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世界消費者権利の日記念「円卓会議」を開催〜遺伝子組換食品をめぐる各国の状況と安全性評価指針について意見交換〜


世界消費者権利の日記念《円卓会議》を開催

〜遺伝子組換え食品をめぐる各国の状況と安全性評価指針について意見交換〜

 

 今年の世界消費者権利の日は、「Our Food, Whose Choice?」テーマで、世界の消費者団体が遺伝子組換え食品をめぐる様々な運動に取り組みました。この世界消費者権利の日の企画の一つとして、3月13日に、Consumers International・日本消費者協会・全国消費者団体連絡会の共催で、円卓会議を開催しました。この円卓会議は、3月14日からのCODEXバイオテクノロジー応用食品特別部会に参加するCI代表団と日本の消費者団体、そして農水省・厚生省が一同に会しての意見交換の場となりました。経済企画庁のご厚意により、同庁の特別会議室で開催し、参加人数は、総勢51名となりました。

厚生省からの報告と質疑

  山田英樹氏(厚生省食品衛生局食品保険課課長補佐)より、食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会の報告が紹介されました。その概要は次の4点です。@安全性審査を法的に義務化する必要がある。A義務化については、法律制定や改正ではなく、規格基準の改正等によって対応する。これによって、規格基準に合わない物は、輸入・販売が禁止され、廃棄・回収命令などの行政処分や刑事罰も可能になる。B安全性審査の考え方については、現行の安全性評価指針などの考え方を基本的に変えない。C輸入時の検証方法として、届け出と抜き取り検査を行う。 この報告に関しての質疑を通じて、実質的同等性が認められたものに対して安全性評価を行っていくこと、抜き取り検査実施のための体制強化を行う必要があること、今まで認可したものに対しても平成12年度内に新制度でのチェックを実施すること、加工食品の副原料などの検査について現在の技術で行えない部分は社会的検証もあわせて行なう様に考えられていること、等が明らかになりました。

CI代表団からの報告

 次に、世界各地域の遺伝子組換え食品の流通や安全性評価の状況が交流されました。

<アメリカ>

流通の実態について、アメリカでは35品目が承認され、耕作面積では、綿の50%、とうもろこしの30〜35%、大豆の45〜50%、じゃがいもの5%未満、なたねはもっと少ない割合がGMO(遺伝子組換え作物)となっています。2000年の耕作に向けては、GMOの作付けを減らそうという農家の動きがあり、種子の売り上げが20%くらい減るのではないかといわれています。
 また、対EU輸出の減少で、とうもろこしで2億ドルの減少が見られ、大豆も同様に輸出が減少しています。また、Consumer Unionでは、加工食品の検査も行っていますが、ベビーフードの大豆の1%がGMOという結果が出ました。これが高い方で、他の食品では1%未満であり、生産された遺伝子組み換え農産物の多くは飼料や輸出用にまわされているのではないかと推察されます。アメリカでも、GM(遺伝子組換え)フリーを表明するファーストフード等が出てきています。
 アメリカの法規制は、任意協議制度であり不十分な制度です。現在、政策の見直しが行われており、義務づけられた協議制度となりそうですが、全面的な安全性評価ではありません。動物の遺伝子組換えの検討もすすめられており、検査体制については、動物には厳しく植物に対しては緩やかとなっています。議会では、規制改善の法律が検討されており、これが成立すれば、GMの表示の義務づけも可能になり、安全性の審査も厳しくできます。

<アフリカ>

 98年に24カ国がGMOの取扱いに反対の意見を唱えました。しかし、安全性のチェックの仕組みはありません。砂糖やココアがGMに取って代わられようとしています。消費者教育が十分ではなく、特に貧しい人がGM食品を利用してしまいます。政府に対して注意を喚起していますが、情報が不足しています。消費者は運動を通じて情報格差を縮めようとしています。我々の懸念が国際的な場で討議されるよう運動をしています。

<ブラジル>

 GMOの導入目的は利益中心です。モンサントがGM大豆を導入しようとしましたが、消費者運動が差止め訴訟を起こし、まだ止めています。全面的な環境評価や残留農薬の問題があり、新たな広い視野からの規制が必要です。

<スロバニア>

  EUに準ずるような法規制が検討されています。表示義務化や監視体制は2003年には軌道に乗る予定です。スロバニアでは生物多様性が認められており、法規制以前にも、この議定書を使って売買の規制が可能です。未成熟な技術であり、政府・業界に対して慎重なアプローチをとるべしと主張しなければなりません。

<東南アジア各国の状況について>

 フィリピンでは、議会で懸念が表明され決議がまとめられています。表示制度を確立することや環境面の影響への懸念があります。
インドネシアでは、限定ほ場の実験承諾に対して、消費者団体が承認中止を求めています。
バングラディッシュでは、農民がより農薬を使用することになるのではと反対しています。
インドでは、BTコットンの導入に対して、懸念が出されています。
韓国では、消費者のキャンペーンが展開され、表示義務づけの制度が準備されています。安全や環境の面からも懸念がもたれています。

 


日本の消費者団体からの報告
日本消費者連盟 運営委員長
富山洋子

  日本消費者連盟は、遺伝子組換え食品はいらないという立場を堅持しつつ、完璧な表示を求めています。この署名はすでに200万が集まっています。表示または禁止の地方自治体決議も2600になっています。農水省が具体化している表示制度は、トウモロコシの90%が表示されない、大豆では混入が5%まで認められるなどEUより緩やかなものになっており、問題が大きいと考えています。厚生省に対しては、どのように実質的同等性が検証されているか懸念しています。毒性やアレルギー性のある既存の蛋白質に構造が似ているかどうかで判断するようになっていますが、構造が似ていなくても毒性やアレルギー性を発揮する可能性はあるでしょう。慢性毒性や遺伝毒性はどう考えているのでしょう。ブシュタイ博士の実験で、免疫機能や肝機能の低下の指摘もあります。その他にも各種の懸念が示されています。予防原則に立った安全性評価を求めます。それができるまでは流通を凍結すべきと考えています。

日本生活協同組合連合会
安全政策推進室
室長 渡辺 秀一

 日本における政策決定への消費者参加は未確立です。企業からの申請書類がコピーできないなど情報公開が不十分です。パブリックコメントは、リスクコミュニケーションをすることが趣旨ですが、現状は意見の紹介にとどまっています。
 この間、消費者運動の成果として、一つは表示の義務化が実現しました。全国での署名活動や地方議会意見書とロビー活動が結びついた結果です。二つ目には、厚生省が安全性審査の義務づけを確立しようとしています。
  今後の課題としては、以下の事が尊重されるべきと考えます。一つは、表示の義務づけと、そのための分別流通の仕組みならびにトレーサビリティーの国際的なルールの確立です。二つ目は「リスクアセスメント」「リスクマネージメント」の段階から消費者が積極的に参画できるようにすることです。三つ目は、安全性や環境影響に関する企業や政府の保有する情報を消費者に十分に開示することです。 特に、人の健康や生態系への影響については長期的な検証が必要ですし、その結果の情報公開が必要です。また環境影響が報告された時には、これを真摯に受け止め環境安全アセスに反映させるべきです。

農水省からの報告

 田部井豊氏(農水省先端産業技術研究課課長補佐)から下記の内容の報告が行われました。
 日本の安全性評価システムは、環境影響・飼料・食品の3つに分かれます。環境に対する安全性評価はまず閉鎖温室で実験した上で隔離ほ場実験を経て、一般ほ場における栽培が認められます。環境影響を見る視点としては、一つは生殖特性です。花粉が今までのものよりはるかに飛ぶようになったり、長寿命を持ったりすると、その種が優先種になる可能性がありますので、確認をしています。二つめは、雑草性です。たとえば越冬しないようなものが何かのはずみで越冬するようになれば優先種になりやすいので、その点を見ます。三つ目は、周辺の生物に与える影響物質を出しているかどうか見ます。従来の作物以上の影響があるかどうかという観点で見ています。


意見交換(○:消費者団体の発言、●:行政の発言)

<安全性評価指針について>

評価項目の問題点
各国にも指針があるがその内容が異なるのではないでしょうか。それを統一していくという流れだと思いますが、自国の安全性評価指針についてどのように考えていますか。
アメリカで使用している方法は全く不十分だと思っています。たとえば遺伝子組換えの作物をテストするのに、その植物そのものをテストするのではなく、バクテリアを用いている。手法としておかしい。アレルギー性のチェックに関しても、既知のアレルゲンのようにみえるかどうかで判断しているだけで、不十分な試験です。
日本の食品衛生調査会では、部会で専門家だけの論議をやって、調査会の常任委員会にあげられてきますが、常任委員会での議論は非常に短時間であるという問題があります。
日本の安全性評価の項目ですが、どうゆう由来の遺伝子をどのように組み込んだのか、発現しているたんぱく質の量とアレルゲン性の有無、動物実験での急性毒性等です。厚生省から提供されている資料の9ページ以降です。
アレルギー性は少量でも問題です。遺伝子の生成は不安定でありさまざまな特質を帯びます。アメリカでの問題は、全体として挿入する遺伝子が安全だと考えられ、それを入れた食べ物も安全と考えられていることです。アメリカでは、どんな遺伝子をどこに挿入したか政府に対して言わなくても良いことになっています。アメリカで提出が強制されていないデータも日本にはあるのではないでしょうか。
アメリカでは、毒性については急性毒性のみになっていて、アレルギー性等について見ることができないデータになっています。環境影響についてももっと検討する必要があります。各国で基準が異なるし、科学的根拠についても検討が必要です。

 

データに基づいた議論を
厚生省の評価の中で、毒性やアレルゲン性について、既存のものでなければ、人工胃液・腸液での分解性を見ます。人工胃液・腸液でアミノ酸まで分解されたものは毒性を示しません。完全に消化されずペプターゼで残った時の影響をケースに応じて考えていきます。BTについては特定の昆虫以外はレセプター(受容体)がないので反応しないというデータがたくさんあります。もちろんほ乳類にもそういうものは無いので、仮に分解が不十分だったとしてもその先に問題はないということです。除草剤耐性遺伝子については、これがつくる酵素は生物が一般的にもっているものです。そういうものが本当に危険なのでしょうか。空想上のリスクというのはいくらでも言えますが、リスクを証明するデータがあるのでしょうか。
きちんとした研究がまだされていない。BTなどが不安定である証拠もないが、逆に安全であるとも言い切れない。BTを与えた幼虫を食べた天敵に悪影響が出たという結果がある。農業に使用するBTではないが、サラエボで何人かの兵士がBTに影響を受けたという報告もあります。
サラエボの話など個々の話について具体的なデータを提示していただいて双方で話し合うことが必要だと思います。ブシュタイさんの話についても、疑問もありますが、環境影響という点で重要だと思っていまして、農水省の研究機関でバックデータをとらせて検討しています。間もなく国内栽培の基準をどうするかという話はできると思います。
サラエボの兵士の話は、ニューサイエンティストで実際に取り上げられたものですので、その資料は提供できます。 誰のための遺伝子組み換え食品か
私たちは実験動物ではないのですから、連続摂取がもたらす慢性毒性や遺伝毒性、アレルギーの危険性の懸念が払拭されるまで遺伝子組換え食品は禁止・凍結すべきと思います。そして、いったい遺伝子組換え食品は誰のためのものなのでしょう。消費者にとっては今のところ得にはなりません。農家にとっても大規模な企業的なところは別にして、一般の農家にとって得にはなりません。そういう社会的側面も考えるべきだと思います。
今までのものと蛋白質が構造的に同じだから慢性毒性などの長期的動物実験をしないことに納得がいきません。また、今までのアレルギー物質と構造的に同じでないものは問題にしないという点についても懸念しています。

<表示について>

農水省から具体化をすすめている表示制度についての説明が行われました。

最後に、司会をつとめた消団連事務局長の日和佐より、今後のコーデックス特別部会の中で、安全性評価の指針の項目について十分論議し、高いレベルで国際的に統一し義務化していくことが必要と感じたこと、遺伝子組み換え食品の消費者にとってのメリットが感じられないこと、科学的評価に加えて消費者にとってメリット・デメリットは何かなど異なる側面での論議の必要性といったことにふれ閉会しました。