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第40回全国消費者大会報告


第40回全国消費者大会報告

  1.  大会テーマ
    消費者の権利の確立と、社会的正義の実現を!!
     〜アジアの消費者とともに〜

  2. 日時・会場
    (1)プレ企画 「消費者行政チェックポイント調査結果にみる47都道府県の消費者行政ランキング発表」
    2001年10月6日(土)13時〜17時 会場:プラザエフ5階会議室

    (2)分科会 2001年11月15日(木)10時30分〜16時30分
    都内各会場に別れ、6つの分科会を開催

    (3)講演会「憲法と私たちのくらし」
    2001年11月15日(木)18時〜20時 会場:プラザエフ5階会議室

    (4)全体会 2001年11月16日(金)10時00分〜12時30分
    会場:弁護士会館2階講堂「クレオ」

  3. 参加団体数・人数
      人数 団体数
    プレ企画 消費者行政チェックポイント調査結果にみる
           47都道府県の消費者行政ランキング発表
    70 50
    環境分科会 どうする!21世紀の環境 partU
           〜地球温暖化(気候変動)と循環型社会
    110 65
    司法改革分科会 ADRって何?
             裁判以外でもこんな解決方法があったんだ!!
    113 64
    食分科会 食をめぐる危機
          〜輸入農産物増大と低価格の行きつく先は?〜
    200 105
    個人情報分科会 どうなる? 私の個人情報
             〜個人情報保護法制のゆくえ〜
    90 56
    税・介護分科会 広がる格差・負担の増大
           〜どうする!!税・介護保険〜
    90 51
    IT革命分科会 ITは私たちをどこへ連れて行くの? 45 25
    講演会 憲法と私たちのくらし 76 36
    全体会 350 82
    合計(のべ) 1144  

  4. 概要
    <プレ企画> 消費者行政チェックポイント調査結果にみる47都道府県の消費者行政ランキング発

    全国消費者大会約1ヶ月前、10月6日に、プレ企画として、47都道府県の消費者行政ランキング発表を行った。これは、昨年の消費者大会の消費者行政分科会での問題提起を受けて、全国消団連の消費者行政研究グループが行った消費者行政チェック活動の結果を47都道府県の消費者行政ランキングとしてとりまとめたものである。都道府県の予算案に影響を与えようという趣旨で、この時期の開催となった。ランキング発表の後、東京・神奈川・埼玉の状況とそれぞれの消費者団体の取り組みについて紹介。また、消費者行政研究会からの問題提起もあり、意見交換を行った。今回の調査を契機として各地で消費者団体が行政への働きかけをつよめることが重要であることが確認された。

    <環境分科会>どうする!21世紀の環境partU〜地球温暖化(気候変動)と循環型社会〜

    午前中は「地球温暖化/気候変動問題への国際的取組みと日本の対応」と題する基調講演(気候ネットワーク代表 浅岡美恵さん)。講演は、国際交渉の積み重ねがCOP7につながっており、温室効果ガス削減という国際的流れは止まらない。目先の経済問題に力を入れるのではなく、環境問題に早く取り組むべきという提言だった。
    午後からは、グループに分かれて報告・討論を行った。Aグループでは、ごみ処理の取り扱い、マイバッグ運動とレジ袋税の関係、自転車道路の整備の必要性など、地域性をふまえた問題が提起された。Bグループでは農業分野の取り組み、「ファイバーリサイクル」「容リ法の見直し」等、ドイツの事例も含めて報告があった。最後に、京都議定書の早期批准と国内対策の抜本的強化を求めるアピールを採択して閉会した。

    <司法改革分科会> ADRって何? 裁判以外でもこんな解決方法があったんだ!!

    冒頭に主婦連合会吉岡初子さんより司法制度改革審議会意見書について報告いただいた。意見書では「裁判員制度」による国民の裁判への参加などが盛り込まれたが、弁護士費用の敗訴者負担の一定の要件のもとでの導入など問題もある。今後は制度の具体化に入るが、透明性の確保と消費者参加など、課題が多いと述べられた。
    つづいて、ADRについてミニパネルディスカッションを開催。家裁での調停の現状や問題意識ならびに裁判の問題について報告いただいた。
    その後、九州大学助教授・レビン小林久子さんの調停教室を開催。裁判と調停の相違点、紛争の定義やADRの発展してきた経緯について、事例を交えてお話いただいた。引き続き、当事者の怒りを吸い上げ、否定的な言い方を肯定的に、ネガティブな言い方をポジティブに変える練習を参加者自身が行った。続いて代表者が調停のロールプレイングを講師のコメントを交えながら演じ、調停の疑似体験をした。調停教室開催後、国際消費者機構アジア太平洋事務所長ソチ・ラチャガンさんからADRに関するコメントをいただいた。最後にアピールを提案、採択して閉会した。

    <食分科会> 食をめぐる危機 〜輸入農産物増大と低価格の行きつく先は?〜

    午前は、藤島廣二氏(東京農業大学教授)、原拓生氏(和歌山県農協青年部協議会委員長)、清水百合子氏(横浜市消費者団体連絡会幹事)、毛利和範氏(広島県農業協同組合青壮年連盟委員長)の4氏から問題提起が行われた。藤島先生からは、暫定セーフガードが発動された要因と、今後の動向は一概に言い切れないと説明が行われた。原さんからは、輸入品の輸送コストが国内輸送コストより安いことにショックを受けていることや、日本の食文化が海外生産品に依存していることに対する危惧、消費者の方と交流したいという思いが出された。清水さんからは、食べることが命をつなげるという認識が薄れているのではないかという危惧、家庭と地域での食教育の必要性、地域単位での生産者との交流の必要性などが提起された。毛利さんからは、食品の安全については、生産から消費までの流れの中でリスクを考えていく必要性、生産者として安全な食品を供給するという責任を持って取り組むことの重要性について提起された。
     午後は15〜16人づつ11グループに分かれ、午前中の問題提起を受けて、グループ交流を実施した。グループ交流終了後に、各グループで交流されたことについてグループ発表を行った。閉会に当たり、各地域に戻った後も、引き続き生産者と消費者が一緒に食の安全について考えていくことの必要性について挨拶があり、終了した。

    <個人情報分科会> どうなる? 私の個人情報 〜個人情報保護法制のゆくえ〜

    まず、個人情報に関する日常的光景を寸劇として見ていただき、問題点を提示した。
    その後、個人情報保護に関する基本的な考え方を、慶応義塾大学産業研究所の石岡克俊さんにお話いただいた。内容は、個人情報と本人同意の関係や個人情報保護法案の問題点の指摘と、今後の方向性についてであった。
    午後は、日生協の宮部好広さんが、個人情報保護法の法制化の現在に至るまでの経過と法案の現在の状況を報告。これに石岡克俊さんからコメントをいただき、さらに会場から意見をいただいた。この内容の法案では、返ってお墨付きを与えることになるので法律の成立には反対である、権利利益の範囲にはプライバシー権なども含むのか?公表されている情報の取り扱いについて目的をどう捕らえるか?などの質問・意見があった。
    休憩をはさみ、信用情報・医療・教育・介護の分野の個人情報保護の現状と問題点などを発表していただいた。最後に分科会のアピールを採択し終了した。

    <税・介護分科会> 広がる格差・負担の増大 〜どうする!!税・介護保険〜

    午前中は、全体会で「格差拡大は是か非か?」(講師:斎藤貴男氏・ジャーナリスト)をテーマに講演会を行った。「現在の小泉構造改革は格差を広げる政策であり、『結果の平等』ばかりか、『機会の平等』を奪うことで、"身分格差"を固定化する。」など豊富な取材現場での実例を紹介しながら分かりやすくお話くださった。
    午後は、「介護保険」(42名)と「税」(47名)の分散会に分かれた。
    「介護保険」:施行から1年半、10月から65歳以上の全額徴収開始の中で、サービスの提供者、在宅介護を支えるケアマネ、ヘルパー、利用者などそれぞれの立場が抱える現状が報告された。利用料1割負担が重くて利用率が低い問題。痴呆の認定が低く出ることを実態調査で改善した我孫子市の取り組み。などの報告もあった。今後も「制度の簡素化(医療・介護の連携)」「事故の補償の確立」「苦情処理の迅速化」などについて声を上げ、誰もが安心できる制度にしていくことの大切さが確認された。
    「税」:前半は、「国保料が払えない!?」(全商連婦人部)「黒字額は伸びたものの・・」(日生協)「高齢者はお金持ちは本当か?」(主婦連)というテーマで、それぞれのくらしについてデータをもとに報告した。後半は、「こんなところに税金を使ってほしい!」として、「消費者行政調査の活動」「国保税減免運動」などの実践報告をいただいた。その後の交流では、「税金の使い方」について多くの意見が出された。

    <IT革命分科会> ITは私たちをどこへ連れて行くの?

    午前中は、長田好弘さんの講演。長田さんからは、@科学技術は平和で豊かな社会作りの手段としてあるべきであり、科学技術者は説明責任を果たす必要がある。Aパソコンや携帯を使わなければ生活が成り立たないわけでは無い。だから、従来のライフスタイルを維持しながら、拒否をせずに生活に取り込んでいけば良い。B氾濫する情報の中で日頃から批判的な目を持つことも大切である。Cネットワーク社会の基本的姿勢として、主権者(生活者)参加のネットワークが必要である。などが話された。
    午後は、現場からの報告として子どもたちの置かれている危ない現状、ネット販売による消費者被害の問題などの、いわゆるネット社会の影の部分である事例が紹介された。この報告を受けて、参加者からは、ネットでの誹謗中傷の書き込みの体験談やIT技術があったからこそ実現した目の不自由な人との交流などの様々な情報交換を行った。申し合わせ事項として@IT革命は国や企業まかせでなく主権者である消費者も参画して進めましょう!A豊かな実体験・現実を大切に、くらしや文化を高めITを人間自身のネット作りに役立たせていきましょう!の2点を確認して閉会した。

    <講演会> 憲法と私たちのくらし

     学習講演は、弁護士の杉井静子さんを講師に迎え、薬害訴訟やBSE、地球温暖化防止、リストラと失業率の増大など、私たちの周囲で起こっている様々な出来事を例示しながら、それぞれが日本国憲法に規定されている私たちの権利(25条、14条、24条、7条、12条)などに大いにかかわる問題であり、憲法が私たちの生活に密接に関係していることをお話しいただいた。「基本的人権」はわたしたちが不断の努力をして守り強めることが重要であり、憲法の視点で暮らしを見つめることの重要性を強調された。
    参加者からは、憲法とその他の法律の関係、基地問題と「受忍」の限度、憲法の基礎単位は個人か世帯かなどの質問が出され、憲法は日本のあらゆる法律の上位にあること、基地の騒音など、あきらめずに受忍できないことを訴えつづけること、憲法は個人を基礎とし社会保障制度は世帯を基礎としていて矛盾はあるが、この部分は時間をかけて変えていくことが必要であるとお答えいただき、講演は終了した。
     また、京都消団連のあざみさんが京都弁による憲法25条朗読、朗読サークル「ポエム」が詩「美しい誓い」と憲法前文の朗読を行い、参加者から好評を博した。

    <全体会>

    主婦連合会和田会長より、開会にあたっての報告が行われ、40回の消費者大会の歴史をふりかえりつつ、国際化に対応し、今回の大会をアジアの消費者団体との連携をすすめる契機としたいこと。また、国内の問題についても消費者の権利の確立と社会的正義の実現という視点から取り組みを強めていくことが呼び掛けられた。
    次に、内閣府国民生活局長の池田実氏と日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長の浅岡美恵氏から挨拶をいただいた。
    そして、CI(国際消費者機構)アジア太平洋事務所長のソチ・ラチャガン氏が「未来に挑戦するアジア太平洋地域の消費者運動」と題して講演。WTO・自由貿易体制下、競争条件の整っていない発展途上国が、先進国に振りまわされていることをわかりやすい事例で説明された。CIアジア太平洋事務所のミッションは「消費者の権利と責任を推し進めることによって社会正義を実現する」こと。消費者団体に求められる活動として、個人レベルでできること(購買の選択)、各国レベル(それぞれの国の消費者のニーズにあった活動を進める)、アジア太平洋地域(地域共通の課題への取り組み:食、環境、法等)、グローバルレベル(国際機関の意思決定過程への消費者の参加)が語られた。
    続いて、食品衛生法改正の取り組み(日本生協連理事 阿南久さん)、司法制度改革への取り組み(主婦連合会事務局長 吉岡初子さん)、都道府県の消費者行政調査について(神奈川県消団連 本山文子さん)の3つの活動報告が行われ、それぞれのテーマについてこの間の取り組みを紹介し、全国の消費者団体の活動強化が訴えられた。
    最後に大会宣言と、特別決議2本(食品の安全を確保できる制度を、司法制度改革実現)を採択し閉会した。