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学習・意見交換会
「輸入食品って安全なの?〜令和5年度版〜」を開催しました

 「輸入食品監視指導計画」は、日本に輸入される食品・添加物・器具・容器包装・おもちゃなどの安全性を確保するために、輸出国での生産から輸入後の国内流通までのそれぞれの段階で、厚生労働省及び検疫所などが取るべき対応について毎年定めるものです。毎日の生活に欠かせない輸入食品の安全性について、「令和5年度輸入食品監視指導計画(案)」の内容に沿って説明を聞き、その後に質疑応答と意見交換を行いました。

【日 時】2月7日(火)14:00〜15:30
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【参加者】43名

【内 容】
@報告「輸入食品の安全性確保について」〜令和5年度輸入食品監視指導計画(案)〜
 厚生労働省 医薬・生活衛生局 食品監視安全課
  輸入食品安全対策室 室長 森田 剛史さん
  輸入食品安全対策室 輸出国査察専門官 白坂 信和さん
A質疑応答・意見交換

概要<事務局による要約>

●輸入食品の現状

 日本の食料自給率は下がり続けている状況で、令和3年度の集計ではカロリーベースで38%でした。輸入の届出件数はこれまで右肩上がりでしたが、令和元年から2年にかけては新型コロナウイルスによる物流の変化などの影響もあって少し落ち込み、3年度には246万件まで数字が戻っています。輸入重量ではそれほど大きな変化はなく、重量ベースで一番多いのは、穀類を含む農産食品・農産加工食品、続いて畜産食品・畜産加工食品となっています。

●輸入食品の監視結果

 令和3年度のモニタリング検査実施状況は、計画数延べ99,995件に対し101,365件の実施、実施率は約101%でした。令和3年度の監視指導の結果は、届出件数2,455,182件に対し、検査合計件数204,240件、違反件数809件、違反割合0.03%でした。令和2年度の届出の落ち込みから令和3年度はやや数字を戻しましたが、違反率の増加はありません。

●監視体制の概要

 ◇輸出国対策・◇輸入時対策・◇国内対策の3段階で行われています。

輸出国対策

 在京大使館に日本の食品衛生規制を周知したり、二国間協議や現地調査、輸出国への技術協力を行うなど、輸出国対策は輸入時検査を効果的に実施するためにも力を入れて行っています。令和3年度に輸出国との安全対策に関する協議を行った例としては、デンマークの牛肉やフィリピンのパパイヤなどがあります。

 直近においては新型コロナの状況の改善により、これまでオンラインによる現地調査だったものが、相手国の現地査察が行えるようになり、オーストリア、スペイン、米国の輸入牛肉等について現地の管理状況等を確認しました。

輸入時対策

 輸入者は輸入する食品等について届出事項に沿った内容を厚生労働大臣に提出する義務があります。厚生労働省の検疫所では、届出書の審査や相談室での届出前の相談対応を行い、輸入時の監視指導体制を強化しています。全国の検疫所での食品担当部署は32箇所、食品衛生監視員は現在422名の体制になっています。

 輸入前相談は全国13の検疫所に相談室を設置して行っています。令和3年度では輸入相談前で2%を超えるものが日本の基準に合わない(違反に該当するもの)として発見されており、輸入前相談による違反の未然防止が効果的と考えられます。なお、輸入時点での違反率は0.03%に抑えられています。

 輸入時には◇指導検査・◇モニタリング検査・◇検査命令というリスクに応じた検査制度があります。モニタリング検査は、日本に輸入される多種多様な食品が本当に安全なのか食品衛生上の状況をチェックするためのもので、年間計画に基づいて無作為にサンプリングし、検査を実施しています。検査命令は一番厳しいもので、健康被害の発生する恐れのあるもの、法違反の可能性が高いと見込まれる食品について検査を命ずるものです。輸入する全ての食品に対して届出ごとに毎回検査をします。費用負担は輸入者が行い、検査結果判明までは輸入不可となります。これらの検査は、統計学的な考え方を取り入れた採取量に応じ実施しています。また、繰り返し検査で違反が発見されるものについては「包括輸入禁止」として法的に輸入を禁止できる規定がありますが、これまでに該当する事案はありません。

国内対策

 各都道府県等において、食品衛生の監視指導計画を作成して、パブリックコメント募集やリスクコミュニケーションを行うとともに、その結果もあわせ公表しています。国内での食中毒発生事案に基づいて監視強化を行った事例もあります。

●リコール情報の報告制度

 食品衛生法の改正の中で2021年度に「食品等のリコール情報届出制度」が創設されました。輸入食品においても、国内での流通があり自主回収の届出がされたものについては制度に則って適切に対処されます。

●海外情報への対応

 海外での食中毒の発生や食品リコールの情報などは速やかにキャッチして的確な対応を行っています。定期的に(実質的には毎日)海外の主要政府のホームページ上でリコール情報やアウトブレイク情報を確認し、国内の専門機関の情報も同時にチェックを行いながら情報の収集や分析を強化しています。必要な場合は回収の指示や監視の強化など適切な対応を速やかに行います。

●令和5年度輸入食品監視指導計画(案)について

 これまで通りの対策を継続しながら、より効果的なモニタリング検査の実施に努め、年度途中においても、検査項目等の見直しや検査の強化を検討します。輸入時検査を中心とした監視体制に加え、輸出国での生産段階の安全性を確保する取組を継続します。モニタリング検査数は前年とほぼ同数の約10万件を計画しています。

●具体事例の紹介 〜輸入時における行政検査、検疫所での現物確認等について〜

 検疫所では全ての届出について、日本の食品衛生法との適合、輸出国での証明書等の内容や規格基準、国内と輸出国での違反事例やリコール等に関する情報、厚生労働省からの通知等、全ての審査をしています。

 現物確認検査のポイントとしては、商品名・ブランド・数量・重量・BL番号等が一致するか、製造基準に適合しているか、原材料・添加物の内容と合致するか、規制がある食品ではないか、衛生証明書の内容と合致するか、などの項目を法令に基づいて審査します。

 検査での問題事例としては、日本では認められていない添加物の使用があった、届出書と異なるブランド・品番・商品名等が確認された、提出書類の写真と異なる形状だった、保管温度に不備があった等々のケースがあり、その都度輸入者への適切な指導を行っています。

●質疑応答・意見交換<抜粋>

Q:監視指導の制度や内容の充実は理解しましたが、新型コロナやウクライナ情勢など深刻な社会情勢の変化の中で、輸入食品の監視を始め、食の安全に対応する政府の予算の傾向はどうなっていますか。

A:それぞれの案件に沿って必要な予算が投入され対策が講じられています。輸入食品に関しても毎年必要な予算が確保され十分な対応がされています。特に輸入時の検査の費用については確実に確保しています。

Q:違反になった食品は廃棄されるのですか。食品以外に転用されることはありますか。

A:例えば、積戻しの場合は相手国に返送又は第三国に移送され、輸入者からはその報告をもらっています。目的外の転用についても全て確認をしています。また、違反になった貨物については、原因究明、改善措置、貨物の措置などについて、輸入者の責務として、必ず報告書の提出を求め、その内容を確認しています。

〔参考〕令和5年3月28日に「令和5年度輸入食品監視指導計画」が公表され厚生労働省ホームページに掲載されました。
 https://www.mhlw.go.jp/content/001076897.pdf
輸入食品監視業務FAQ
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000072466.html

以上

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