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3月17日に国際シンポジウム「EUの消費者団体に学ぶ」を3月18日に第2回日・EU消費者団体対話を開催しました。
その概要の報告です。




 日本では、21世紀型消費者政策論議の中で、消費者の権利を位置付けた消費者政策のあり方についての検討が行われています。一方、すでにヨーロッパでは、団体訴権が実現し、政策形成過程における消費者団体の意見反映が尊重されるなど、消費者の権利が重視されています。そして、ヨーロッパの消費者団体は、体制や財政面でも、日本の消費者団体に比較すると大きな力を持っています。

 今回、外務省の招聘により、EUの消費者団体が日本の消費者団体との対話のために来日しました。1日目にシンポジウムを2日目に対話を開催しました。

国際シンポジウム「EUの消費者団体に学ぶ」概要

<日時> 2003年3月17日(月)10時30分〜16時30分

<主催> 全国消費者団体連絡会 内閣府国民生活局 外務省経済局

<会場> 三田共用会議所

<参加者> 約100名(消費者団体、行政関係者、弁護士、企業、報道関など)

<内容>

主催者挨拶 池山恭子 東京消費者団体連絡センタ−事務局長
幸田徳之 内閣府国民生活局消費者消費者調整課長
 

日本側基調報告 日本の消費者問題の状況と消費者団体の役割
神田敏子 全国消費者団体連絡会 事務局長

日本において消費者相談が急増している状況や企業の不祥事が相次ぐなか自主行動基準策定がすすめられていることなどを紹介。消費者団体としては、「消費者保護基本法の抜本改正」「団体訴権の実現」「消費者行政の強化」を主張していることを説明した。そして、全国消団連において消費者運動ビジョンの論議を開始していることを報告した。

 

EUの消費者団体からの基調報告
カルロス サンチェス レジェス
BEUC(ヨーロッパ消費者機構)副会長
OCU(スペイン消費者ユーザー団体)会長

EUといっても一つではなく、各国の歴史や法的枠組み違いから、消費者団体についてもそれぞれ特徴があることを、北欧諸国・西ヨーロッパ諸国・西南ヨーロッパ諸国に類型的に分けて紹介。その上でEUの消費者政策として、高いレベルの消費者保護、消費者保護ルールの執行、政策における消費者団体の関与が目的とされていることが報告された。

パネルディスカッション「EUの消費者運動に学ぶ」

コーディネーター 松本恒雄 一橋大学 大学院 教授 

パネリスト カルロス サンチェス レジェス
 (スペイン/ヨーロッパ消費者機構副会長)
パトリック ヴォン ブラムール
 (ドイツ/ドイツ消費者団体連合会専務補佐)
エウへニオ リボン セイスデドス(スペイン/弁護士)
ヨランダ キインターナ セラーノ
 (スペイン/スペイン消費者協会広報部長)
ヘレン グリエルム
 (ギリシャ/ギリシャ消費者協会「生活の質」代表)
和田正江 主婦連合会会長
品川尚志  日本生活協同組合連合会 専務理事

第1セッション 消費者団体の組織と財政について

 まず日本の消費者団体の組織と財政の概要について報告。そして、EU側参加者が所属している各団体の状況が報告された。この報告を通じて、ヨーロッパの消費者団体には、自らの資金のみで運営しているところもあれば、政府からかなりの援助をもらっているところもあること。その場合、消費者団体の独立性を侵害しないことが重要であることなどが明らかになった。

第2セッション 団体訴権について

 日本での団体訴権の検討状況が紹介された。EU側からは、団体訴権の活用事例などを中心に情報提供が行われた。各国の経験からも、団体訴権は消費者にとって大変有効に働き得る制度であり、日本でも制度的に実現と、それを行使しうる消費者団体の強化が必要であることなどが明らかとなった。

第3セッション 消費者団体の社会的ポジションについて

 消費者団体と政府・企業との関係について日本の状況を報告。EU側からは、各団体における政府や企業との関係や、商品テストの信頼性確保の取り組み、若いメンバーに消費者団体に参加してもらうための工夫などが紹介された。最後に、コーディネーターより、消費者団体が政策形成過程に参加するためにも組織・財政面での強化が重要であること、今回紹介されたEUの各団体の経験も参考にしながら、日本の消費者団体の活動を活性化しようとまとめていただいた。

閉会の挨拶 柴垣雅子 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会

第2回日・EU消費者対話

 1999年11月に第1回を開催してから、4年を経過して2回目の対話となった。

 経済のグローバル化が進展する中、消費者団体の関心事項も共通のものになってきており、国際的な協力が問題解決に必要であること、そして今後も対話の機会を重視するべきであることが参加者の共通認識となった。

<主催> 外務省経済局
内閣府国民生活局
駐日欧州委員会代表部
全国消費者団体連絡会

<開催日時> 2003年3月18日(火) 10時〜17時

<会場> 三田共用会議所

<参加者> 日本の消費者団体 10団体 15名、
EUの消費者団体 5名(氏名・所属は別紙参照)、
日本政府関係者 15名、駐日欧州委員会 2名 合計 37名

<内容>

「トレード」に関するプレゼンテーションと質疑

「WTOをめぐる諸問題」 日本消費者連盟 山浦康明

 この間の農業交渉に関して、農業の多面的機能ならびに各国の食料主権が尊重されるべきと指摘。WTO運営の透明性・公正性確保の必要性を主張した。

「フェア・トレード」 ドイツ消費者団体連合会 パトリック・フォン・ブランミュール

 不公正取引法について、消費者保護の観点から損害賠償ができるような改革が必要であると主張。企業の不当利得を許さない賠償制度を求めていると説明。

(質疑)

 主にWTOに関する意見交換となった。WTOに消費者意見を反映させるためには、各国において消費者保護を高いレベルで位置付け、その議論を背景に各国がWTO交渉に臨むようにすることが必要であるとの意見が述べられた。

対話 テーマ1「電子商取引」

EU側プレゼンテーション
 ヨーロッパ消費者機構 副会長 カルロス・サンチェス・レジェス

 紛争に対応する為の国際的和解機関を設ける必要性や、プライバシー保護のセーフハーバーへの参加企業が少ないといった課題が提起された。

日本側プレゼンテーション 日本消費者協会 理事 長見萬里野

 電子消費者契約法や特定商取引法ならびに景表法によるルール整備や規制の内容を紹介。今日的課題としてオークションにおける事業者と消費者間の取引問題を指摘。
      
(意見交換)

 マーク制度に参加する企業が少ないため実効性があがっていない問題、裁判外紛争解決機関の整備の重要性、子どもの安全性を確保する取り組みなどが情報交換された。

対話 テーマ2「食の安全とリスコミュニケーション」

 日本側プレゼンテーション 家庭栄養研究会 運営委員長 蓮尾隆子

 この数年の食品安全をめぐる事件と消費者団体の食品衛生法改正請願署名などの活動が、食品安全行政改革の動きにつながってきたことを紹介。

EU側プレゼンテーション
 スペイン消費者協会 広報部長 ヨランダ・キンターナ・セラーノ

 食の安全はフードチェーン全般の問題。EFSA(欧州食品安全庁)が設立されリスクアセスメントとリスクコミュニケーションを行う。消費者団体の情報発信も重要である。

(意見交換)

 EFSAの独立性の確保が必要。EFSAへの消費者代表参加が少なく、業界サイドの専門家もおり、不十分との意見が出された。消費者団体からの情報提供のあり方が交流された。

 最後に外務省より、今後も消費者団体間対話を継続する重要性が強調され、次回は、EU側での開催も検討してほしいという趣旨の意見が述べられた。EU側からは、次回は日本の団体を招聘するよう、欧州委員会消費者政策担当総局に対して働きかける旨の意思表示が行われた。