[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る

内閣官房長官宛に、6月6日付けで「新たな食品安全行政に関する要請」を提出しました。


2002年6月6日
内閣官房長官
福田 康夫 様
全国消費者団体連絡会
住所 東京都千代田区六番町15
       プラザエフ6階
新たな食品安全行政に関する要請
 5月31日に開催された「食品安全行政に関する関係閣僚会議」で、「新たな食品安全行政組織の概要(案)」と「食品の安全の確保に関する法制度の見直しの基本的方向(案)」が検討されました。この提案は、リスク評価機関をあらたに設置するなど、この間の消費者団体の提言が取り入れられています。
 しかし、基本的な点で、BSE調査検討委員会報告や消費者団体の要望の趣旨が具体化されていない面があります。つきましては、下記事項について、あらためてご検討いただき、成案に反映されるよう要請するものです。

                  


1. 新たな食品安全行政組織の役割として、今回提案の内容に加えて、リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションを貫く基本方針の策定を明確に位置付けるべきです。
  関係閣僚会議に示された案では、新たな食品安全行政組織(以下、「新組織」)の役割が、@リスク評価、Aリスク評価結果にもとづいたリスク管理機関への勧告・モニタリング、Bリスク管理機関も含めたリスクコミュニケーションの総合的マネジメントの実施、などとなっています。一方、BSE調査検討委員会報告では、新組織の役割として、第一に、リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションを貫く基本方針を盛り込んだリスク分析に関する基本指針の策定を位置付けています。私たちは、関係閣僚会議に提案された新組織の役割が、個別のリスク評価とリスクコミュニケーションに限定されているのではないか危惧しています。
BSE調査検討委員会報告のように新組織の役割として、リスク分析に関する基本指針の策定を位置付けることで、リスク分析の考え方にもとづいた総合的な食品安全政策の検討が可能となり、リスク管理機関における縦割り行政の弊害を排し、総合的な政策のもとにリスク管理機関の運営ができるようになると考えます。また、消費者をはじめとした幅広い関係者の総合政策段階からの意見反映が可能になると考えます。

2.  新組織の具体的なあり方について
1.で要請した内容を実現するために、新組織の具体的なあり方について、以下要請します。
(1) 新組織の委員会メンバーの「専門的知見を有する者」に関して、食品科学の専門家に限らず、消費者問題に高い見識を有する者や社会的コミュニケーション論の専門家などを含むようにすること。また委員の選任にあたっては、消費者団体からの意見も尊重すること。
(2) 今回の提案では、「専門的、客観的、科学的評価を実施する観点から」8条委員会とすることになっているが、リスク分析に関する基本指針策定の役割を有し、リスク管理機関である各省庁への勧告がしっかり行えるなどの位置付けをより明確にすること。
(3) 現在、厚生労働省や農林水産省にあるリスク評価機能も新組織に移管し、リスク評価機能を新組織に一元化し、強化すること。
(4) リスク分析に関する基本指針策定の役割をふくめ、リスク評価、リスク管理実施状況のモニタリング、内外危害情報の一元的収集・整理、リスクコミュニケーションの総合的マネジメントなどが十分に行えるよう、新組織の権限の明確化と事務局体制の整備を行うこと。

3. 食品の安全の確保に関する法制度の見直しの基本的方向(案)においても、新組織がリスク分析に関する基本指針の策定を行うことを明示すべきです。


4. リスクコミュニケーションのあり方について
今回の提案において、リスクコミュニケーションが明確に位置付けられていることは評価できます。ただしリスクコミュニケーションが広報や説明などの一方的な情報提供にとどまることなく、行政がその説明責任をはたし、双方向の意見交換が明確に位置付くよう留意してください。特に、政策決定過程において消費者をはじめとした関係者が意思決定に参画できるよう具体化をはかってください。

5. リスク評価の対象について
今回の提案では、リスク評価の対象に関して、「広く食品一般」とし、「健康に悪影響をもたらす可能性のある、食品に含まれる生物学的、化学的又は物理的な物質、あるいは食品の置かれた状態」と規定されています。一方、BSE調査検討委員会報告では、「家畜飼料や動物用医薬品」「水、土壌、ダイオキシン、内分泌かく乱物質、家畜伝染病、などもその対象とするべきである」と述べています。
 食品に含まれる可能性が疑われるものも対象とすべきことから考えると、BSE調査検討委員会報告のような具体的な規定とすべきです。

6. 今後の制度の具体化にあたって、情報開示と消費者をはじめとした関係者の参加による検討を求めます。
関係閣僚会議で案が確認された後は、準備室がつくられ、制度の具体化がすすめられると聞いています。準備室での検討内容について、情報開示を十分に行うべきです。また制度の具体化にあたって、消費者をはじめとした関係者によって構成される委員会などを設置すべきです。今後のリスクコミュニケーションに先立って、コミュニケーションのあり方を具体的に実践する機会として、積極的に位置付けるべきです
以上