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学習会『知っておきたい食品の表示』開催報告

 食品の表示は、消費者が食品の内容を正しく理解し、たくさんの食品の中から欲しい食品を選ぶ際の基準であり、健康な食生活のための重要な情報源となります。今回は、消費者庁のパンフレット「知っておきたい食品の表示」に沿って、生鮮食品・加工食品それぞれの表示や、この4月から完全施行された加工食品の原料原産地表示など、食品の表示制度全般についての基本的な内容を、消費者庁食品表示企画課の松尾さんを講師にお迎えしてお話を聞きました。

【日時】4月28日(木)14時00分〜15時30分
〔Zoom を活用したオンライン学習会〕

【講師】消費者庁食品表示企画課
課長補佐 松尾 敏行さん

【参加】157人

【プログラム】・講演「知っておきたい食品の表示」
・質疑応答

概要(事務局による要約)

1.生鮮食品の表示

 消費者に販売されている全ての生鮮食品には名称と原産地が表示されます。名称は一般的な名称が表示されますが、原産地は生鮮食品の種類により表示の方法が異なります。

 農産物の場合、国産品は都道府県名が、輸入品は原産国名が表示されます。国産品では市町村名やその他一般に知られている地名で表示されることや、輸入品では州名や省名が表示されることもあります。

 畜産物の場合、国産品は国産である旨が、輸入品は原産国名が表示されます。国産品には国産である旨に代えて主たる飼養地がある都道府県名や市町村名が表示されこともあります。さらに、複数の場所で飼養されている場合は、一番長い期間飼養されていた場所が原産地として表示されます。また、容器包装に入れて販売されているものには消費期限や内容量、加工者の名称や住所などが表示されます。

 水産物の場合、漁獲した水域名又は養殖場がある都道府県名が表示されます。国産品で水域名の表示が困難なものには水揚げ港又はその港がある都道府県名が表示されることがあります。また、輸入品には、原産国名に併せて水域名が表示されることもあります。名称及び原産地に加え、養殖されたものには「養殖」、凍結させたものを解凍したものには「解凍」が表示されます。そのほか容器包装に入れて販売されているものには「刺身用」など生食用である旨の表示や、消費期限や保存方法などが表示されています。

 玄米・精米は、容器包装に入れて販売されているものには、名称と原産地以外に、単一原料米か複数原料米(ブレンド米)の別や、品種、産年、内容量、販売者などが表示されます。

2.「長いところルール」

 畜産物や水産物などで最も長い期間生育した場所を原産地として表示することをいわゆる「長いところルール」と言います。アサリの生育を例にすると、稚貝が着底してから概ね 3年で成貝となり、その後、収穫し、畜養の工程を経て出荷されるのが一般的です。畜養とは出荷調整や砂抜きの目的で短期間一定の場所で保管をすることです。例えば、2箇所の養殖場で養殖した場合、より長く養殖した場所が原産地となります。

 現在、問題となっていますアサリの産地偽装は、「長いところルール」に従わずに、輸入品を国産と表示して販売が行われていたと考えられます。このことを踏まえ、消費者庁では本年3月30日に食品表示基準 Q&A 等の改正を行い、畜養は「長いところルール」の育成期間に含まないこと、輸入アサリの原産地は原則として輸出国となること、輸入アサリを国内において1年半以上育成(養殖)し、育成に関する根拠書類を保存している場合には、国内の育成した産地を原産地として表示できることなどを整理しました。

3.加工食品の表示

 消費者に販売されている加工食品には、名称、原材料名、添加物、内容量、賞味期限、保存方法、製造者が表示されます。名称は生鮮食品と同様、一般的な名称が表示されます。原材料名は原材料に占める重量の割合の高い順に記載し、添加物についても添加物に占める重量の割合の高い順に記載します。基本的には原材料名と添加物それぞれの項目欄を設けて表示しますが、原材料名の欄に原材料と添加物をスラッシュで明確に区分して表示する方法が用いられている場合もあります。

※なお添加物については基礎知識や不使用表示を含めた「食品添加物表示」について別途 6月に学習会を行う予定のため今回の学習会では詳細の説明を割愛していただきました。

●原料原産地表示

 平成29年に食品表示基準が改正され、すべての加工食品の原料原産地表示が義務付けられました。(経過措置期間は令和4年3月31日)。原材料に占める重量の割合が最も高い原材料について原料原産地を表示することになっており、原材料が生鮮食品の場合はその産地が国名で表示され、原材料が加工食品である場合はその製造地の国名が表示されます。複数の産地の原材料を使用している場合は使用割合が高い順に産地が表示されます(国別重量順表示)。

 なお、国別重量順表示が難しい場合には例外として「又は表示」(=記載されている国以外の国の原材料は使用されていない)、「大括り表示」(=3か国以上の外国の産地の原材料が使用されている)として表示されていることがあります。

 消費者庁では、令和元年から毎年加工食品の原料原産地の表示実態調査を行っており、その結果(「新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果」)を消費者庁ウェブページに掲載しています。

●アレルゲンを含む食品の原材料表示

 食物アレルギーによる健康被害を防止するため、平成14年4月から加工食品の容器包装にアレルゲンを含む食品の原材料の表示が義務付けられました。食物アレルギーの発症数や重篤度等を踏まえ、表示しなければならない品目(7品目=えび・かに・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ))と、表示を推奨する品目(21品目=アーモンド・あわび・いか等)を定めています。これらの品目については食物アレルギーの実情を踏まえ逐次見直しを行っています。

●期限表示

 消費期限や賞味期限は、未開封の状態で一括表示の保存の方法に従い適切に保存した場合の期限が記載されています。劣化が遅く日持ちする食品の「おいしく食べることができる期限」が「賞味期限」、劣化が早く傷みやすい食品の「過ぎたら食べない方がよい期限」が「消費期限」です。

●栄養成分表示

 平成27年の食品表示基準の制定時に原則として全ての加工食品に栄養成分表示が義務付けられました。表示が義務づけられている栄養成分は、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量、また、表示が推奨されている栄養成分として飽和脂肪酸、食物繊維があります。なお、任意でカルシウム、ミネラル、ビタミンが表示されていることがあります。

4.しいたけの原産地表示の見直し

 近年、海外からのしいたけ菌床の輸入量が増加していますが、これまではしいたけが採取された都道府県名が原産地となっていたため、国内で輸入菌床から採取されたしいたけは国産品の扱いとなり、消費者は国産菌床由来のしいたけと輸入菌床由来のしいたけを区別することができない状況でした。そのため、令和4年3月に食品表示基準 Q&A が改正され、しいたけの原産地表示は「原木又は菌床培地に種菌を植え付けた場所」を原産地とすることになりました。なお、表示の切替えのため半年程度(令和4年9月末)が猶予期間となっています。

質疑応答より(抜粋)

Q:アサリの畜養期間は「長いところ」に含まないという理解でいいのですか。

A:以前は曖昧だった「蓄養」について、食品表示基準 Q&A において定義(出荷調整用その他の目的のために、水産動植物を短時間一定の場所に保存すること)しました。その上で、貝類の畜養は育成を目的として行うものでないことから「長いところルール」の育成期間に含まれないものと整理しました。

Q:表示が詳しく書かれるようになり、逆に消費者は表示を理解しにくくなっていると感じます。

A:多くの方から同様のご意見をいただいています。現在、消費者庁では、どのような表示にすればより分かり易く活用される表示になるのかについて検討しています。また、食品表示制度の啓発活動としての説明会や学習会への講師派遣など、消費者団体と連携しながら行っています。今後も問題意識を持って取組んでいきます。

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