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国民生活審議会への申し入れ(消費者契約法(仮称)に対する要望書)

 国民生活審議会で検討が進められている消費者契約法(仮称)に対し、全国消団連は9月3日に以下の要望書を提出しました。同時に「消費者のための消費者契約法を考える会」がまとめた「提言」を合わせて提出しました。


1998年9月3日

国民生活審議会
会長 塩野谷 祐一 殿

全国消費者団体連絡会

「消費者契約法」(仮称)に関する要望

 この間、国民生活審議会を中心に、消費者契約全般に係る包括的な民事ルールである消費者契約法(仮称)の検討が進められてきています。この法律は、消費者契約に係る問題を防止、解決する上で画期的な意味を持つものです。当会では、その内容について消費者の立場から十分に吟味する必要があるとの認識にたち、他の消費者団体とも協力しながら「消費者のための消費者契約法を考える会」(以下、「考える会」という)を本年5月に立ち上げました。「考える会」では、7回にわたって会合を持ち、専門家の協力も得ながら内容や実効性確保のための方策について検討を重ね、この度「消費者契約法(仮称)に対する提言」をまとめました。提言は、この法律に対する消費者の意見を網羅したものになっています。法案の提出に向けた今後の検討の中で、提言の内容を十分反映していただけるよう、当会として要望いたします。

1.基本的な考え方

 消費者をめぐる契約トラブルは膨大な数に及んでいる。その中には、いわゆる悪質業者による悪質商法が問題となっている事例も数多く存在するが、変額生命保険に見られるように公正で信用度が高いとされる事業者による事例も含まれている。消費者契約法はこうした問題の解決にも役立つものであり、今日の状況においては早期導入が必要不可欠である。  従来、消費者問題の解決については、業法や独占禁止法をはじめとする競争関係法規に基づき、行政主導で行われてきた。この手法は、一定の成果をあげてはいるが、対象となる分野が限定されていたり、被害者救済が困難であったり、規制権限の行使に慎重であるため迅速な対応ができないなど、一定の限界を持っている。商品・サービスが非常な速さで高度化・複雑化する今日の状況のもとでは、消費者取引全体に適用される包括的なルールを制定することが喫緊の課題となっている。消費者契約法はまさしくこうした要請に応えるものであり、可能な限り早期に制定することが必要である。

 現代社会においては、事業者と消費者との間に情報量、経済力、交渉力等の格差が生ずることは避けられない。消費者契約法は、これらの格差を是正し、事業者と消費者との実質的な対等性を実現することによって、消費者の権利を保障するものでなければならない。こうした点については、法全体を貫く理念として明確にすべきである。  なお、消費者契約法はあくまでも消費者契約に係る最小限の共通ルールを定めるものに過ぎない。金融関係など個別分野においては、消費者の権利を保障するために、より具体的なルールを整備することが必要である。個別分野における法整備の検討についても、速やかに進められるべきである。

2.具体的内容についての要望

 消費者契約法自体の内容や実効性確保のための方策については、「提言」において要望事項を詳細に述べているが、とりわけ以下の諸点については是非取り入れていただけるよう要望する。

(1)法律の目的に関して

 1で述べた法の理念を明確にする意味で、法の目的に関する規定に「実質的な対等性の確保」「消費者の権利の確保」という文言を加えるべきである。

(2)契約締結過程の適正化のためのルールに関して

 セールストークや広告の内容についても契約内容に含めることとし、不公正な勧誘行為を防止することが必要である。契約に際して書面を作成した場合には、消費者にも交付するよう義務づけるべきである。「威迫・困惑」の概念に該当しない、親切を装う行為や甘言などについても、取消原因に含めるべきである。

(3)契約内容適正化のためのルールの内容に関して

 契約条項が極端に小さい字であったり、薄く印刷されるなどの例が多い。これを防止するため、読みやすさ、見やすさについても規定を設けるべきである。

(4)より適正な契約内容にするために新設するべき条項に関して

 商品・サービス購入のためのクレジット契約などのように、経済的一体性を持つ複数の契約について、同時履行の抗弁権など1つの契約の効果が他方に及ばないとされる例が見られる。これは不当なので、経済的にみて一体性を有する複数の契約間において一方の効果を他方に及ぼさない旨の条項は不当条項としてリストに加えるべきである。

(5)法律の適用範囲に関して

 消費者契約法は消費者取引における最低限のルールであり、適用除外領域は設定すべきでない。また、契約の主要な目的や、物品等の価格の均衡性については不当条項の評価対象から外されているが、現実の被害実態に鑑み、著しく合理性を欠く場合には評価対象とする余地を残すべきである。

(6)実効性確保のために法制定と同時に整備すべき課題に関して

 被害の未然防止のために、事業者の不当な行為についての差止請求制度を導入し、消費者団体による団体訴権も認めるべきである。情報量格差の是正のために消費者の立証責任の軽減を図る必要があり、同一の事業者、業界で同様の事案の累積がある場合の推定規定を設けるとともに、事案検索のためのデータベースを充実して事案収集の便宜を図るべきである。

(7)実効性確保のために法制定後に整備すべき課題に関して

 公的機関による相談業務の重要性が一層増すと考えられることから、相談業務の役割の明確化や機能の充実、相談担当者の身分の保障や養成・研修制度の充実、国民生活センターによる各自治体のバックアップ等の措置を講ずる必要がある。約款等の作成にあたっては事業者側のみで行うのではなく、消費者の参加により内容の適正を図るべきである。

以上