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全国消費者団体連絡会は、司法制度改革推進本部アクセス検討会に対して、弁護士報酬敗訴者負担の「合意論」に関する意見を提出しました。



2003年12月24日

司法制度改革推進本部
司法アクセス検討会 御中
全国消費者団体連絡会
千代田区六番町15プラザエフ6階
電話03-5216-6024 FAX 03-5216-6036


弁護士報酬敗訴者負担の「合意論」に対する意見

 当連絡会は、消費者と事業者の経済力・情報力・交渉力などの格差が厳然と存在する現実をふまえ、弁護士報酬の両面的敗訴者負担制度が導入された場合、消費者が訴訟を提起することが著しく困難になると考え、同制度の導入に反対してまいりました。この間、貴検討会での議論においても、格差がある当事者間の訴訟類型に関しては、両面的敗訴者負担を導入しない方向で議論がすすめられていました。

 しかし、10月の検討会以来、原則各自負担、訴訟提起後双方の合意にもとづいて両面的敗訴者負担を選択できるという「合意論」が出され、その方向で議論がすすめられています。 消費者団体からみた場合、「合意論」には以下のような大きな懸念があり、「合意論」にもとづく制度(以下、「合意選択制」と表記)の導入に反対致します。

1. 両面的敗訴者負担を紛争発生前の契約事項に入れる動きが出てくることが懸念されます。

 現在、貴検討会で議論されている「合意選択制」が導入された場合、アナウンス効果によって、紛争発生前の契約段階において、両面的敗訴者負担を契約事項に入れる動きが出てくることが懸念されます。一般的に消費者は、契約時には紛争発生までを想定して契約書を確認しませんので、意識しないうちに両面的敗訴者負担に合意することとなりかねません。この結果、紛争発生後に弁護士に相談した際に、両面的敗訴者負担に既に合意していることを認識し、提訴を躊躇する大きな要因となることが心配されます。また、たとえ契約時に気付いたとしても、本契約から離脱しなければ、両面的敗訴者負担の合意を逃れることはできないという問題もあります。

 訴訟提起後の制度として「合意選択制」を構想するのであれば、前提として、紛争発生前の契約における両面的敗訴者負担の合意は、無効であることを規定するべきです。「今回、訴訟後の手続きに関する見直しであり、契約における無効の規定は別に検討せざるを得ない」という見解もあるようですが、対応にタイム・ラグが生じることは避けねばなりません。責任ある対応を求めます。

2. 訴訟当事者にとって、両面的敗訴者負担の合意をしなければ、勝訴の自信がないとの心証を裁判官に持たれてしまうのではないかという心配があります。

3. 「合意選択制」では、司法アクセスの促進にはつながりません。消費者と事業者のように当事者間の力量格差が明確である場合は「合意選択制」から除外することを求めます。司法アクセス促進の点から、片面的敗訴者負担の導入を検討すべきです。

 消費者と事業者のように当事者間の経済力をはじめとした格差が大きい場合、経済力・情報力等で優位にある当事者の方が「両面的敗訴者負担」の選択を主張できる余地が大きいといえます。経済力・情報力等で劣位にある者は、訴訟の見通しも難しい上に、さらに「両面的敗訴者負担」に合意するかどうか難しい判断を迫られます。このような制度が、消費者にとって精神的なあらたな負担とはなっても、司法アクセスの促進とならないことは明らかです。消費者と事業者や労働者と雇用者のように当事者間の力量格差が明確である場合は、「合意選択制」から除外することを求めます。

 司法アクセスの促進の観点から言えば、当事者間に構造的な力量格差がある場合や、行政訴訟などの公益性の高い訴訟については、片面的敗訴者負担の導入こそ検討されるべきです。