個人情報保護法制については、「次期通常国会において、……早急に成立させる」との与党3党の合意(2002年11月)に基づき、報道・表現の自由への配慮や公務員に対する罰則などを加えた新たな法案が、本年3月、衆議院に上程されました。既に4月8日には個人情報の保護に関する特別委員会における法案の趣旨説明が行われ、今週から実質的な審議に入っています。
当会では、民間部門に関する法制度がないなど個人情報保護法制が未整備な状況のもとで、個人情報の不正な取得や第三者提供の横行が推測される事例が数多く生じていることや、従業員等による個人情報の不正な漏洩が問題となるケースも散見されることから、法制度の整備を積極的に求めてきました。しかし、今国会に上程されている法案は、前回提出された法案と比較して、報道・表現の自由への配慮がより強くなされているものの、消費者・市民として重視している本人の権利保護の観点ではほとんど修正が加えられていません。
こうした事態の中で、先日、野党4党の共同修正案が明らかにされました。同修正案は、個人の権利の明確化、センシティブ情報の取得・利用規制、第三者機関の設置などについて盛り込んでいます。内容的には、事業者によるグループ利用の問題など、消費者・市民の立場から不満の残る部分もありますが、本人の権利保護という観点が一定の水準で盛り込まれているものと受け止めています。当会としては、個人情報保護問題に関する各党の立場が必ずしも一様でない中で、消費者・市民の声に配慮しつつ共同の修正案をまとめられたことについて、その努力に敬意を表するものです。
今後、本法案については短期間で精力的な審議が行われるものと思われます。その際には、野党の共同修正案の内容について十分に検討し、法案にできる限り盛り込むことが、本人の権利保護という観点から重要であると考えます。そうした審議を通じて個人の権利を尊重する個人情報保護法制を実現することが、IT技術の発展により情報の流通が活発化している現状における国会の責務であると考えます。
なお、現在審議されている「個人情報の保護に関する法律」は、民間部門の一般法としての性格を持っていますが、金融、医療、福祉、電気通信、教育など、個人情報について一層慎重な取扱いが求められる領域が存在します。これらの領域については個別の立法を行う必要があり、それぞれの分野を所管する行政庁において、早期に検討を行うべきです。
以上
|