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第59回全国消費者大会を開催しました
大会統一テーマ
見つめなおそう私たちの世界〜コロナ禍を経て考えたいこと〜

 全国消費者大会は、その時々の国民生活に寄り添い、共同の輪を広げてきた歴史を持ち、今回で59回を数えます。近年は、国際消費者機構(ConsumersInternational)が呼びかける「世界消費者権利の日」(World Consumer Rights Day)にあわせ開催しています。今回はコロナ禍のため、ZOOMによるオンライン開催をいたしました。

開催日時 : 2021年3月13日(土)10:00〜17:00

開催形式 : オンライン(ZOOM)開催

主  催 : 第59回全国消費者大会実行委員会

後  援 : 消費者庁

第59回全国消費者大会実行委員長あいさつ

第59回全国消費者大会の開催にあたって

みなさん

 第59回全国消費者大会は、「見つめなおそう!私たちの社会〜コロナ禍を経て考えたいこと〜」を統一テーマに、オンライン主体で開催します。

 新型コロナウィルスのパンデミックが発生し、1年以上が経過しました。コロナ禍によって、私たちの生活は一変しました。それまで当たり前にできていたことができなくなり、あるいは制限を受ける事態となる中、新たな生活のあり方も模索されるようになってきています。

 予防・治療に係る医療が未確立の中で、感染の予防、感染者の治療・保護の最も厳しい現場に置かれたのは、人が人をケアする医療・介護、保育・教育、日常生活を支える生産・流通、小売り事業に携わる人たちでした。とりわけ、雇用が不安定な非正規労働者、派遣・パート・アルバイト労働者、みなし個人事業者など相対的に低所得であった人たちに対して、厳しいしわ寄せ・矛盾が顕在化しました。

 私たちは、改めて、コロナ禍以前の社会について見つめなおす機会を得ました。今大会のセッションの企画は、その具体的ないくつかのテーマを取り上げ、顕在化した問題を皆さんと一緒に考える機会としたいとの思いが共通しています。ぜひ、各セッションの講演・報告から、私たちが生きる社会の問題を共有し、学んでいきたいと思います。

全文、実行委員団体一覧はこちら

プログラム:

第1セッション コロナ禍と環境
「グリーンリカバリー(緑の復興)」〜経済復興と共に脱炭素社会へ〜

参加人数:168名

講師・報告者:
報告① 畠山寛希さん(環境省地球環境局総務課脱酸素社会移行推進室 補佐)
講演  小西雅子さん(世界自然保護基金(WWF)ジャパン専門ディレクター(環境・エネルギー))
報告② 渡辺愛子さん
    (日本生活協同組合連合会組織推進本部社会・地域活動推進部サスティナビリティ推進グループ)

講演・報告概要:

 報告① 環境省畠山さんより、国の「2050カーボンニュートラルに向けた取り組み」のご報告をいただいた。2020年10月菅総理が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言したことにより、2021年11月1日のCOP26 に向けて世界各国、日本も意欲的な2030年中期目標を表明する。日本の温室効果ガスの排出量は2013年から減少しており、2030年度削減目標2013年比−26%を上回る削減率になっている。代替えフロンなどCO2 以外のガスも減らしていく計画である。温暖化ガスの排出の85%を占めるエネルギー起源のCO2 排出量は、エネルギーを作る側より使う側の排出量が大きくユーザーの責任も大きいと指摘された。私たち消費者もしっかりとエネルギーを選んでいかなければならない。

 現在「中央環境審議会 中長期の気候変動対策検討委員会」で審議をし、NPO、金融機関へのヒヤリングと共に、若い世代の意見も積極的に取り入れて進めている。「国、地方脱炭素実現会議」を開催し、具体的な方策について議論し、2025年まで5年の集中期間に政策を総動員し、先進事例を作り展開をして脱炭素ドミノを起こしていくとのことである。手探り感は否めないが、私たちも政策にしっかりと意見を述べ、足元からの実践が大切であると思われる。

 講演 WWFの小西さんより、「気候危機とグリーンリカバリー」と題し、ポストコロナの世の中に求められる環境重視社会と私たちにできることをお話しいただいた。

 中国やインドではコロナ禍のロックダウンで大気汚染が大きく改善したが、経済の再開により通常の大気汚染に戻ってしまった。このことは「大気汚染と気候変動は私たちの生活と行動の変容で改善できる」ということに多くの人々が気付くきっかけになった、私たちにとって今が変わるチャンスとのこと。のちに「この時に意識が変わったといえるようになりたい」と述べられた。

 このチャンスを生かす世界的な動きが「グリーンリカバリー」である。コロナ禍をきっかけに元の社会にもどるのではなく、より良い持続可能な社会に変わろうとする動きの一つで、「そのキーワードは「パリ協定」と「SDGs」にある。

 パリ協定の気温上昇1.5℃目標に抑えるためには、2050年には実質温室効果ガス排出ゼロの実現が必須である。これが実現したとしても、日本でも感染症を媒介する蚊の繁殖域が東北・北海道地域にまで広がり、蚊による感染の危機に慣れない人の地域に気候危機が健康危機を及ぼしていく。私たちは将来の危機に対応しつつ、未知の環境の変化への適応も迫られる。

 日本のパリ協定での削減目標、2030年度2013年比GHG−26%は実現している数値であり、努力目標として世界的にはマイナス評価である。日本の環境政策は出遅れているが、環境対策支出は高いので強力で有効な政策が期待される。まずはパリ協定への削減目標を45%以上に引き上げることが求められる。そして45%削減のためには①温室効果ガスの排出のほとんどの原因であるエネルギーを脱炭素に変えること(石炭由来のエネルギーはすぐにやめる)②使うエネルギーを減らすこと③実行力のある温暖化政策を応援することの3点を上げ、私たちにできることは大きいと話された。非国家アクターイニシアティブ、政府以外の主体の声は若者たち中心に大きなうねりになっている。企業や都市もイニシアティブを発揮し始めている。SDGs実現のためにも私たちはこの夏にかけて脱炭素に向けて声を大きくしていかなければならない。

 報告② 日本生活協同組合連合会の渡辺さんより「生協におけるプラスティック削減の取り組み」の報告をいただいた。生協は「持続可能な生産と消費」の推進を宣言し2018年の総会で「コープSDGs行動宣言」を採択した。「選ぶ・使う・応援する・広げる」のテーマでアクションを起こしている中から、パルシステム連合会のプラ容器包装の軽量化、再プラの利用、バイオプラスティックの採用、回収とリサイクルの強化、コープこうべのラベルレスボトルやマイバック運動NEXTなどにより組合員とのプラ削減の取り組み、さらに身近な海や川のクリーン活動について報告された。

第2セッション コロナ禍と人権
生活困窮・貧困の現場で起きていること〜「自助」「自己責任」で解決するのか〜

参加人数:146名

講師:藤田孝典さん(特定非営利活動法人ほっとプラス理事)

講演概要:

〇結論
 講演の冒頭、今回のテーマに関して、「自助」と「自己責任」の限界性をコロナ禍は明らかにしたと考えている、今回のコロナ禍をきっかけに「自助」「自己責任」を終わらせ、根本から日本社会を変える必要があり、そのために現場の声を制度・政策に反映させていくことが求められていると提起された。

〇この間の運動と特徴
 2005年から反貧困運動を立ち上げ、昨年4月から「生存のためのコロナ対策ネットワーク」の活動を進めている。
 「生存のためのコロナ対策ネットワーク」は、労働問題や生活困窮、ハラスメント、差別に直面する人々の相談に応じてきた労働組合、NPO、学者、ジャーナリストらによって、この状況を変えるために急遽結成されたもの。現場の声をもとに、コロナ危機の下で人びとの生存を守るための具体的な政策提言やアクションを行い、状況を改善することを目的にしている。
 この間の電話相談の特徴は、相談者の多くが労働問題に起因した生活困窮であり、労働問題と貧困問題が地続きであること、雇用・労働問題のセーフティネットが破られると、貯蓄が少ないため、猶予なく生活困窮に陥るため労働と福祉を結びつけて対応する必要性が明確に浮かび上がっていること、女性相談の多さが顕著(飲食、小売、宿泊、観光は非正規女性労働者が多い)であり、リーマンショック(男性の派遣・非正規製造業)との大きな差異になっていること。
 外国人労働者に対する影響も大きいことから、相談会等を開催して問題の「見える化」をすすめている。「前例がないこと」を切り崩す闘争のチャンスとして、外国人労働者に生存権、市民権を保障することを求めて運動をすすめている。

〇社会構造、雇用構造について
 男女間の賃金格差の実態からすれば女性が困窮するのは当然という社会構造であり、2人世帯以上の貯蓄ゼロ世帯の増加(2017年31.2%)という実態からすれば、「自助」と「自己責任」では対応できないことが明確。
 また、「子どもの貧困」ということが言われるが、正確には「女性の貧困」「女性差別」の問題であると理解すべき。ひとり親の貧困や高齢者の貧困の実態は深刻な状態にあり、自殺者数も精神疾患の患者も増加している。他方で、大企業の内部留保は積みあがり、富裕層優遇政策の下で、格差はいよいよ広がっている。

〇運動の進め方
 SNSを駆使しない運動は広がらない、情報発信による分かりやすい問題提起が必要。
 声を上げることによって生活保護制度についても運用が変化してきている。「自助」「自己責任」の呪縛からの解放、公助・公的支援を求めてもいいという雰囲気の醸成を進めたい。とにかくすべきことを臨機応変にすすめることが大切。

第3セッション:コロナ禍とデジタル社会
デジタル化社会の光と影〜あなたの情報はどう取り扱われているのか〜

参加人数:152名

講師:カライスコス アントニオス氏(京都大学大学院 法学研究科准教授、博士(法学))

講演概要:

 デジタル社会における「個人情報」の取り扱いについてご講演いただきました。
 EUにおけるGDPR(EU一般データ保護規則)をもとに、私たち消費者が注意すべきことなどをいくつかの事例を交えながらご紹介いただきました。主なポイントは以下の通りです。

  • 時間(時代)とともにお金を生み出すビジネスモデルが、時間→情報→データと変化している。合わせて、個人情報は「保護する」という対象から変化しており、監視なのか見守りなのか、概念の境界線があいまいになってきている。
  • 諸外国とくにEUでは個人情報の保護は強化されている。AI診療といったサービスがあるが、データを別のサービスに移せても、AI診療で得られた分析を別のサービスに移すことはできるのか?個人情報の保護と活用をどう維持していくのか考えなければいけない。
  • ユーザーやコンテンツの情報を分析して、ユーザーにとって適切と思われる広告を配信するターゲティング広告が展開されているが、正しい情報が提示されるとは限らない。場合によっては自分の情報を積極的に提示したり、逆に隠したりとリテラシーに基づいた行動が大切になってくる。
  • 個人データを提供して、コンテンツやサービスの提供を受けているが、EUでは救済手段の確保が求められている。しかし、個人情報は通貨ではなく、あくまでも基本的に人権に基づくものであるという前提を忘れてはならない。
  • GDPRでは、第三者によってアップロードされた評価やレビューは適用範囲に含まれないが、それらも個人情報として活用したい場合がある。それらをどう管理するか課題がある。
  • 個人情報が流出した場合、流出された個人に影響があるだけでなく、社会に対して不必要な情報が流出している側面もある。「データ汚染」という社会への悪影響も考える必要がある。
  • デジタル社会における個人情報の管理について、従来モデルが今後も機能するのか考える必要がある。そのため、個人情報は個人レベルでとらえるものではなく、社会全体に影響をあたえると認識すること。また、複合的性質を理解し、どの場面でどの程度出す、出さない、出した場合の活用のされかたなどの教育が必要である。

2021年世界消費者権利の日「みんなで取り組む プラごみ削減」について
(World Consumer Rights Day2021「Tackling Plastic Pollution」)

 世界消費者権利の日は、国際消費者機構(Consumers International:以下CI)によって世界的に展開される記念日で、1983年より毎年3月15日に祝われています。

 2021年のテーマ「みんなで取り組む プラごみ削減(Tackling Plastic Pollution)」について、CIより公表されている「広報ツール資料Resource Pack)」、および「キャンペーン概要資料(Campaign Outline)」から、抜粋してご紹介します。

仮訳:日本生活協同組合連合会国際部
編集:全国消費者団体連絡会

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第59回全国消費者大会開催案内はこちら

コロナ禍ならではの不審な勧誘や悪質商法、またゲームの課金やショッピングに関するトラブルが多発しています。

「自分は気を付けているから大丈夫。」と油断せず、最新の事例を知って、充分注意しましょう。

下記サイトに詳しい被害情報とイベント情報があります。
ぜひ、ご覧ください。

コロナ禍での消費者被害防止 特設サイト 消費者庁
https://www.shohisyahigai-boushi.caa.go.jp/