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第48回全国消費者大会が開催されました
 

 第48回全国消費者大会(実行委員会団体45 実行委員長 全大阪消団連事務局長 飯田秀男)が去る11月18−19日の二日間、東京都内各所に分かれて開催されました。

 18日は全体会と特別分科会、19日は消費者政策、食、暮らしのセーフティネット、環境の四つの分科会が開催されました。

 今年の参加規模は、全体会350人、特別分科会平和120人、消費者政策分科会160人、食分科会70人、暮らしのセーフティネット分科会72人、環境分科会70人でした。大会参加者は延べ842名になりました。

第48回全国消費者大会のあらまし
大会テーマ 「消費者の力を結集しよう!み〜んなで安心して暮らしたいっ!!」

11月18日全体会(東京・新宿 全労済ホール スペース・ゼロ)

13:30  開会

 司会:第48回全国消費者大会実行委員 岩手県消費者団体連絡協議会事務局 伊藤 慶子さん

開会挨拶

 第48回全国消費者大会実行委員会委員長 全大阪消費者団体連絡会事務局長 飯田 秀男さん

 実行委員会を代表して歓迎の挨拶を行ないました。国民生活が大きな不安に包まれている中で、新政権への期待や消費者庁と消費者委員会に対して消費者と消費者団体からも積極的アプローチすることが重要であることを陳べた上で、全体会と五つの分科会に積極的に参加して、消費者をめぐる問題について考え合ってほしい旨陳べて挨拶としました。

ご来賓挨拶

 内閣府大臣政務官 衆議院議員 泉 健太さん

 新しい消費者行政の推進役として、これからの消費者行政充実に向けた決意を陳べられました。

 そして、骨格の段階から国民の声を公募して新しい消費者基本計画策定を進めるので、みなさんにもぜひと意見を出して参加してほしいと呼びかけられ、あわせて消費者庁としての基本計画作りの取り組みの重点をご紹介いただきました。

 最後に行政、政治、国民が協力しあって、新しい政治を作っていきたい。消費者委員会、食品安全安全委員会へどしどし国民のみなさんから意見をいただけるような社会にしていきたいと陳べられて、挨拶を終えられました。

13:50〜14:55  基調講演

 私たちはなぜ、安心して暮らせないのか?「格差」「貧困」問題解決のために、私たちのできること

慶應義塾大学経済学部 教授 金子 勝さん

 次の四点を柱に、私たちができることについて、問題提起していただきました。

  1. 現代の「格差」と「貧困」は、なぜこれほどまでに激しくなったのか
  2. 「貧困」や「格差」の原因は「自己責任」なのか
  3. 「格差」と「貧困」を解決するために必要な施策は何か
  4. みんなで安心して暮らせるために、消費者団体にできることは何か

 日本の社会が持続できない社会になっていることが、この間の構造改革の到達点であり、持続可能な社会に引き戻さなければならないことを陳べられました。そして凶悪事件の背景や産業が新しい価値を生み出せなかったこと、セーフティネットのほころび、子供たちの貧困、地域社会の崩壊などの例をあげて説明されました。そして消費者団体の役割として、消費と生産と雇用が結びついていることを認識した上で、消費の選択が新しい価値を生み出すことをひろげ、新しい価値を作るために先頭にたって進めていくことだとされました。

 特に貧困を考えるときはこの社会が持続できない状態になっているということを改めて認識するところが出発点で、いかに持続可能な社会に作り変えるのかを消費者自身のミッションとして使命感をもって望まなければならないこと、ひとりの人間ができることは限られているが、気負わず、自分のできることをやっていくことが大切なことだと結ばれました。

15:00〜16:35  パネルディスカッション

 みんなで安心して暮らせるために、私たちの役割は何か

【パネリスト】

 淑徳大総合福祉学部 准教授 小木曾宏さん
 非営利特定活動法人 自立生活サポートセンターもやい スタッフ 冨樫匡孝さん
 非営利特定活動法人ほっとポット副代表 理事 社会福祉士 宮澤進さん

【コーディネート】

 第48回全国消費者大会実行委員会事務局長 全国消費者団体連絡会事務局長 阿南久さん

 「貧困」や「格差」の問題に、活動や研究を通じて、日常的に立ち向かっている、3名の方をお招きしてのパネルディスカッションです。小木曾さんには子どもの虐待と児童自立支援ホーム運営、冨樫さんにはご自身のホームレス体験も交えながら若者支援の現状、宮澤さんには、犯罪者にならなければ生活できないという高齢者の事例を紹介しながら、高齢者支援の現状を、お話いただきました。そして活動を通じて認識された「貧困」の原因や、問題解決に向けて、消費者と消費者団体の役割として期待されていることを、参加者からの質問に答えながらお話いただき、消費者団体に期待することとして、「声を上げられない人の声に耳を傾けてほしい」(宮澤さん)「一度現場の活動に参加してほしい」(冨樫さん)「企業の社会貢献に対する評価をもっと高めてほしい」(小木曾さん)と、実際の活動を進めてこられた経験に基づく提言をいただいて終了しました。

12:30〜17:00  活動展示

 実行委員会団体より、団体自身の紹介や取り組み報告、翌日の環境分科会で行なうポスターセッションに使用する展示物を使った展示を行ないました。展示団体は以下の通りです。

【団体紹介】

 北九州市消費者団体連絡会/全大阪消費者団体連絡会/社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会/東京消費者団体連絡センター/NPO法人日本消費者連盟/主婦連合会

【環境分科会より】

 東京都地域消費者団体連絡会/大気汚染全国測定実行委員会/気候ネットワーク/主婦連合会環境部


全体会の様子

飯田秀男大会実行委員長挨拶 来賓挨拶 泉健太大臣政務官 基調講演 講師
金子勝慶應義塾大学教授
パネルディスカッション全景 パネルディスカッション
小木曾宏さん
パネルディスカッション
冨樫匡孝さん
パネルディスカッション
宮澤進さん
パネルディスカッション
コーディネート 阿南久さん
活動展示を見学中
活動展示
日本消費生活
アドバイザー・コンサルタント協会
活動展示 主婦連合会 活動展示 主婦連合会環境部
全大阪消費者団体連絡会 大気汚染測定活動全国実行委員会 東京都地域消費者団体連絡会
活動展示
東京消費者団体連絡センター
活動展示
日本消費者連盟

 

11月18日特別分科会「平和」(東京・新宿 全労済ホール スペース・ゼロ)

 司会:第48回全国消費者大会企画委員 全国青年司法書士協議会会長 村上美和子さん

17:00〜17:10  原爆詩朗読

 朗読サークル・ポエム(須崎歌子さん 原田裕子さん 松村陽子さん 泉和代子さん)

 「無題」 (岡本 陽子さん作)/「弟」 (栗栖 英雄さん作)/「原爆の日」 (奥本 清志さん作)/
 「うましめんかな」 (栗原 貞子さん作)

 オープニングで、原爆詩の朗読を行ないました。4名の方がそれぞれ、一編ずつ詩を朗読しました。

17:10〜17:30  ビデオレター上映

 日本原水爆被害者団体協議会事務局次長 岩佐幹三さん

 ご自身の広島での被爆体験、オバマ大統領のプラハでの演説や鳩山首相の国連での演説に対する、考え方を交えながら、「私たち人類は地球を、未来を守らなければ。それには安全でやすらかな地球にしなければならない。私たちの前には展望ができてきた。これを私たちが一つ一つ積み重ねていきましょう。人間には英知がある。英知を十分に発揮して、心の休める、ゆたかな世界を作っていこうじゃないか。未来に期待をかけて、みんなで手をつないで、やっていこう。未来からの願望だとおもう。私たちが、今、希望をもって進める条件ができている。がんばっていきましょう。」と結ばれました。

17:30〜19:30  講演

 安心してくらせる未来をこどもたちへ〜核兵器と戦争のない世界へ  詩人 アーサー・ビナードさん

 俳句の世界で、広島の原爆忌は夏の季語だが、長崎の原爆忌は秋の季語になる、という導入で、講演がスタートしました。

 子供時代に、学校で教えられた原爆投下の正当性について疑問をもったことや、長く日本で暮らしている理由などにふれた上で、核兵器がなぜなくならないのかについての考えを陳べられました。そしてアメリカの画家ベン・シャーンの第五福竜丸を題材にした連作絵画にご自身が言葉をつけて出版した「ここが家だ」についてふれられ、第五福竜丸の乗組員達を気の毒だと捉えるのではなく、大変な危険の中を知恵と勇気で切り抜けて帰ってきた人たちと捉えることでその人たちの人生が浮かび上がること、同様のことは「被爆者」の方たちにも言えること、核兵器廃絶を「期待」するのではなく「希求」したいと陳べられました。

 そして参加者からの質問にお答えいただき、自作の一編の詩を朗読して、講演は終了しました。

アーサー・ビナードさん

 

11月19日分科会

「消費者政策」分科会

消費者庁ってなぁに?〜池上彰さんの 学べる!!消費者庁!〜

 (東京 飯田橋 日中友好会館 地下1F ホール/参加人数 160名)

コーディネーター:池上(いけがみ) 彰(あきら)さん (ジャーナリスト)

パネリスト

 羽藤(はとう) 秀雄(ひでお)さん (消費者庁 審議官)

 吉田(よしだ) 直美(なおみ)さん (盛岡市消費生活センター主査)

 河野(こうの) 恵美子(えみこ)さん (生活協同組合コープとうきょう 理事)

 梅津(うめづ) 匡人(まさと)さん (全国大学生活協同組合連合会 学生委員長)

報告

 吉田(よしだ) 光博(みつひろ)さん (全国大学生活協同組合連合会 学生委員)

【スケジュール】

10:00 開会挨拶
10:05

パネルディスカッション 「消費者庁ってなぁに?」

I  消費者被害の実情

II  スタートした消費者庁について

III  地域での動き

IV 今後への期待と課題

V まとめ

13:00 閉会

<内容>

 【消費者被害の実情】として、全国大学生協連の梅津さんから「消費者被害に遭っても誰にも相談できない心理」の実体験報告と、大学生協で実施している『学生生活110番』の中から、学生にも消費者被害が多いこと、ガスコンロなどの製品事故も生じていることを紹介。社会経験の浅い大学生向けの「もう一歩踏み込んだ消費者教育・啓発活動」が必要との報告がありました。

 盛岡市消費生活センターの吉田さんは、多重債務を除く苦情相談(2千件/年)は全て斡旋し、しっかり対応することを基本姿勢としていること。その結果、盛岡市ではSF商法はゼロになり、キチンと対応すれば必ず効果が生まれることを確信していると報告。センターは「くらしとお金の総合病院」。そこへ行けば病気が治ると消費者に信じてもらう場と位置づけ、それには「人と仕組み」が不足していると訴えました。

 【スタートした消費者庁について】消費者庁の羽藤審議官から、他省庁に比べ特に司令塔の役割は重要であること。「現場が働きやすい」を考える部署。そして設立後の初成果として、エコナとベビーカー事故をきっかけに、情報の一元化・公表のマニュアルを作成。事故情報の取扱を具体化し迅速な公表ができたと意気込みのある所信表明の報告がありました。

 羽藤さんの言葉を受けて、【地域での動き】として、消費者庁に問い合わせた際「消費者庁の対応にマインドが感じられなかった」。コールセンターで振り分けるだけでは、相談する気になった人に失望感のみ残り、泣き寝入りを増やし問題を深刻化する。人と仕組みの充実を、と吉田さん。

 羽藤さんも、職員の脳トレだけでなく筋トレを行い、地方へのサポートを一歩一歩進めたい。気づいた事を知らせて欲しい。受け止めて対応していきたいと真摯な回答がありました。

 【今後への期待と課題】として、大学生協の吉田さんから、「インターネットショッピングサイトにおける広告表示」調査から見えてきたことは、

  1. 努力・我慢はしたくないという消費者心理
  2. この調査結果から東京都が行政指導等を行うなど行政と連携できた
  3. 「!」「?」の多い広告をそのまま信じることをせず、自ら考え動くことが重要

 と報告がありました。

 コープとうきょうの河野さんは、組合員120万人という大きな消費者力を育てるため、

  1. 「まなびば」という名称で80年代後半から行っている啓発活動と消費者力検定の取組み
  2. 消費者トラブル・アンケートは注意喚起のツールとして有効活用。「こういう例がある」と言うと、自分の被害を口に出しやすい効果がある
  3. 消費者行政充実の要望のため自治体の区市長を訪問したことで行政を身近に感じるようになった
 と報告がありました。

 その後、休憩時間に集められた質問事項について、池上さんの巧みなコーディネートで各パネラーから回答が引き出されましたが、その中で共通する課題が浮かび上がってきました。

  • 人は自分からは被害に遭ったことを言えない
  • だから相手に寄り添う心が大事
  • 被害防止には健全な懐疑心を育てる教育が必要
  • 消費者が弱まっている現状だからこそ行政との連携が重要
  • 地方と国の関係は手足と頭脳。手足が機能し頭脳が働く。今の弱い手足の充実が必要
  • 手足の充実は人。マンパワーが命。そこに活性化基金の活用を。

 羽藤さんは、消費者庁の意識改革の教育係は消費者。誉めて育てて欲しい。「しっかり育てたい」という意識を持って消費者団体がチェックをして欲しいとコメントがあり、最後に池上さんから、「お上よ。何とかしてください」ではなく、自ら行動し活動する自立した消費者でありたい。そして、「消費者庁はこうあるべき」と定義していく姿勢こそ、これからの消費者に課せられた役割ではないか、と重い投げかけがありました。

参加者は160人に 出演者の皆さん
 

「食」分科会

食べ方を変えてみませんか〜「食卓の向こう側」に見えるもの〜

(東京 麹町 自治労会館ホール/参加人数 約70名)

コーディネーター

 西日本新聞社 佐藤(さとう) 弘(ひろし)さん

 問題提起 西日本新聞社 佐藤(さとう) 弘(ひろし)さん 渡邊(わたなべ) 美穂(みほ)さん

【スケジュール】

10:30 開会挨拶 主婦連合会会長 山根(やまね) 香織(かおり)さん
10:35 アイスブレーキング
10:50

セミワークショップ
問題提起 西日本新聞 佐藤(さとう) 弘(ひろし)さん 渡邊(わたなべ) 美穂(みほ)さん

13:30 セミワークショップ
14:00 グループワーク
15:15 振り返り、分かち合い
15:30 閉会挨拶 全国農協青年組織協議会理事 大西(おおにし) 雅彦(まさひこ)さん

<内容>

 今年の食分科会では、全国各地から34団体70名を超える消費者、生産者が集まり、「食べ方を変えてみませんか〜「食卓の向こう側」に見えるもの〜」と題して、セミワークショップ形式で開催しました。

 運営団体で主婦連合会の山根香織さんの司会と開会挨拶で幕を開けました。

 初めに、運営団体で神奈川県消団連の矢野裕美さんがアイスブレーキングをおこない参加者同士の気分をほぐしました。

 続いて、西日本新聞で長期企画「食卓の向こう側」を企画している佐藤弘さんから、「いま、なぜ食なのか?」を中心に様々な問題提起をしていただきました。

 まずは、大学生の食生活実態調査のスライドを見て、「この食生活のどこがおかしいか?」についてグループごとで話し合いました。参加者からは、「買ったものばかり」「外食が多い」「食べる量が少ない(米や野菜を食べない)」等あらゆる意見がでました。

 また、「彼ら(彼女らは)は、このような食生活になったのか?」については、自分の体のことが分かってないことや、自ら調理する能力が養われてない点が佐藤さんより指摘されました。

 さらに、佐藤さんと連載企画を担当していた渡邊さんが実際に大学生からの取材から、「料理すること自体が面倒」「空腹を満たせばなんでも良い」など、衝撃的な報告がありました。子どものころから家事を手伝わず、また親も勉強第一で育ててきた結果が、今の大学生の食生活を産み出しているのではないかと考えたそうです。「どうすれば、このような若い人(大学生など)にアプローチできるのか?」について、さらにグループ討議しいろいろなアイディアがでていました。

 最後に佐藤さんからは「体験のない食育は意味がない」事や、どんないい物を作ってもちゃんとした値段でなければならないし、消費者がいい物を欲しくても、いい物がない。生産者は消費者の健康を守り、消費者が生産者の経営を守る。そんな関係が大切だと強調されました。

 それを受け、参加者の皆さんに「私たちにできることは何か?」「自分の半歩先宣言をしてみよう」について考えました。グループ内で発表しあい、さらに全員に何人かの方から私の半歩先宣言が発表されました。

 今、私たちが置かれている現状に気づき、見直し、せめて半歩先をめざして行動する契機になることを期待してのワークショップを終了しました。

 最後に、全国農協青年組織協議会理事の大西雅彦さんからの挨拶で閉会となりました。

消費者大会食分科会 コーディネーター佐藤弘さん
 
「暮らしのセーフティネット」分科会

暮らしのセーフティネット〜社会保障制度をめぐる問題とその財源のあり方〜

(東京 四ツ谷 弘済会館4階/参加人数 72名)

 基調講演 ほころんだ暮らしのセーフティネットをどうする 専修大学教授 唐鎌(からかま) 直義(なおよし)さん

 問題提起1 若者に明日の見える生活を 首都圏青年ユニオン書記長 河添(かわぞえ) 誠(まこと)さん 

 問題提起2 安心できる医療・介護を 日本生協連医療部部長:藤谷(ふじたに) 恵三(けいぞう)さん

【スケジュール】

10:35 基調講演 「ほころんだ暮らしのセーフティネットをどうする」専修大学教授:唐鎌直義さん
13:00 問題提起1 「若者に明日の見える生活を」首都圏青年ユニオン書記長:河添誠さん
13:20 問題提起2 「安心できる医療・介護を」日本生協連医療部部長:藤谷恵三さん
13:40 意見交換会
15:30 閉会

<内容>

基調講演から
   唐鎌直義さんは、「日本の社会保障制度はまず富裕層に合った制度を作ったうえで、より低所得者層を入れるしくみを追加した。日本の年金制度・健康保険制度・雇用保険制度は上・中・下層別に給付と負担を区分した制度である」と指摘されました。「1960年に現在の国民皆保険・年金制度が始まったが、1970年代後半から社会保障制度の後退が始まり、次第に社会保障機能の『セーフティネット機能』への圧縮が起った。「弱者」への「自立支援政策」や「弱者以外」の人への「自己負担」の強化が進められた結果、今、日本では貧困が広がりを見せている。日本の税・社会保険の現状は所得再分配に役立つどころか格差拡大を招いており、それらを是正し、税と社会保険料を直接国民に還元する仕組みが必要であり、それが広い意味で社会保障の拡充につながる。今こそ、社会保障理念の再構築が必要となっている。それは、業績主義の社会保障から最低生活を保障する社会保障へ、世代間不公平の問題から階級・階層間不公平の問題へ、生活の自己責任から公的な最低生活の保障への転換が必要である。日本の2004年度の国内総生産は506兆円余、国民可処分所得は398兆円で世界第2位の地位を占めている。しかし、2000年の社会保障支出の対国内総生産比はEU諸国に比べて10ポイント以上の差があるのが実態である。」社会保障費の財源はあるという基本認識の下に、データを活用しながら解かり易く基調講演を行っていただきました。
   
問題提起と意見交換会から
   飯田秀男さんの司会進行のもとに、河添誠さん、藤谷恵三さん、唐鎌直義さんと参加者で意見交換会を行いました。河添さん、藤谷さんからそれぞれ今日の若者の雇用問題、労働相談の内容や社会保障制度にかかわる問題、お年寄りの医療・介護の問題や社会保障制度にかかわる問題など現場での具体的な事例をリアルに報告いただきました。河添さんからは自己責任論にふれて「あなたは努力していないから」というのは上から目線の弱いものいじめの言葉。それぞれの状況がどのように発生したのか実態を明らかにすることが重要と発言し、これからも「反貧困運動」を取り組んでいくと力強く述べました。一例として、米国タコベル社での消費者運動と労働運動の連携の事例を挙げ、「消費者が商品の品質評価をする際に、商品を製造するに費やした労働の質がつけ加えられないか」との問題提起がありました。
 藤谷さんからは医療生協での『高齢者実態調査』から健康・経済・日常生活のすべてに不安があること、2030年には5人に1人が75歳以上になる超高齢社会が予想されるなかで将来へも不安を感じていることを示されました。「貧困が孤立を産み、孤立が貧困を産む」現状の中で、一人暮らしのお年よりに声がけする『まちなみマップ』活動に取り組んでいるとの紹介がありました。「一人ぼっちにならない、させない、そのための出会い、ふれあい、支えあい」が大切と強調されました。
 唐鎌さんからはフェアトレードの国際的な広がりについて述べ、商品における適正な価格や品質について判断する目をもちたいとまとめがありました。
   
参加者アンケートから
   「コンパクトに現状の問題点と解決への道筋が示されていて、とても参考になりました。」「適切な労働により作られた製品を見分けられるような仕組みを作れないか?とても考えさせられます。」「社会保障を拡充するために私たち一人一人が行動しなければならないと思いました。日本の社会保障の貧困は政治の貧しさにあるのではないかと思います。…」などの書き込みがありました。

以上

会場参加者の様子 意見交換会の講演者、
問題提起者、司会
 

「環境」分科会

地球の未来を考える 〜政策から私たちのとりくみまで〜

 (東京 四ツ谷 主婦会館プラザエフ8階/参加人数 70人)

【スケジュール】

10:30 開会
10:45 ポスターセッション(展示と活動交流)
11:25 講演 「地球温暖化防止のためには」 気候ネットワーク 桃井(ももい) 貴子(たかこ)さん
11:50 講演 「生物多様性って?」 全国地球温暖化防止活動推進センター 小山(こやま) 厚子(あつこ)さん
12:20 質疑応答
13:30

講演 「再生可能エネルギーは『高コスト』は本当か」〜海外の事例から〜
立教大学 経済学部 教授 アンドリュー・デウィットさん

15:00 閉会

<内容>

 環境分科会は、来場者70名があり、ポスターセッション、展示と活動交流、地球温暖化対策の講演を開催しました。実行委員会に参加するグループのポスターセッションでは、9団体の出展ブースを参加者が自由に回り、専門的に取り組む分野に関する情報や意見交換を深めていました。

展示と活動セッション
   午前中は地球温暖化防止と生物多様性の問題について、それぞれ気候ネットワークの桃井貴子さん。全国地球温暖化防止活動推進センターの小山厚子さんからお話いただきました。温暖化問題では、地球の気温上昇を産業革命前から比べて2℃の上昇にとどめるように大幅削減をする必要があり、そのためには削減に向けて社会のしくみを大きく変えていくことが必要です。今回ご紹介があった、MAKE the RULEキャンペーンでは脱温暖化に向けて社会のしくみを変えるために全国各地で展開し、署名を集めています。今こそ市民の力で政策をかえていくために、みんなの力を結集させようとの話がありました。
www.maketherule.jp
   
  また、小山厚子さんからは、環境省の3ヵ年事業すすめている「いきものみっけ」の事業を中心に話がありました。2009年は30種類の生き物を対象に情報を集め、温暖化問題について考える、生物多様性保全に向けた実際の行動の促進につなげています。来年は名古屋で生物多様性・COP10が開催されますが、今地球は一つの生態系の多様性が失われており、人間の開発や乱獲、温暖化などが原因とされています。地球を宇宙船地球号にたとえ、その部品が生態系だとすると、いまは見た目には飛んでいるが、ばらばらとその部品が抜け落ちている状態で、いつ解体してもおかしくない状況になっている。少しでもこの部品である生態系を守っていくことが大切でしょう、とお話しがありました。
www.mikke.go.jp
   
基調講演 「再生可能エネルギーは「高コスト」は本当か」
   立教大学経済学部教授のアンドリュー・デウィットさんからはエネルギー問題を様々な観点からとらえ、わかりやすく日本の政策が世界から大きく遅れをとっている現状についてご紹介いただきました。日本はエネルギーの自給率が非常に低く、石油依存も依然として高いままで、ピークオイル論やエネルギー枯渇の状況からみても非常に厳しい状況にあるが、それがあまり報道されずに一般の人たちが情報を知らない。また、特に再生可能エネルギーの発展については、既得権が大規模集中エネルギーの利権で固定価格買取制度の導入などに大きく反対してきていることなどがあるため、市民の力をぶつけていく必要があるという話がありました。前向きに考えている政治家もいるが、政策の実現を達成させるためには、政治家まかせにするのではなく、社会のバックアップがあってこそ適切な政策が実現されるので、ぜひ消費者団体の皆さんにもがんばってもらいたいということで、身が引き締まる思いがしました。
 
環境分科会参加者の様子 アンドリュー・デウィット教授