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第60回全国消費者大会を開催しました
大会統一テーマ
持続可能で平和な未来のために 今、ともに学び行動しよう!

 全国消費者大会は、その時々の国民生活に寄り添い、共同の輪を広げてきた歴史を持ち、今回で60回を数えます。近年は、国際消費者機構(ConsumersInternational)が呼びかける「世界消費者権利の日」(World Consumer Rights Day)にあわせ開催しています。今回は、前回大会に続きオンラインにて開催し、申込者限定で見逃し配信も実施しました。

開催概要

日  時 : 2022年3月5日(土)9:45〜17:00

開催形式 : オンライン(ZOOM)開催

主  催 : 第60回全国消費者大会実行委員会(一覧はこちら

概要(事務局要約)

開会挨拶
中谷 隆秀 氏
(第60回全国消費者大会実行委員長、長野県消費者団体連絡協議会)

 第1回の全国消費者大会は今から65年前の1957年2月26日に開催されました。当時の時代背景を振り返ると、大企業や財閥への法規制が緩和される一方、消費者のくらしが物価上昇などでどんどん苦しくなってきた時でした。この場を通して、国や政府に消費者団体としてのくらしの要求や意見を反映させることができるようになったと大きく評価されました。

 実行委員会ではその歴史のバトンを受け継ぎ、このコロナ禍での暮らしや社会の課題に目を向ける機会と考え、現在の私たちのくらしを守るとともに、未来世代に続く持続可能性も大切にして、今大会作り上げてきました。

 各セッションの講演や問題提起がこれからのくらしと未来をつくるヒントとなり、明日からの行動につなげられます期待いたします。

来賓挨拶
伊藤 明子 氏(消費者庁長官)

 はじめに今回のテーマについて、平和に言及していることで本当に心に刺さるテーマだと感じること、コロナ禍で急速に物事の考え方が変わることや、消費者が置かれている多様な問題がある中で学び行動しようということだと感じる、とお話しいただきました。その問題一例として、4月からの成年年齢引き下げにおいて、どのように消費者被害を防ぐかを挙げられました。

 持続可能性については、2050年カーボンニュートラル宣言、プラスチック資源循環法や食品ロス削減推進法の施行、最近のサステナブルファッションについての動きを経て、事業者もより具体的に取り組むようになってきているので、ともに取り組む課題ととらえている。これからは●●●●ではなく、○○○○という考え方が重要だと思うので、これらの課題について皆様と消費者庁とともに取り組んでいきたい、と結ばれました。

第1セッション 環境・エネルギー(140名参加)
明るい未来のためにポジティブに行動しよう!〜COP26を受けて脱炭素社会へ〜
講師 平田 仁子 氏((一社)Climate Integrate代表理事、千葉商科大学サイエンスアカデミー特別客員准教授

 はじめに、国連開発計画が作成した動画を紹介します。絶滅という、かなり遠い話を結論としていますが、わかりやすい内容です。
https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/presscenter/pressreleases/2021/dont_choose_extinction.html

気候変動の現状 危機に迫る現状を知る

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書は「20世紀後半以降の温暖化の主な原因は人間活動であることは疑う余地がない」としました。このままでは様々な極端現象が拡大し、人間の対応能力を超えてしまいます。気温上昇を1.5℃に抑える目標が世界の共通認識です。2050年ネットゼロ(二酸化炭素(CO2)の排出をゼロにする)を目指すには2030年までに大幅な削減が必要です。

国際動向 ネットゼロへの潮流

 2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、1.5℃の気温上昇を目指す、クリーンな電力の普及を加速し石炭火力発電・化石燃料への補助金を廃止していく、カーボンニュートラル(CO2の純排出をゼロにする)は世界の目標になりました。これを受け、金融セクターの動きも変わってきています。

日本の現状とこれからの課題

 日本の取り組みの評価は相当低く、まず2030年までの取り組みを強化する必要があります。5大排出源(石炭火力、車、ガス、鉄、化学)をどう変えていくかを考えていかなくてはなりません。

 廃止を目指すべき非効率な火力発電所について、CO2を「地中に埋める」「リサイクル」することで利用を継続できるとしていますが、実現可能性は見えていません。火力発電のアンモニア・水素混焼はCO2削減にほとんど寄与しません。再生可能エネルギーをもっと増やす必要がありますが、その際には、従来のエネルギー産業に従事してきた「人」への支援が必要になります。

2050 カーボンニュートラルへの提案

 個人の実践としては、省エネや、再エネの利用が有効です。ただし我慢をしては長続きしません。また、自治体や地域、学校等へ省エネや再エネの利用を働きかけていくこともできます。

 具体的な行動としては、エネルギー効率を向上させる工夫で節電をする(太陽光パネル・断熱リフォーム・省エネ家電)、再エネ由来の電力に切り替える、建築物をゼロエミッション(リサイクルを徹底することにより,最終的に廃棄物をゼロにしようとする考え方)にする、車は電気自動車にする、廃棄物をゼロにする、などがあります。

 脱炭素の地域づくりの広がりにむけては、問題を自分事ととらえ、学び共有する、自らの行動に目標と計画を立てる、行動に広がりを持たせる(実践・支援・要請・連携・資産運用・投資)、地域性を生かした取り組みを進めるなどが考えられます。参加や意思表明が大きな構造を変えることにつながります。

第2セッション:食料問題(167名参加)
食料危機は他人事ではない
〜過去最低となった食料自給率のもとで消費者が今考えるべきこと〜
講師:鈴木 亘弘 氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)

飢餓はもう始まっている

 2050年には日本は飢餓に陥るでしょう、それよりも早く危機的状況は起こり得ると言ってきましたが、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻によって食料危機は現実になろうとしています。

世界が絶賛した江戸循環農業

 江戸時代の日本は、再生可能な植物資源を最大限に生かし独自の循環型社会を築いていました。

 現在食料自給率が37%まで下がった原因は、戦後の貿易自由化で輸入に頼る構造ができたこと、米国の余剰穀物を消費させるために、日本人の食生活を変える洗脳政策が行われたこと、学校給食=子供がそのターゲットとされたことと考えられます。一方で農林水産省が2006年のレポートでコメを中心に組み立て直せば食料自給率は63%まで上がると試算しています。

グローバル企業に捧ぐ国民の命

 日本は、食料が国民の命を守る安全保障の要であるという国家戦略が欠如しており、規制改革の名のもとで米国の要求に応え続けてきました。種子法廃止、2023年4月1日からnonGM(遺伝子組み換え表示ではない)表示が消える、発がん性で世界的に規制強化されるグリホサート残留基準値が極端に緩和されるなどはその結果だと考えられます。ゲノム編集食品が野放しになるなどの状況から、子供たちを守らねばなりません。

消費者が作る世界の潮流、みどりの食料戦略は起死回生?

 2021年に策定されたみどりの食料システム戦略でEU並みの有機栽培面積100万haに広げる目標が合意されました。今後は、有機農業の定義が(現在より緩和する形で)変わることのないよう、注視する必要があります。

無理しない農業は生産性も高い、カギは種から始まる有機循環

 生産者と消費者が支え合う強い農業のために、地元産品を購入する、学校給食に地元産品や有機農産品を使用するなど、今頑張っている農家を消費者が結束して支える動きと連携を強めていきましょう。

第3セッション:憲法・ジェンダー・平和(119名参加)
憲法は何のためにあるの?誰のためにあるの?
〜憲法から考える平和・人権・平等〜
講師:太田 伊早子 氏(弁護士、明日の自由を守る若手弁護士の会)

公正な社会づくり

 現在の日本社会の一番の課題は格差社会であることです。OECDの調査によると、日本は先進国で唯一賃金が上がっていません。ここ数年は、特に新型コロナウイルスの影響や社会保障の実質的な削減が続いており、多くの人が社会もしくは将来に不安を抱えている状況です。

 半面、ビリオネア(富裕層)の人々はコロナ禍でも資産を増やし、大企業の内部留保も2020年度に過去最大額になっているように、格差は拡大しており、公正な社会を求める必要があります。

 その推進力となるのは憲法です。第13条には「すべての国民は、個人として尊重される」と記載されており、ここに一切の条件はありません。私たちは生まれながらにして、1人1人が尊厳ある大切な人間で、命の安全が守られ、さまざまな自由が保障されます。女性の結婚退職制度の衰退の経緯から、長期的に見れば憲法は無力ではないと言えます。憲法は社会の中にある大きな構造を変えていくための原動力となります。

差別をなくす

 不公正な社会構造が生み出される理由を考える上で、文化的、社会的に作られた性差を指すジェンダー平等が鍵になります。性別による役割分担である「つくられた性差」に着目すると、個人の認識を超えた社会構造により差別が生み出されていることを見破ることができます。

 ジェンダーという用語は、国際的に認識されている言葉です。認知度は2018年55.8%で、年々上昇していますが、国際社会の方がリードしていることを謙虚に受け止め、世界に学ぶ必要があります。

 平等というテーマを考える上では、自分の「特権性」を認識することが必要です。構造的な差別を受ける人がいる裏で、構造のおかげで差別を受けずに済んでいる人がいます。マイノリティ(少数派)が感じていることをマジョリティ(多数派)が気づくことは難しく、何もしないことで差別構造に加担している可能性があります。自分は特権性を持っている可能性があることを認識し、関心を持って構造を変えようとすることが大切です。

 2021年のジェンダーギャップ指数は、日本は156か国中120位で先進国の中で最低レベル。特に経済・政治における順位が低く、「政治分野における男女共同参画推進法」の施行後初めての衆議院選挙では、当選者のうち女性は9.7%で、前回よりも減る結果となりました。

 日本は長時間労働が蔓延しており、30・40代男性の12.4%が過労死ラインの長時間労働をしており、家事・育児は2時間以下です。女性は家事・育児の多くを担っているため、長時間労働が難しく、キャリアを諦める傾向があります。このような働き方の差は、生涯賃金や年金額の大きな差になります。

平和を維持するための枠組み(構造)

 原爆が初めて使用された第二次世界大戦後に憲法は作られました。核兵器を含む軍縮は、関係当事国間での解決は難しいです。第9条では「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定められており、何も持たない日本だからこそ果たせる役割があります。利害関係のない国が橋渡しをすることで軍縮が進められることができるのです。

まとめ

 これまでの話の核となる考えの中に憲法があります。国際社会、特に国連は武力行使の違法性を進めています。日本国憲法は戦争放棄、健康で文化的な生活をする権利などを定めており、世界の流れに沿っています。この憲法を力にしましょう。

閉会あいさつ
庭野文雄さん
(第60回全国消費者大会実行委員会副委員長、神奈川県消費者団体連絡会)

 「持続可能で平和な未来のために 今、ともに学び行動しよう!」を統一テーマに開催した3つのセッションから感じたことの一つは平和の問題です。今大会はロシアによるウクライナの軍事侵攻という大変な事態が発生した中での開催でした。このことに強い抗議をするとともに、憲法の平和主義の考え方について、9条の話ではなく根本にどういう考え方があるのか、を考えていくのが非常に大事だと感じました。

 もう一つは、今回の3テーマが持続可能性に関わる問題であることです。消費者・生活者の生活と行動がすべてを動かしていくのだ、と位置付けられていきます。

 さらに、我々の意識をジェンダーの視点から考えることは新鮮でした。その点を含めて、一人一人が学び行動することが求められていると感じました。ぜひ今後に生かしていきましょう。

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