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全国消団連 総会記念学習会開催報告

消費者庁新未来創造戦略本部in徳島 の取り組み

 2017年7月、地方創生における国の機関を地方に誘致する取り組みにより、試行的に徳島県に「消費者行政新未来創造オフィス」が設置され、検証・見直しの後、2020年7月より消費者庁の新たな恒常的拠点としての「消費者庁新未来創造戦略本部(以下、戦略本部)」が発足しました。戦略本部の全体概要やモデル事業などの取組みについてお話いただきました。

【日時】2022年5月20日(金)14時00分〜15時30分
〔Zoom活用オンライン学習会〕

【講師】消費者庁 新未来創造戦略本部次長 審議官 
日下部 英紀さん

【参加】69人

概要(事務局による要約)

■新未来創造戦略本部の組織と取り組み

 徳島に設置した戦略本部の意義としては、モデルプロジェクトや調査・研究など、東京の本庁では出来ないことにチャレンジできる点が挙げられます。東京の本庁機能を小さくするということではなく、消費者行政全体としてプラスになるよう、様々な取り組みを進めています。

 戦略本部の組織としては「実証グループ」と「国際消費者政策研究グループ」があります。

 実証グループでは、モデルプロジェクトとしてフィールドを活用した先駆的な取り組みの試行や施策効果の検証を実施し、その成果を全国的な施策の展開に役立てています。消費者庁には地方に拠点がなかったので、戦略本部があることで、徳島県をはじめ周辺の自治体などで実証フィールドとしての協力を得やすくなりました。

 国際消費者政策研究グループは、戦略本部に研究拠点として設置された「国際消費者政策研究センター」において、進展するデジタル化や高齢化に伴う新たな政策課題への対応として、理論的・実証的な研究プロジェクトを推進しています。消費者法や、行動経済学、社会心理学、データサイエンス等の専門家も客員研究員として参画し、多面的な研究を進めています。

■主なモデルプロジェクト

☆SNSを活用した消費生活相談の実証実験

 成年年齢引下げによる18~19歳の消費者トラブルの増加が懸念されています。また若者は相談窓口に相談しない、また電話を利用しない傾向ということから、令和2年度徳島県、広島市においてSNS(LINE)相談を試行しました。結果、若年層(10~30代)から多くの相談が寄せられましたが、40代50代からの相談も一定数あり、また写真や契約書等の書類を共有しやすいというメリットもありました。

 令和3年度は実証地域を拡大し、京都府、兵庫県、和歌山県、広島市において試行、今年度はさらに地域を拡大し、SNS相談の周知も含めてもう一年実証実験を行う予定です。なお、徳島県では令和3年度からLINEによる消費者トラブル相談を本格導入しました。

☆特別支援学校(高等部)向け消費者教育教材の普及

 高校生向け消費者教育教材「社会への扉」を活用した授業の実施は、徳島県での調査で全体的に知識の定着が見られたことが分かり、モデル事業の中でも最も成果が見られた事業でした。しかし、特別支援学校の生徒にはやや難しいということから、新たに教材が開発されました。特徴としては、1ページに1つのメッセージとし、情報を詰め込みすぎないようにしたり、教員が生徒に合わせてカスタマイズできるようにしています。徳島県内外の特別支援学校で活用してもらい、活用事例集をまとめて全国への普及を図ります。

☆見守りネットワークの更なる活用

 徳島県は兵庫県に次いで2番目に早く、消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)が全市町村に設置されましたが、きちんと機能しているのかどうかが重要です。徳島市を実証フィールドにして、消費者トラブルに関する注意喚起等を現場に届けるための方法や県と市町村の間で情報を共有することの試みを働きかけ、実効的な見守り体制を構築していきます。また徳島市の実態として、福祉の現場担当者が消費生活センターに相談できていないようなので、担当者同士の顔の見える関係づくりが重要と考えています。

☆その他モデル事業の成果(一部抜粋)

■国際消費者政策研究(一部抜粋)

☆新型コロナウイルス感染拡大の影響による消費行動の変化等に関する研究

 感染拡大により買い占め等の行動が発生したことから、消費行動に及ぼす影響について、とくしま生協の協力による商品発注データから調査・分析を行いました。また、全国で行ったWEB調査では、買いためしやすい人の傾向が分かりました。

☆PIO-NETを活用した消費者問題の分析研究

 PIO-NETの相談事例をビッグデータとして活用できないかという観点から、消費者被害の傾向や各種情報との相関関係について、テキストマイニングによる分析を行いました。

☆地方自治体における消費者行政に関する条例の制定状況とその背景の分析

 戦略本部の若手職員が主体となって行った研究です。全国の自治体の条例の中で消費者行政に関する条例について調査し、それらを5つに分類化して各規定の内容や制定状況などを整理・分析しました。

■最後に

 戦略本部の大きな目的は、東京で出来なかったことをやる、しかも役に立つことをやるということです。研究などはすぐに成果は出ないかもしれませんが、国際シンポジウムや海外調査などは行うことができました。今まで出来ていなかったことがやれるリソースができたという効果は大きいと思っています。皆さまからも徳島の戦略本部でやるべきだということがありましたら、お知恵をいただきたいと思っています。

以上

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