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2022年度PLオンブズ会議報告会

ネット時代の製品安全を考える! 開催報告

 昨年度の PL オンブズ会議報告会では、デジタル・プラットフォーム(以下、DPF)を通じて購入した外国製品の欠陥による火災事故を事例に、ネット社会の新たな PL 問題について、海外の裁判例や立法の取り組みの紹介をしました。今年の報告会では、デジタルプラットフォーマーにおける自主的取り組みや行政の取り組みを紹介し、今後の製造物責任法(以下、PL 法)の在り方や、事故防止の強化に資する制度、被害の救済制度などを考える足掛かりとしました。

【日時】2022年7月1日(金)14時00分〜16時30分〔Zoomを活用したオンライン報告会〕

【参加】115人

【内容】◆基調報告
 (1)インターネット取引における製品安全について
  石曽根智昭さん(経済産業省 産業保安グループ 製品安全課 課長補佐)
 (2)インターネット取引全般をめぐる日本の法制度の状況と訴訟の現状
  板倉陽一郎さん(弁護士)
◆パネルディスカッション
 パネリスト
  石曽根智昭さん(経済産業省 産業保安グループ 製品安全課 課長補佐)
  神山敦さん(独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)
        製品安全センター 燃焼技術センター長)
  桑原華穂さん、杉田萠奈さん(ヤフー株式会社 政策企画統括本部 政策渉外部)
  板倉陽一郎さん(弁護士)
 コーディネーター 中村雅人さん (弁護士 ・PLオンブズ会議メンバー)
◆PLオンブズ会議からの提言

概要(事務局による要約)

◇基調報告 (1)インターネット取引における製品安全について

石曽根智昭さん(経済産業省 産業保安グループ 製品安全課 課長補佐)

 製品安全課では、4つの法律「消費生活用製品安全法(消安法)」「電気用品安全法(電安法)」「ガス事業法(ガス事法)」「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液石法)」を所管し、491品目の安全基準を定めています。

 製品事故の未然防止として、安全基準を満たした製品にPSマークを表示して、安全なものを流通させる規制をしています。また「重大製品事故の報告・公表制度」では、事故が発生した場合に製造・輸入事業者は認知してから10日以内に消費者庁に報告することが義務付けられています。年間約1,000件の重大製品事故をNITEと連携しながら原因究明や公表を行い、事業者の行政指導・命令につなげています。

 重大事故における国内品と海外品との比較では、2020年、2021年は海外品が国内品を上回っています。また、事故の原因については、製品起因によるものが国内品では3割ですが、海外品では5割となっており、海外品の品質には注意が必要です。

 製品安全4法に抵触する違反件数は年間約300件で、大半が電気用品になります。違反情報の入手端緒としては、実際に市場で製品を購入する「試買テスト」などを実施し発覚に至っていますが、「情報提供」によるものも多く、情報源として重要視しています。また、インターネットを通じた製品における違反が増加傾向にあるため、ネットパトロール事業を行っています。最終的には逃げられてしまい、違反者であると断定できない場合もありますが、出品削除にはつながっています。

 近年、インターネット通販で購入した製品による重大製品事故の割合は増加していますが、とくにモバイルバッテリーの事故が多く、2021年に発生した掃除機の非純正品バッテリーによる重大製品事故では、充電をしていない状態であっても自然に発火するリスクがある危険な製品のため、リコールとなりました。ただし、ネットモール3社でしか販売していなかったので購入者に連絡ができ、被害の拡大を防ぐことができました。

 現在、モール運営事業者8社との製品安全の在り方について協力体制を構築しています。違反や事故の多いリチウムイオン蓄電池、カートリッジガスコンロ、携帯用レーザー応用装置については、モール運営事業者によるPSマーク表示の確認など出品前審査を実施しています。こうした事業者との連携やネットパトロール事業などにより事故防止に取り組んでいきたいと思います。

 海外の取り組みとして、オーストラリアでは、モール運営事業者に製品安全誓約(Pledge)をしてもらう制度が始まりつつあります。今年度中に我が国でも実現していきたいと思っています。

 経済産業省としては、製品の安全に関するこのような取り組みを情報発信してまいります。みなさまには、こうした情報を拡散していただき、製品安全への関心を高めていただきたいと考えています。製品安全に関する義務を適切に果たしていない事業者から製品を購入しないなど、安全でない製品を市場から排除できるように連携した取り組みができればと思います。

◇基調報告 (2)インターネット取引全般をめぐる日本の法制度の状況と訴訟の現状

板倉陽一郎さん(弁護士)

 消費者庁の「デジタルプラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」では、象徴的な事例として、Amazonで購入した中国製のモバイルバッテリーが発火して家まで燃えてしまった事案が取り上げられました。人的被害はなく、保険も適用されましたが補填しきれませんでした。中国の販売事業者とは連絡がとれ、交渉を行いましたが、中国での訴訟は難しいとの判断のもとで一定の金額で和解をしました。ただ、まだ全額がカバーされていないことから、日本でAmazonを訴える訴訟を行っています。訴訟の前提として、モール運営事業者はPL法上の製造業者に該当しないため、原告の主張としては、①出店・出品審査義務違反、②保険・補償制度構築義務違反、③消費者が問合せ可能な適切な表示を維持・把握する体制を構築する義務違反をしたことを争点として裁判をしましたが、東京地方裁判所では請求は棄却され、現在控訴しています。

 昨年成立した「取引DPF消費者保護法」の第4条では、危険商品等が出品され、かつ販売業者が特定不能など個別法の執行が困難な場合に出品削除を要請できるとしています。この危険商品等については、製品の安全性の判断に資する事項等に虚偽・誤認表示がある場合となっていますが、この法律はマッチング型(販売事業者が居て取引が介在するもの)が対象で、非マッチング型(Twitter、Facebook など)は対象ではありません。また、モール運営事業者が自身で販売している場合は該当しません。この他、特定商取引法の改正では外国執行当局に対する情報提供制度の創設が追加されました。日本からの申し出に事業者が対応しない場合等には、該当の外国の執行当局に情報提供することもできるようになります。

◇パネルディスカッション

桑原華穂さん
ヤフー株式会社 政策企画統括本部 政策渉

神山敦さん
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センター 燃焼技術センター長

 NITEから実際に起こっている製品事故の再現動画の視聴、DPF事業者としてヤフー株式会社の製品安全の取り組みを報告、また実際に製品で事故が起こった時の救済などについて意見交換が行われました。

コーディネーター
中村雅人さん
弁護士・PLオンブズ会議メンバー

 最後に、コーディネーター中村さんより、危険な製品を市場に出さないように行政も業界もしっかり取り組み、なんとか消費者の安全を守ろうとしていることがよくわかりました。消費者が入り口の情報を持っているので、それを集約して対策をすることと、消費者が安全な製品が選べるような情報がほしいと思います。足りないところは法規制も含めて対策を講じていくことかと思いましたとまとめられました。

◇PLオンブズ会議からの提言

 明治学院大学教授角田真理子さんより「2022年PLオンブズ会議報告会提言 ネット時代の製品安全を考える提言」を発表しました。

 7月4日に「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、経済産業大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出しました。

2022年度 PLオンブズ会議報告会提言

ネット時代の製品安全を考える提言

 私たちは、昨年の報告会において、インターネットでの取引による消費者安全被害の状況を明らかにし、外国の裁判例や立法の取り組みなどを紹介して問題意識を持ちました。ネットで取引される製品についても、消費者の安全が確保される製品であることが基本です。しかしながら、ネット取引が激増する中、消費者の安全を脅かす製品も取引されています。

 今年の報告会は、デジタルプラットフォーマーにおける取組みの現状や行政の取組みを紹介して、残された課題を抽出し、更なる取組みを考える足がかりにしたいと考えました。

 本日の報告で、危険な製品が市場に流通しないようにするため、行政機関による制度的な対応やデジタルプラットフォーマーの自主的な取り組みも行われていることがわかりました。しかしながら、こうした取り組みにも限界があります。

 さまざまなプラットフォームサービスをみると、例えば、平成27年に紐付きの子供服を規制するJIS規格が制定され、経済産業省などによる注意喚起もなされているにもかかわらずネット販売商品に並んでいる事例など、危険な製品が販売されている実態があります。ネット取引では、販売業者や製造業者が海外の詳細不明な業者であることも少なくなく、購入にあたっては消費者自らも注意していくことが必要です。

 また、こうした現状を改善するには、消費者が、ネット取引で購入した製品でたとえ小さなことでも事故の経験や不具合を発見したら、その情報を、デジタルプラットフォーマーや行政機関に提供することが重要です。デジタルプラットフォーマーや行政機関なども、情報を求めています。消費者ホットライン(188)をはじめ、最寄りの消費生活センターや国民生活センターなどの情報収集窓口を利用して事故情報を届けましょう。

 そうして収集された情報について、消費者庁、経済産業省等の関係省庁、さらには諸外国などとの情報共有がなされ、被害の未然防止のための事業者への指導、製品安全誓約(Pledge)などの自主規制の確立により、危険な製品が出品されないようにすることや、消費者が安全な製品を選択できるような情報がしっかり提供されていくことが求められます。

 さらには、現状で空白地帯になっているネット取引での消費者被害の救済が、漏れなくなされる法改正や立法へとつながる仕組みも作って行くことが望まれます。

 本日の報告会では、このように検討すべき課題がいくつも見えてきました。

 私たちPLオンブズ会議は、関係者が集まって、この問題を考えるための組織を、事業者、行政、消費者が一緒になって立ち上げ、早急に検討を開始することを提言します。

2022年7月1日
全国消費者団体連絡会
PLオンブズ会議

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