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司法制度改革推進本部が9月1日締め切りで、総合的なADRの制度基盤の整備について意見募集を行っておりました。
全国消費者団体連絡会では事務局長名で意見書を提出いたしました。



2003年9月1日

司法制度改革推進本部事務局御中

全国消費者団体連絡会
事務局長 神田 敏子
住所 東京都千代田区六番町15 プラザエフ6階
電話 03−5216−6024
fax 03−5216−6036
電子メール webmaster@shodanren.gr.jp

 

「総合的なADRの制度基盤の整備について」に関する意見
 

 消費者被害が増え続けている中、消費者にとって気軽に相談でき、被害救済が行われるような社会的システムが整備されることが必要です。そのためには、裁判を利用しやすいものにするとともに、身近なところに信頼できるADR機関の多様な展開があり、消費者が主体的に相談する機関を選択できるようになることが必要と考えます。以上のような基本的認識にたち、ADRを利用する消費者としての立場から、「総合的なADRの制度基盤の整備について」以下意見を申し述べます。

  1. 第1 検討の対象とするADRの範囲【論点2】について
     
     相談手続きはADRの入り口であり、大変重要な手続きです。そのことについて基本理念でふれることに異論はありません。しかし、相談手続きは、ADRだけでなく、さまざまな民間団体や個人も行っているものであり、その水準もさまざまです。具体的な法的義務をADRに準じて課すことについては慎重であるべきだと考えます。
     
  2. 第2 基本的事項【論点6・9】について
     
     国の責務として、ADRに関して教育・情報提供の充実を規定することは必要ですが、より広い視点から、総合的な司法教育や情報提供を推進する一環として、ADRに関する教育・情報提供を位置付けることが必要と考えます。そのことが、権利意識を持ち、泣き寝入りせず、主体的に紛争解決に関与する国民意識を広げていくことになると考えます。
     民事紛争においても、被害が広範な消費者に及んでいる場合や制度的問題が要因となる場合などがあり、意識的に裁判を選択することも重要です。「民事に関する紛争については、当事者間の合意を基礎とした自主的解決に委ねられている」といった認識が一面的に国民の役割として規定されることは疑問です。民事紛争といっても、その内容によってADRを選択することもあれば裁判を選択することもあるのであり、そのような認識を国民がもてるような規定にすべきです。
     
  3. 第3 一般的事項【論点11・13】について
     
     消費者が主体的にADR機関を選択できるように、努力義務としての情報提供義務を定めることと、サービス提供にかかわる重要事項の説明義務を規定することに賛成します。説明義務を課す重要事項については、例示の範囲にとどまらず、時効中断が可能か等の「裁判手続きとの関係」や、「ADRを中途で離脱する場合の手続きや費用」等についても説明義務に加えることが必要と考えます。
     ADR機関からの情報提供の充実は、透明性を高め、消費者の選択や第三者からの評価を可能にし、結果としてADR機関の健全性を確保することにつながります。このような点からも、情報提供義務を定めることは大切です。
     
  4. 第5 特例的事項【論点19・20・35】について
     
     ADRにおいて必要な時間をかけて紛争解決がはかられるために、時効中断に関する特例規定は必要と考えます。しかし、この特例を適用するにあたって、適格性を事前確認方式にし、行政機関に委ねることは、ADRの自主性と多様性確保の観点から反対します。適格性の要件と考えられている「手続きの開始・終了の公正・適確な実施」「手続き過程の公正・適確な進行管理」「手続き過程の記録管理」といった点は、主に外形的要件であり、必要に応じて当事者が主張立証し裁判所が判断するといった対応が可能であると考えます。
     
  5. 【論点21・35】について
     
     和解に対する執行力の付与の検討は時期尚早であり、現時点では悪用のおそれがあり反対です。本来、当事者同士の合意によって成立する和解に関して、執行力の行使が必要になる場合はどのようなときか、といった情報提供が「総合的なADRの制度基盤の整備について」の記述では不充分であり、事例をふまえた慎重な検討が必要と考えます。多様なADRが展開し、執行力付与の必要性が実感される事例が出てきた段階で検討すれば良いのではないでしょうか。むしろ、現時点においては、悪質な事業者が機械的な債権取立てのためにADRを設置・運営するのではないか等、制度悪用の懸念があり、和解に対する執行力の付与には慎重であるべきです。また、執行力付与のためには、厳密な適格要件や行政による事前確認方式が問題となり、結果として、自主的で多様なADRの展開を阻害することも考えられることから、現時点では執行力付与に反対します。
     
  6. 【論点28】について
     
     所得が少ないために紛争解決の手段が狭められることがないよう、ADR手続き費用などに対して民事法律扶助が手当てされるようにすることが必要と考えます。民事法律扶助を拡充し、現実に援助がすすむよう検討をしてください。
     
  7. 【論点30】について
     
     ADR主宰業務について、個別的検討を行った上で、隣接法律専門職種へ緩和することについて賛成します。また、専門的知見を有するものがADR主宰業務を行う際に、法律に関する事項についてのみ弁護士に相談できる組織的準備を行うことで、適格性を認めることが必要と考えます。
     
  8. その他
     
     ADR基本法制については、成立後に本当に多様なADRの発展に寄与しているかどうか等の観点から、年限を定めてフォローアップを行い、必要に応じた見なおしを行う旨の規定が必要です。