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全国消費者団体連絡会では、公正取引委員会が10月28日〜12月1日の期間で意見募集していた「独占禁止法研究会報告書に関する意見」を提出しておりますのでご案内します。



2003年12月1日

公正取引委員会
委員長 竹島 一彦 殿

独占禁止法研究会報告書に関する意見

全国消費者団体連絡会
東京都千代田区六番町15 プラザエフ6階
電話03-5216-6024 FAX03-5216-6036
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 本年10月28日付で、公正取引委員会から独占禁止法研究会報告書が発表され、パブリックコメントに付されました。同報告書は、市場における競争制限行為の取締りを促進するとともに、課徴金や刑事罰という違反行為に対する措置を強化することによって、独占禁止法の執行力を強化するという立場に立つものです。

 日本経済のカルテル・談合体質については、長年にわたり指摘されてきた問題です。現在でも、談合やカルテルの摘発に関する新聞報道を目にする機会が少なくありませんし、日本を代表する大企業の中にも、ここ10年の間に違反行為を繰り返して摘発された例があります。消費者・市民は、こうした事件について怒りをもって見つめており、日本の経済が一刻も早くカルテル・談合体質から脱却することを強く求めています。そのためには、独占禁止法を中心とする公正な競争ルールの強化と、ルール違反の行為の厳正な取締りが不可欠です。

 1990年代に入ってからは、独占禁止法の改正や運用強化、公正取引委員会の体制充実など、一貫して競争政策の充実強化が図られてきました。それにも関わらず、違反行為を繰り返す事業者が後を絶たないという事実は、競争政策の抜本的な充実強化の必要性を物語っています。

 当連絡会は、こうした問題意識から、研究会報告書の立場を基本的に支持する方向で、上記意見募集に基づく意見を提出いたします。

 なお、研究会報告書では犯則調査権限の導入や罰則の強化などについても盛り込まれています。刑事罰の活用は違反行為に対する抑止力を高める上で必要不可欠であり、研究会報告書に盛り込まれた諸施策については、消費者・市民として基本的に賛同するものです。しかし、刑事告発の件数はこの5年間で2件と非常に少数に留まっており、十分な取組みとは言えないと考えています。新たに導入される犯則調査権限を活用しつつ、刑事告発を積極的に行っていくことを強く希望します。


1.課徴金制度の見直しについて

 課徴金については、1991年の法改正により算定率が引上げられました。それにも関わらず、公共入札に関わる談合事件を中心に、違反行為を繰り返し行う例が後を絶ちません。このことは、日本の課徴金がEUの制裁金などと比べて低い水準にあることと無関係ではないと考えます。課徴金について、単なる不当利得の徴収に留まらず、違反行為を通じた社会全体に対する経済的マイナス効果を補償させる水準まで引上げることは、抑止力の強化という観点から必要不可欠です。

 研究会報告書では、課徴金の対象範囲の拡大や加算制度の導入についてもふれています。前者については、違法な行為が「やり得」とならないようにするという意味から、消費者・市民として賛同します。後者についても、違反行為を繰り返し行う事業者は、消費者・市民の立場から見て社会的責任の自覚も企業倫理もないと考えざるを得ませんし、違反行為を繰り返すことによって日本経済のカルテル・談合体質を維持することに荷担し、より大きな社会的損失を生じさせていると言えるでしょう。そうした事業者に対する加算制度の導入についても、消費者・市民として賛同するものです。

 事業者の主張する憲法の二重処罰禁止との関係に留意しつつ、研究会報告書に盛り込まれた措置を総合的に講ずることにより、課徴金制度の持つ違法行為の抑止力を飛躍的に向上させることを、消費者・市民として期待いたします。


2.措置減免制度(リーニエンシー制度)について

 カルテルや談合は、摘発の経験を重ねるごとに手口が巧妙化することが避けられません。調査権限の拡大や調査体制の充実はもとより重要ですが、そもそも密室性の強いカルテル・談合の調査に関して、それのみで対応することには限界があります。違反行為に対する抑止力を高めるためには摘発率を向上させる必要があり、違反行為者自らによる情報提供を促す制度である措置減免制度は重要な意味を持っています。

 措置減免制度は、複数の事業者間で共有されているカルテル・談合などの独占禁止法違反行為に関わる情報について、その提供を促す制度です。これは、組織の内部で隠蔽されている違法行為などに関する情報の提供を促す、公益通報者保護制度と通ずる面があります。この間、企業不祥事が多発する中で、消費者・市民は組織内での不正行為の隠蔽に対して強い怒りを抱いています。措置減免制度を違法・不正な行為を明らかにするための制度として捉えた場合、その導入は決して市民感覚に反するものではありません。

 また、措置減免制度の導入によってカルテル・談合などに関わる情報が公正取引委員会に提供されるケースが増加すれば、カルテル・談合自体を行いにくくなります。日本経済のカルテル・談合体質からの脱却という観点からも、消費者・市民として制度導入に賛成いたします。


3.独占・寡占規制の見直しについて

 電力、電気通信などの公益事業分野については、政策的独占と料金決定への公的機関の関与という仕組みから政策的な転換が行われ、現在は競争が導入される過程にあります。そこでは、送電網や電気通信回線などの施設を専有していることや、圧倒的に規模が大きいことなどによって、既存事業者が絶対的に有利な立場にあります。既存事業者がそうした立場を濫用して、新規参入者の事業活動を妨害するなどの競争制限行為を行うことは、消費者利益の観点からも、社会通念からも許されません。

 研究会報告書では、こうした問題などに対処するために「不可欠施設等」という新しい概念を導入し、不可欠施設等を専有する事業者の競争制限行為を取り締まる規定を設けることとしています。しかし、市場支配的な地位にある事業者は、不可欠施設等の専有者に限られているわけではありません。むしろ、私的独占の規制を補完するものとして、市場支配的な地位の濫用行為を広く規制する一般的な規定を設け、その一部を具体化したものとして不可欠施設等に関わる競争制限行為の規制を設けることが適切と考えます。

 なお、研究会報告書では、独占的状態の規制(第8条の4)と価格の同調的引上げに関する報告の徴収(第18条の2)について廃止することとされていますが、消費者・市民として廃止の必要性には疑問を持っています。独占的状態の規制は市場構造そのものの規制であり、競争制限行為を規制する新設の条項と矛盾するものではありません。また、カルテルとして現実に摘発できなかった同調的な値上げが、全てカルテルではないとは言い切れない以上、報告を徴収できる制度を残しておく必要があると考えます。該当業種へのカルテル規制を強化するために、徴収した報告から摘発の手がかりを得られるようにするという意味からも、報告徴収規定の重要性を指摘しておきます。


終わりに

 2001年11月に発表された『21世紀における競争政策と公正取引委員会の在り方』(21世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会提言書)の第4章では、「消費者政策の積極的な推進」として、景品表示法による不当表示規制の見直しなどについて提言しています。また、2002年3月の閣議決定による「司法制度改革推進計画」の中では、団体訴権に関する検討部局として貴委員会が掲げられ、独占禁止法・景品表示法による団体訴権の検討が示唆されています。貴委員会においては、こうした流れを積極的に受け止め、消費者政策の一層の充実に努めていただくよう、当連絡会として要望いたします。