[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


全国消団連 国際活動専門委員会主催 学習会

「ISO(国際標準化機構)/ COPOLCO(消費者政策委員会)の動向と
主婦連合会の新規国際規格提案の現状」開催報告

 製品やサービス等の国際規格の開発、策定を行っているISO(国際標準化機構)の組織のもと、COPOLCO(消費者政策委員会)は、消費者の視点から規格化の必要性や有益性、消費者参加の促進の検討などを行っています。学習会ではCOPOLCOの役割や最近の動向、また、日本から新たに提案され規格化が現在進行中の事例について学びました。

【日時】2022年11月8日(火)18時00分〜19時30分
〔ZOOMを活用したオンライン学習会〕

【内容】「ISO/COPOLCOの最近の動向」一橋大学名誉教授 国民生活センター顧問
 COPOLCO国内委員会委員長 松本恒雄さん
「主婦連合会の新規国際規格提案の現状」主婦連合会 会長 河村真紀子さん

【参加】60人

概要(事務局による要約)

◆消費者政策における標準化の役割とISO/COPOLCOの最近の動向

松本恒雄さん

標準化の種類

 標準化には世代があり、第一世代は製品規格で、規格に合っていないと接続できない、使えないというものです。第二世代は製品・サービスそのものではなく、ISO9000シリーズ(品質)、ISO14000シリーズ(環境)などのマネジメントシステム規格、第三世代は最近ですがISO26000のような人権や労働まで含む社会的責任のガイダンス規格になります。

日本の消費者政策の歴史

 日本の消費者政策では、行政規制(ハードロー)で消費者保護を図ってきましたが、90年代に行政中心ではなく消費者に権利を与える民事ルールとしてPL法や消費者契約法ができました。2000年代はソフトローを使って自主的な取り組みを事業者にやってもらうことでよりよい市場を作り、事業者と消費者双方の利益を実現させようという政策になり、この時の手法の一つが標準化になります。奇しくも2000年には京都でISO/COPOLCOの総会が開かれ、標準化にふさわしい幕開けとなりました。

 2010年代は消費者の役割を重視する動きが出てきて、持続可能な消費などが強調されています。これはISO/COPOLCOでもCI(国際消費者機構)でも大変重視している施策となります。

ソフトローの意義と限界

 標準化はソフトローの重要なツールになります。それ自体には直接の強制力はありませんが、それを守ることによって事業者が有利になる(マーケットで活動するには守っておかないと不利益になるかもしれない)という方向に誘導することによって、消費者の利益も守られWin-Winの状況を作り上げようというものです。

 しかし、標準化政策だけで問題が解決するわけではありません。悪質事業者はそんなこと気にしません。そのような意識の低い事業者には、行政規制により一定の制裁(金銭賦課など)を科していくというやり方と組み合わせていく必要があります。

標準化への消費者参加

 標準化の規格作りに消費者が参加することは重要です。なぜなら、標準化はすべてのステークホルダーの参加のもとコンセンサスベースで作られるソフトローであり、とりわけ消費者の意見がきちんと反映されなければいけません。したがって、普段感じている問題を発掘して、その問題が標準化というプロセスを通じて対応可能かどうかを考え、可能なら提案をしてみるということが重要です。

2022年COPOLCO総会

 総会は5月23〜25日、全面オンラインで行われ、日本からは松本、Consumer Lights Japan加藤、主婦連合会河村、経済産業省、日本規格協会が参加しています。

 24日に行われたアジア太平洋地域会合では、気候変動に対する取り組みが大きなテーマとなり総会に報告されました。総会では、ジェンダーアクションプランによるISO TC 338(生理用品に関する規格)について、そしてISOロンドン宣言(気候変動への取り組み)の行動計画を支持することが話され、ISO全体がサスティナビリティを重視していることに対して、COPOLCOとしても貢献するための行動をしようという決議がされました。

◆主婦連の新規国際規格提案 〜これまでの経緯と現状〜

河村真紀子さん

なぜ「消費者事故調査」の標準化?

 消費者庁を作る運動をしていた頃、消費者の安全を守るという目的で「新しい事故調査機関実現ネット」ができ、シンドラーのエレベーター事故、パロマの湯沸かし器事故などの被害者の遺族の方からお話を聞くという活動の中で見えてきたことがありました。

 きちんと事故調査が行われていないのではないか、事故を繰り返さないためには再発防止のための調査をしなければならない、つまり処罰や責任追及と、事故調査の峻別が必要。直接事故の引き金となった要因(多くはヒューマンエラー)だけに着目するのではなく、その背景にも目を向け、要因の連鎖をたどる視点が重要になります。そしてこれはどの分野の事故にも共通しています。共通するものがあるということは、標準化の可能性が大いにあるのではないかと思い、その気づきから国際標準化提案にトライしてみようと思いました。

COPOLCOへの提案のプロセス

〈2012年〜2014年〉コンセプトペーパー、パワポ資料の配布
〈2016年〜2017年〉製品安全WGでのプレゼン
〈2017年〉連携の模索、そして新規作業項目提案(NWIP)作成の決議
〈2018年〉COPOLCO総会でNWIPの内容を説明
〈2019年〉ISOへの提案の承認
〈2020年〉ISOとして標準化策定作業の決定

プロジェクト委員会PC329の活動

 COVID-19パンデミック対応で、半年間、活動を保留している間に、日本国内でWGを作りドラフトを作成。2021年7月から2回のPC329総会をZOOMで開催し、2022年3月からはコミッティドラフト作成チーム(4か国参加)を結成しました。そこで何度もZOOMミーティングを重ね、2022年10月のPC329総会での審議結果を反映させたドラフトを、ISOにDIS(ドラフト・インターナショナル・スタンダート)として登録するところまできています。これが現時点となります。今後、ISO全メンバーによる投票、可決に満たないときは差し戻しとなりますが、可決されると最終国際規格案として登録され、ISO発行となります。

これまでを振り返って

 必要とされるのは、まずは英語力。流ちょうに話せなくてもよいから、言うべき言葉が頭の中にあることが大事、というISO/PC329委員長の持丸さんからの言葉に後押ししていただきました。各国のメンバーをまとめるにはいろいろな方の助けを借りることや、オンラインシステムを使いこなすスキルも必要ですが、でも、最後は思いの強さとあきらめない心、この気持ちが大事だと思います。

以上

≫ 開催案内はこちら