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 東京地婦連、NACS、全国消団連の3団体は、3月25日に、国会議員(衆議院内閣委員会の理事9議員)中心に、公益通報者保護法案の修正の要請を行いました。



2004年3月25日

衆参両院議員 各位

全国消費者団体連絡会
(全国消団連)
東京都千代田区六番町15
プラザエフ6階

公益通報者保護法案の修正を求める要請書
 

 3月9日の閣議において、公益通報者保護法案が決定されました。本件について全国消団連は、2004年1月21日付けで、内閣府宛てに昨年12月10日付け骨子案に関する意見書を提出していました。今回閣議決定された法案においては、私たちの要望が一部取り入れられたものの(解釈規定の新設等)、核心部分では、残念ながら私たちの意見が取り入れられず、さらに後退した内容となっています。

 よって、今後の国会での討議を通じて、以下の点について、法案の修正を求めます。

 そもそも、公益通報者保護制度については、2003年5月に内閣府より発表された「21世紀型の消費者政策の在り方について」で、「事業者のコンプライアンス(法令遵守)経営や消費者への情報提供を通じ、消費者被害の未然防止・拡大防止等に資するほか、法令違反に対する行政の監視機能を補完する仕組みとしても効果を発揮することが期待され」、「事業者による法令遵守を確保して消費者利益の擁護等を図るために、公益通報者保護制度を整備する必要がある」としています。

 このような制度趣旨から考えると、政府案のように、通報対象事実を狭め、通報しにくい制度にしてはなりません。

 続発する企業不祥事や事業者の法令違反により、消費者は様々な利益を侵害されています。また、企業不祥事の多くが、通報を契機として明らかになっており、私たちの下記の要望を取り入れていただいた制度を実現していただくよう改めて要請するものです。

<法案についての要望事項>

1.今回の政府案では、「公益通報」の対象となる事案の範囲を、一層狭めたことは遺憾です。対象をもっと広く設定すべきです。

 そもそも私どもは、内閣府骨子案で示された保護の対象となる事案を法令違反や犯罪行為などの事実に限定することについて、法令違反に限定せずその範囲を広げるよう求めてきました。法令が整備されるのが、問題発生後であることが多いことがこの間の事例です。

 しかし、今回の政府案では、私どもの意見は反映されなかっただけでなく、対象法令として明示されるのは7法令に絞られ、その他の法令が対象となるかどうかは、今後の政令に委ねられることになり、大きく後退した内容になっています。

 また、今回の政府案では、「公益通報」の定義で、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている」としています。これは、昨年12月の骨子(案)の「生ずるおそれがある」より発生の緊急性という点からも、対象をさらに絞り込む法文となっており、未然防止・拡大防止の観点からも問題です。

2.外部通報要件については一般条項を追加するなど、要件の緩和がぜひ必要です。

 今回の政府案でも、外部通報として認められる条件として、イ〜ホを限定列挙しており、このいずれかに該当しなければ、通報者の保護の対象とならない制度となってしまいます。犯罪行為などの事実であってもこのような外部通報要件が課せられることが、その他の事案の外部通報を保護の対象とするかどうかという裁判所の判断に大きな影響を及ぼす恐れがあります。外部通報の要件の緩和はぜひ必要です。

3.政府案第8条では「他人の正当な利益等の尊重」を規定していますが、通報者を萎縮させ、通報しにくくする要素があり、あえて規定する必要はないと考えます。

4.行政機関への通報に関して、当該の行政機関が通報者に対応状況を報告する規定が必要です。

 行政機関に通報し、行政機関が必要な調査と措置をとることが規定されていますが、その調査と措置の内容について、一定期間の後に通報者に報告される制度とするべきだと考えます。今回の政府案でも、調査と措置内容について通報者への報告が規定されておらず、条文明記を求めます。

<制度運用に当たっての要望事項>

5.通報先を選択する前の段階において、法律専門家や公益通報者支援団体などに相談できるようにしておくことが必要です。

6.今回の政府案では、犯罪行為の対象となる法令を別表として7法令のみ規定し、あとは政令で定めることにしています。政令を定める際に、対象法令数が少なくなると、通報対象が狭くなってしまいます。少なくとも法目的に沿った生命・身体・財産・その他利益を保護できる範囲での政令化を求めます。

 また、政令の検討プロセスをオープンにし、パブリックコメントなどを通じて、広く国民の意見を聴いた上で、対象法令を確定させていくべきです。ある法令について、なぜこの制度の対象とならなかったのかという点も含めて、明らかにするような運営を求めます。