[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


景品表示法の今〜基礎から検討会報告書までを学ぶ〜 学習会報告

 消費者が商品を購入する際、判断の元となる情報は表示によるものが多く、景品表示法は消費者の権利を確保するために大変重要な法律です。景品表示法では、商品やサービスが実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁止しており、違反をすると課徴金の納付を命じられる場合もあります。また、過大な景品(おまけ)を提供することについても制限しています。

 消費者庁では、昨年より「景品表示法検討会」が開催され、2023年1月13日に報告書が公表されました。またあわせて、「ステルスマーケティングに関する検討会」報告書も昨年12月28日に公表されています。今回は、景品表示法の基礎から検討会報告書の内容までを学習しました。

【日時】3月2日(木)15時00分〜16時30分〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】南 雅晴さん(消費者庁 表示対策課 課長)

【参加】112人

概要(事務局による要約)

景品表示法の基本的な考え方

■景品表示法(以下、景表法)「不当景品類及び不当表示防止法」とは

 この法律の目的は、「商品及び役務の取引に関連する不当な…顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」です。

 企業であれば、当然顧客誘引を行います。これは何も問題ありません。しかし、「不当な」顧客誘引は防止しなければいけません。その不当な顧客誘引により消費者が間違った情報で選択させられ、正しい選択をできる機会を無駄にしてしまうことのないようにするものです。規制には措置命令、課徴金納付命令があります。

 景表法は昭和37年(1962年)に制定された法律で、公正取引委員会の競争法の中で運用していましたが、消費者庁の設立後に移管し、消費者法として目的規定の変更がありましたが、基本的な内容・考え方は変わっていません。

■表示とは(第2条第4項)

 ポイントは、事業者が自分の供給する商品、サービスについて行う表示です。有体物であるパッケージやラベルだけでなく、テレビ、ラジオ、新聞、インターネット広告など、一般消費者が目にし得る表示が対象になります。事業者が自分の供給する、という点に関しては、たとえば、新聞社が広告を掲載していても、広告は商品を供給している事業者の広告となります。また、ある商品をメーカーが小売業者に売り、小売業者が店に商品を並べても、その商品のパッケージに不当表示があった場合は、その不当な表示内容を決定したメーカーが表示規制の対象になります。

■禁止している表示(第5条)

①優良誤認表示:「これはとても良い品質(規格、内容)だ!」と消費者に思わせておいて、実際にはそうではない表示。

 優良誤認表示・有利誤認表示ともに、表示と実際に違いがあれば、直ちに景表法違反になるわけではありません。企業の広告には宣伝のために、ある程度の誇張・誇大の表示はあり、消費者も「企業はよく見せたいのだろう、安く見せたいのだろう」と織り込み済みでもあります。ただ、社会一般に許容されている程度を超えている「著しい」場合は規制することになります。表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され、消費者が表示と実際が違うことが分かった場合に「そこ違うの?がっかり!」と思うかどうかです。

■不実証広告規制(第7条第2項)

 通常は、消費者庁がその表示が不当表示であるという事実を認定して行政処分することになります。不実証広告規制では、消費者庁は、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、期間までに資料に提出がされない場合や合理的であると認められない場合には法律が優良誤認表示とみなすことになります。

②有利誤認表示:「これはとてもお得な価格(取引条件)だ!」と消費者に思わせておいて、実際にはそうではない表示。

 有利誤認表示で多いのは、現在の販売価格と比較対照価格を用いる不当な二重価格表示の問題です。もっとも、二重価格表示そのものが正しい情報であれば問題はありません。問題となる「不当な」二重価格表示とは、表示と実際とが違う場合です。比較対照価格とされた「メーカー希望小売価格」が実際と違ったり、比較対照価格として「通常価格」や「平日価格」が表示されているが一度もその価格で販売されたことがない場合などがあります。(消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」に示しています)

③その他誤認されるおそれのある表示:商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれのある表示として内閣総理大臣が指定した不当表示。

 現在6つの告示があり、直ちに商品内容の優良性や取引条件の有利性に結び付かない表示です。しかし、消費者の商品選択に大切な情報について誤認させてはいけないという規制です。たとえば、おとり広告では、商品・サービスを提供すると言いながら、提供しないというもので、優良性をうたうわけではありませんが、実際には提供されていない点に誤認を与えることになりますので禁止されています。

■措置命令・課徴金納付命令

 措置命令は、調査の結果、違反行為であると認められた場合、①違反行為の差し止め、②再発防止策の実施、③一般消費者への周知徹底、④今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる行政処分です。

 課徴金納付命令は、調査の結果、違反行為(優良誤認表示、有利誤認表示)であると認められた場合、一定の課徴金を国庫に納付することを命ずる行政処分です。

景品表示法検討会

 景表法は平成26年に法改正が行われ、5年後見直し条項と法の総点検のために検討会が開催されました。

早期に対応すべき事項:事業者の自主的な取り組みの促進(確約手続きの導入)、違反行為に対する抑止力の強化、刑事罰の活用、適格消費者団体との連携、都道府県との連携など

 措置命令をするためには、事実を調べるのに1年近くの時間がかかります。確約手続きは、事業者が自主的に改善するとの声を受け止めた仕組みになります。確約認定も行政処分なので事業者には計画をきちんと履行してもらいます。これにより執行力が弱まることはありません。また、強化策として、違反行為をくりかえす事業者に課徴金の割り増し、直罰(刑事罰)の導入、都道府県との連携、適格消費者団体の開示要請などが考えられています。

※2月28日に「景品表示法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。

ステルスマーケティングに関する検討会

 広告だとわかっていれば消費者は警戒します。第三者の表示だと警戒心がなくなり消費者の自主的な選択をゆがめてしまうので規制が必要になります。

指定告示(案)として、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの。」

 簡単に言えば、広告であるにも関わらず広告であることがわからない表示は禁止となります。

 事業者からすると、これまでのプロモーション活動がありますので、運用基準で何が新たな告示の対象となるのか考え方を定めていきます。

 これらについて、この間パブリックコメントや公聴会を行ってきました。今後は、消費者委員会に諮問をして答申をいただく予定もあります。これまでいただいたご意見を踏まえ、運用基準(案)等をより分かりやすくなるよう見直していく予定です。今年度中に告示指定できればと考えつつ鋭意準備を進めています。

以上

≫ 開催案内はこちら