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全国消費者団体連絡会は、司法制度改革推進本部が募集していた裁判員制度のたたき台への意見を提出しました。




2003年5月31日

司法制度改革推進本部事務局 御中
全国消費者団体連絡会
事務局長 神田 敏子
住所:東京都千代田区六番町15
プラザエフ6階
電話:03-5216-6024
FAX:03-5216-6036

 司法制度改革推進本部裁判員制度のたたき台について意見募集がされたことは望ましいことであると考えます。司法改革の柱の一つとして国民の司法参加を位置付け、「刑事訴訟手続きへの新たな参加制度」として導入する裁判員制度は、「広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度」として導入される必要があります。その観点から2002年10月にも、同じような論点で意見を申しのべましたが、再度申し述べます。

 尚、裁判員制度の検討にあたっては、一般国民が支える制度を設計するという観点から、パブリックコメントに限らず、タウン・ミーティングなども開催し、一般国民との双方向での意見交換を行うなどの工夫も必要と考えます。

1. 基本構造について

(1)ア 合議体の構成について

 裁判員が、専門家である裁判官に議論を誘導されることなく、市民としての一般常識にもとづいて判断できるよう留意されなければなりません。その点から、裁判員の数は、裁判官の数の3倍以上とするべきです。その観点から言えばB案を支持します。
  
(2)評決について

 有罪・無罪の評決については、裁判員のみで行う独立評決制度とし、全員一致をめざして評議を行う制度とするべきです。ただし、裁判員が有罪と決定した場合であっても、全裁判官が一致して無罪と判断した場合は、無罪とする制度とします。この意味からすれば、過半数を原則とするA、B、C案のいずれについても支持できません。
合議体に裁判員が複数存在するときに、最低限加味される人数がいずれの案も裁判員1名以上となっており、裁判員の意思が十分反映されているとはいいがたいのでその点からもA、B、C案には反対です。

(3)対象事件の範囲

 導入当初は、重大な刑事事件を対象とすると審議会意見書で確認されていますが、運用状況をみながら、行政訴訟もその対象とするよう早期に検討すべきです。また、その他の刑事事件や、民事事件への拡大についても検討すべきです。消費者団体の議論の中では、消費者被害に関する民事事件は、市民としての一般常識をもって判断することが特に必要であるという意見が強いことを申し添えます。

 ただし、当面、裁判員制度の対象と考えられている刑事事件においては、被告が否認していない事件まで裁判員制度に付す必要はないと考えます。

2. 裁判員及び補充裁判員の選任について

(1)裁判員の要件について

 裁判員の要件が、いずれの案においても、衆議院議員の選挙権を有する者となっていますが、これでは、現状においては在住外国人を裁判員として認めないことになってしまいます。国際化が進む日本社会において、その一員として生活をしている外国人の参加を排除すべきでないと考えます。日本語の語学力が一定程度必要ですが、その点は、選任の手続きの際に確認してはどうでしょうか。

 また、年齢制限も被選挙権を基準にした25歳、30歳という案には反対です。むしろ、少年法の改正によって少年にも大人と同じように刑事裁判の被告になりうることを考えれば、18歳以上の少年の参加も考慮するべきではないかと考えます。

(2)欠格事由について

 継続的に多様な職務につく可能性のある公務員と同様の基準で、裁判員の欠格事由を定める必要はないと考えます。また、特に(イ)については不適切と考えます。刑期を終えているにもかかわらず、一般市民と区別される必要はないと考えるからです。万が一不適切な裁判員候補が選出されたとしても、忌避の制度によって対応できるものと考えられるからです。

(3)辞退理由について

 選任された本人が辞退することのできる理由とはいえ、一定の年齢を掲げることは不適当です。キの「疾病その他やむを得ない事由」の中で、自らの健康状態などをふまえて判断されれば良いことであり、ひとつの年齢基準ともなりかねない理由の設定は不適当と考えます。

3. 裁判員の義務について

 オで「職務上知りえた秘密をもらしてはならない」という規定は当然ですが、裁判員制度の改善につながるような情報まで制限することは、国民の知る権利を侵害することに
つながりかねないことから「国民の知る権利を侵さない」旨の規定は必要と考えます。

4. 公判手続きのあり方

 国民が裁判員としての義務をはたしやすくなるよう集中審理を行い、裁判の長期化を避ける必要があります。ただし、現在のような公判手続きのまま、集中審理だけを導入したのでは、被疑者弁護活動が困難になるだけです。十分な集中審理が行えるよう、公判前の証拠開示制度を導入し、弁護側・検察側とも十分な準備のもとに審理に臨めるようにすべきです。また、公判における口頭主義・直接主義を実質化し、裁判員が膨大な調書に目を通す必要がないようにするべきです。また、公判審理に裁判員が集中できるよう、リアルタイムで公判内容が確認できる速記録を採用すべきです。

 供述調書及び取り調べの信用性については、録音、ビデオの導入などをはかり、裁判員の求めに応じて確認できるように準備しておくようにすべきです。

最後に「裁判員制度」を支える法曹の養成について

 「裁判員制度」を国民が本当に主体的、実質的に参加できる制度として運営していくためには、裁判員・検察官・弁護士それぞれの役割が重要です。特に、裁判官は裁判員の主体性を尊重した裁判体の運営をしていく事が必要になります。新制度スタートにあたっての現在の法曹関係者への教育・トレーニングならびに、法曹養成カリキュラムに具体化に反映されよう要望いたします。