開示・説明 7.5
7.消費者の苦情・意見対応 7.3
8.事故発生時の体制 7.3
9.コンプライアンス組織体制 6.7
10.コンプライアンスのモニタリング等 6.5


回答98社の項目ごとの評価結果

項 目 A B C D E 合計
1.トップのコミットメント 13 17 44 20 4 98
2.自主行動基準の策定 6 21 20 32 19 98
3.自主行動基準の公開 3 7 1 26 61 98
4.商品の安全 61 17 6 9 5 98
5.商品の環境配慮 41 21 1 19 16 98
6.商品の情報開示・説明 37 18 14 21 8 98
7.消費者の苦情・意見対応 23 35 13 17 10 98
8.事故発生時の体制 22 21 26 23 6 98
9.コンプライアンス組織体制 37 8 14 14 25 98
10.コンプライアンスのモニタリング等 32 21 5 12 28 98


<評価コメント>

  1. 企業の不祥事が続発し、重大事態を招けば消費者の信頼を失い市場退場を余儀なくされる状況のもとで、食品産業各社は、製品・商品の安全確保や、消費者の信頼を得るよう志向していることは評価できる。

  2. 自主行動基準の策定・運用、コンプライアンス経営体制の確立については着手されているが、実質的な運用は今後の課題となっている企業が多い。

  3. 全体的に、社会に対する公開性に弱さがある。特に、「自主行動基準」の公開では、他の項目と比べて低い評価となった。