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2003年5月6日

国民生活審議会消費者政策部会
公益通報者保護制度検討委員会
委員長 松本 恒雄 様

検討委員会委員 清水 鳩子
(主婦連合会副会長)
委員 神田 敏子
(全国消費者団体連絡会事務局長)

 

 
 公益通報者保護制度の具体的内容について、この間、私どもも議論に参画してまいりました。検討委員会開始から前半の議論では、民事ルールか行政ルールかによって論点が提示され、意見もそれぞれの立場から出されていました。その時点で私どもは、そこまでに出された意見をふまえて、検討が行えると期待しておりました。ところが、3月27日に提案された事務局(案)は、対象とする公益を法令違反に限定し、対象とする者も労働者に限るなど、大変狭い範囲の制度案となり、それまでの議論がどのように反映されたのかわからないものでした。

 その後、委員連名で意見書を提出してまいりましたが、残念ながら、5月2日付で事務局から提示された案についても、引き続き下記のような点に問題があると考えております。私達は、実効性のある公益通報者保護制度の必要性については痛感しているが故に、下記の点について、引き続き十分な議論が必要と考えます。本日の委員会において、議論を尽くすとともに、今後の議論の場の持ち方についても検討されることを要望する次第です。

  1. 通報の範囲について、法令違反だけでは狭すぎます。
     
    5月2日付の案では、通報の範囲について「法令違反とすることが考えられる」、「通報者が通報時に法令違反であると信じるに足りる相当の理由があった場合には、(中略)配慮すべき」とされています。生命・身体への危害や財産への侵害も対象とすべきという点については、「意見があった」という表記となっています。
     
    この表現のまま、制度化がすすめば、通報の範囲は法令違反のみとなるおそれが十分にあります。私どもが、再三意見を述べてきたように、法令は発生する問題に対処する形で整備されていくものである以上、法令違反でなくとも公益を害するために通報されるべき事案は存在します。この点について引き続き各委員の意見交換が必要と考えます。
     
  2. 通報者の範囲に関する検討をオープンに行うべきです。
     
    5月2日付の案では、通報者の範囲について、労働者については「保護の対象とする」とし、「元労働者、派遣労働者等の取り扱いなど、対象とする労働者の範囲については、さらに検討する必要がある。」と加えられています。検討の必要性まで記述されているのですから、あらためてオープンに検討する場の設置が必要です。
     
  3. 保護される通報先と保護要件について具体的な事例にもとづいた議論を行うべきです。
     
    この間の議論を受けて、事業者外部への通報要件に一定の変更が加えられていますが、この要件の設定でも、実質的には、事業者内部通報と行政機関への通報が前置される結果にならないか危惧されるところです。この論点は、まさにこの制度の性格を大きく左右するところであり、具体的な事例を想定して、丁寧な議論を行うことを求めます。
     
  4. 今後の議論のすすめ方について
     
    公益通報者保護制度は、日本において新しい制度であり、日本の社会風土の中で、どのように機能するか丁寧な検討が必要です。いったん、制度の基本設計を提示した上で、通報者や通報者保護の活動をしている団体からのヒアリングを実施するとともに、事業者からもヒアリングを実施し、具体的な懸念を明確にするプロセスをふんで、制度の詳細設計を行うべきです。具体的でオープンな議論を通じて日本社会におけるコンセンサスの形成をはかることが必要であり、あらためて議論の場を設置することを求めます。