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司法制度改革の推進体制についての意見書を内閣総理大臣あてに提出しました。


2001年6月14日

内閣総理大臣
小泉 純一郎 様

  司法制度改革の推進体制に関する意見

全国消費者団体連絡会
              住所 東京都千代田区六番町15プラザエフ6F
              電話 03-5216‐6024  FAX 03-5216-6036

    司法制度改革審議会では、2年間という限られた期間の中で、裁判官、弁護士、検察官、民事司法、刑事司法など、司法制度の全般にわたって検討を加え、この度、意見書をまとめられました。意見書の内容については、消費者・市民の立場から問題点も多分に含まれていると考えておりますし、今後の検討に委ねられた部分も多々あります。しかし、さまざまな問題点が指摘されながらも長年にわたって放置されてきた司法制度全般について、近時の状況を踏まえながら真正面から検討を行い、改革について一定の方向性を示したことに関して、敬意を表するものです。
 この後、司法制度改革は審議会の手を離れ、意見書に示された改革の方向性について、どのように具体化していくかというステップに入っていきます。その要となる、司法制度改革の推進体制については、意見書にもある通り、内閣に委ねられることになっています。

 先に述べた通り、意見書の中には、大枠の方向性が示されているものの、具体的な制度のあり方については今後の検討に委ねている部分が多々あります。これらの点については、単なる法技術的な問題に留まらず、利用者に対して現実的に大きな影響を与える問題がほとんどであることから、検討の過程について情報を公開し、消費者・市民の意見を聞きながら詰めていくことが必要です。
 また、5月21日付けの毎日新聞に、財務省が審議会と真っ向から異なる見解をまとめ、それに基づいて国会議員への働きかけを開始している旨の報道がありました。このように、司法制度改革を阻もうとする勢力が水面下で活動し、非常な労苦を経てまとめられた審議会の意見書が、不明朗な形で換骨奪胎される惧れもあります。党利党略によって改革の方向性がゆがめられる可能性もないとは言い切れません。そうしたことのないようにするためには、司法制度改革の推進体制を公正で透明性の高いものにすることにより、世論のチェックが働くようにしておく必要があります。

 以上のことから、司法制度改革の推進体制については、公正で透明性が高く、情報が常に公開され、消費者・市民の意見が反映されるような仕組みを要望いたします。具体的には、消費者・市民の代表が複数名参加するような機関の設置、意見交換を図る場の設定、インターネット等を通じたタイムリーな情報公開などの措置をとるべきと考えます。加えて、司法制度改革に関する国民の関心を一層喚起するために、都道府県ごとに報告会や懇談会を開催する、消費者・市民が行う学習会を支援するなど、さまざまな形で広報活動に関する取り組みを一層強めることも必要です。


 なお、先述した財務省の動きについては、消費者・市民として誠に遺憾に思います。そもそも司法制度改革審議会は、国権の最高機関たる国会において制定された法律に基づくものです。利用者、法曹三者、研究者など幅広いメンバーで構成され、2年間という限られた期間に60回を超える審議会での会合や、全国4箇所での公聴会、各地方の実情調査や諸外国の視察など、非常に精力的な活動を行い、各論点に関して幅広い視野から真正面からの議論を行った上で意見書をまとめられました。これに対して、財務省の「異議」は、新聞報道による限り、公務員定数との比較にしても、司法修習制度批判にしても、「お役所」的近視眼的な発想の域を出ていません。そもそも司法制度改革については、3権分立の一角を担う司法に関する制度の全体にわたる内容を含む、50年に一度と言われる大改革であり、通常予算の枠内で発想するのではなく、政策的に予算を別枠で考えるべきです。さらに、こうした「異議」をもとに、政治的な力を利用して改革を押しとどめようという発想自体に、見識の貧しさを感じざるを得ません。

 司法制度改革の推進体制を検討するにあたって、内閣がこうした財務省の動きに影響を受けないことを切に願う次第です。

以 上