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「21世紀型の消費者政策の在り方について−中間報告−」への意見


2003年1月27日
国民生活審議会
消費者政策部会事務局 御中
全国消費者団体連絡会
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東京都千代田区六番町15プラザエフ6階
電話 03-5216-6024  fax 03-5216-6036
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国民生活審議会消費者政策部会において「21世紀型消費者政策」の検討を精力的にすすめられている事に敬意を表します。「消費者の権利」が保障される消費者保護基本法の抜本改正と消費者政策の展開を求める立場から、以下意見を申し述べます。今後の、貴部会における「21世紀型消費者政策」の議論に反映下さいます様、お願いします。
1. 21世紀型消費者政策全般をとおして、以下の点を重点課題として実現し、消費者の権利が、具体的な制度によって保障されることを求めます。
(1) 消費者の権利の確保を明確に位置付けた消費者保護基本法の抜本改正
(2) 消費者行政を総合的に企画・立案、推進・調整できるよう、各省庁への勧告権などを有する常設機関の設置と、その機関の意思決定への消費者代表の参画。
(3)  団体訴権の実現など、現代における消費者団体の社会的役割の明確化。そして、消費者団体の自主的発展を促進するための、行政による援助の具体化

2. 中間報告の記述にそって、以下の意見を申し述べます。
(1)21世紀型消費者政策検討の背景と基本的考え方について
消費者トラブルの増加・複雑化や企業不祥事の多発などを背景として、消費者の権利を確保するために消費者政策の抜本的見直しが必要であることについては、異論のないところです。しかし、「保護から自立という消費者像の転換」という認識は、一面的です。高齢者、若年者、困惑状態で契約・購買させられる消費者などが広範に存在します。悪質な商法を意図的に行っている事業者も後を絶ちません。このような現実を考えると、消費者保護の視点からの制度・政策が、十分に実施されているわけではなく、なお引き続き保護の視点からの政策展開も重要です。
同時に、多様な商品・サービスが生まれる中、行政規制だけでは十分な対応とはならないことも明らかであり、旧来の消費者保護政策に加え、民事ルールの充実とそれを活用できる消費者の主体性の確立支援や、事業者のコンプライアンス経営促進をすすめる政策手法が加えられる必要があります。「消費者像」についても、「保護」の対象となる場合と、「自立した主体」として権利行使を保障し支援する場合とがあり、多様性をもった存在として認識する必要があります。
消費者と事業者の情報力・交渉力などの格差は、商品・サービスの高度化・多様化の中で、従来より拡大してきており、消費者が「自立した主体」として「消費者の権利」を行使できるようにするためには、「公正な競争が行われる市場形成のための実効性あるルールの確立」や、「行政や消費者団体等による消費者への支援の拡充」、「消費者教育の充実・強化」、ならびに「消費者への適正な情報提供をはじめとした事業者の責務の明確化」といった環境整備が必要です。行政の責務について、「消費者政策の策定・実施」にとどまらず、「公正な競争が行われる市場形成のための実効性あるルールの確立」も明示し、公正取引委員会との連携を強化すべきです。
(2)消費者の安全確保
安全基準の整備については、国際規格に対して、国内の消費者が意見を述べ規格策定過程に実質的に関与できる制度整備が必要です。例えば食品の分野については、従来より消費者団体が主張しているように、コーデックス国内委員会を設置すべきです。
危害・欠陥情報の収集・公表について、事業者から行政を経由して消費者に情報が提供されるルートだけが想定されていますが、現実には、事業者から直接消費者に情報提供した方が迅速であり効率的です。事業者に対して、危害・欠陥情報を消費者にも公表するよう義務を課すことについて検討すべきです。
トレーサビリティーシステムの充実は、消費者への情報提供という趣旨よりも、一義的には、ハザード対応をより速く効率的に行える点にその目的があると考えます。その点を明確にし、義務的な制度にすべき部分と事業者の自主的対応に委ねる部分を峻別しておく必要があります。
消費者被害救済の実効性確保のため、この間のPL訴訟件数が必ずしも多くないという状況をふまえ、PL法の改正の必要性について検討されることを求めます。
(3)消費者契約の適正化
一般ルールとしては、記述されていることが法的に明確化されるのであれば評価できます。
問題があるのは、執拗な勧誘だけではありません。威迫、困惑といった類型の勧誘行為をはじめとした不当な勧誘行為についての規制を検討し、消費者契約法の見直しに結びつけることを求めます。
消費者信用については、1項目たてて論じられていますが、その他にも金融や電子商取引など、その商品・サービスの内容または契約方法の特殊性から、実態に応じた規制の拡充が必要な分野について列挙し、方策の検討を計画化すべきです。
指定商品・指定役務制については、行政対応が後追いとなる要因となっています。指定商品・指定役務制をとりやめ、迅速に対応できるようにすべきです。
(4)苦情処理・紛争解決
消費者が利用しやすい裁判制度についても、消費者被害の解決の実状をふまえて検討をすべきす。その中では、消費者にとって提訴萎縮効果の大きい弁護士報酬の敗訴者負担制度は導入すべきでないことを明示すべきと考えます。
行政型ADRや業界型ADRに記述が限られていますが、NPO型ADRについても位置付け、支援・育成していくようにすべきです。なお、それぞれのADRについて、運営の透明性が確保される必要があります。
ADRで相談を受けたり、あっせん・調停を行う人材の育成についても検討すべきです。
(5)行政の推進体制
都道府県の消費者行政は後退の傾向が続いています。地方の推進体制においてもふれられているように体制整備が必要です。
国民生活センターについて、その役割が重大であることはそのとおりです。ただし、今後の機能強化の方向性については開かれた場での十分な論議が必要です。また、運営面において消費者の参画を強めるよう検討すべきです。
(6)公益通報者保護制度
本来、公益通報者保護制度は、官民共に設けられるべきであり、対象も消費者利益に資するものに限定すべきではありません。今回、審議会の位置付けから消費者利益に関する公益通報者保護制度について検討をすすめるにしても、さらに幅広い公益を対象とした制度の先鞭としての位置付けであり、包括的な制度検討を別途開始するよう当該機関に求めることを明記すべきです。
通報ルートに関しては、内部ルート前置とすべきではありません。企業が内部ルートを設けるインセンティヴとなるよう内部前置を求める意見もあります。しかし、外部ルートと併置としても、きちんと機能する内部ルートがあれば、従業員は内部ルート活用を指向するほうが多いと考えられますので、外部ルート併置でも企業の内部ルート整備のインセンティヴが働く可能性が強いでしょう。内部前置とした場合には、内部ルートにおいて通報内容が適切に処理されない場合、通報者に非常な困難を強いる結果になってしまいます。
外部ルートを行政機関に限定するようなこともすべきではありません。現在行われている内部告発が、逆に萎縮するような結果を招かないよう具体化にあたって留意すべきです。
(7)その他
21世紀型消費者政策で記述された内容について、消費者保護基本法見直しに反映させるものと、別途個別法改正に結びつけるもの、または行政運営において実現するものに区分けし、それぞれの実施計画を明示することを求めます。
以上