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電気通信サービスの課題と消費者保護 学習会報告

 携帯電話の普及率は、単身世帯で89.6%、二人以上世帯では95.8%となっています。いまや携帯電話や家庭でのインターネット通信は生活必需品となり、家計での通信費の支出も大きくなる中、利用者にとってわかりやすく納得できる料金やサービスを実現する必要があります。また、事業者間での公平な競争の促進も必要です。2015年及び2019年に電気通信事業法が改正され、携帯電話の事業者から新しい料金プランが発表されるなど、モバイル市場を巡る環境は大きく変化しています。

 8月にパブリックコメント募集を行っていた「競争ルールの検証に関する報告書 2021」(案)と「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書 2021(案)」の内容について総務省より説明をいただきました。

【日時】8月11日(水)14 時00分〜15時30分〔Zoom を活用したオンライン学習会〕

【参加】100人

【講師】片桐 義博さん(総務省総合通信基盤局電気通信事業部 消費者行政第一課長)
望月 俊晴さん(同省 料金サービス課 課長補佐)
相良 智弘さん(同省 料金サービス課 課長補佐)

概要(事務局による要約)

■「競争ルールの検証に関する報告書 2021」(案)について

 2019年に電気通信事業法が改正され、①通信料金と端末代金を完全に分離し、端末代金値引きの上限2万円など、過度な値引きが禁止されました。②行き過ぎた囲い込みの是正、4年縛り契約や違約金9,500円などが禁止されました。総務省では、この電気通信事業法の改正がモバイル市場に与えた影響の評価・検証に取り組んでおり、その結果を報告書案として取りまとめています。

 まず、通信市場の動向では、各社が低廉な新料金プランの提供を開始し、事業者乗り換えや料金プランの変更などの動きがあり、料金競争が活発化してきています。この結果、東京と海外の都市の料金を比較すると、東京の料金が大きく下がっていることがわかります。また、携帯電話の新規契約者数が延びています。利用者の意識調査を見ると、最近乗り換えた利用者の方が安いと納得されている率は高いです。乗り換えをしない利用者の理由は、手続きが面倒、キャリアメールが使えなくなるなどがあり、今後これらの障壁をどう減らしていくか考えていくことになります。

 報告書案での提言ポイントとして、MNO(自社で回線網を有する大手キャリアのこと)3社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)の「端末購入サポートプログラム」(一定期間条件後の端末買換え等により割賦残債の支払免除)は、回線契約を条件としないことにより、利益提供2万円上限規制の外側で提供されていますが、非回線契約者も利用できることについての認知度は低い状況です。また、販売代理店への覆面調査では非回線契約者への端末販売拒否が確認されており、その要因としては、非回線契約者に端末を販売しても赤字又は利益が出ない構造であることが考えられます。事業者には正確な説明・周知や代理店への指導等の徹底が求められており、総務省は覆面調査等で確認することが適当とされています。

 改正法施行前に締結された「既往契約」は、改正法における継続割引などの上限との関係で、改正法に適合する条件の契約への移行が利用者の不利益になる場合もあるため、同一の条件で更新できる経過措置が設けられています。しかし、MNO3社の既往契約は5割程度残っており(本年3月末時点)、新規事業者やMVNO(格安スマホ・格安SIMなど、大手キャリアから回線を借りてサービスを行う通信事業者のこと)との関係で対等な競争条件とは言えず、総務省において早期解消に向けたスケジュールを定め、事業者に積極的な取り組みを求めることが適当とされています。

 「スイッチングコスト」(乗り換えの負担)の低減については、MNP(電話番号はそのままで他の事業者に乗り換えできる、携帯電話番号ポータビリティのこと)の手数料無料化、同一事業者内のブランド間乗換え時の手数料の見直しに加え、オンラインでの乗換えを可能とするeSIM(組み込み型のSIM)の導入促進、SIMロック原則禁止(本年10月以降発売の端末から適用)、キャリアメールの持ち運び実現の検討などが進んでいます。

■「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書 2021(案)」について

 検討会では、前回の報告書のフォローアップに加え、新たなテーマも加えて検討を行いました。報告書案の主なポイントは次のとおりです。

 まず、電話勧誘に起因するトラブルは、2020年度のFTTHサービス(家庭での光回線など、光ファイバーの通信)に係る苦情相談の約半数が電話勧誘に起因するなど、引き続き高止まりしています。これに対し報告書案では、電気通信サービスの電話勧誘自体に内在する問題に加え、業界団体に属さず順法意識も高いと思えない「アウトサイダー」によるものが少なくないことを踏まえると、業界団体主導の自主的取組だけでは十分でなく、抜本的な改善が必要としています。具体的には、(ア)不招請勧誘の禁止、(イ)電話勧誘拒否登録簿制度の導入、(ウ)要式契約化、(エ)説明書面を交付の上で契約前の提供条件の説明を行うことの義務化が考えられますが、まずは(エ)を義務化し、効果が得られない場合は(ウ)(イ)(ア)とより強い措置を講じることが適当としています。ただし、インバウンド(利用者から電話をしてきたもの、ただし架電するよう仕向けたものは除く)で利用者が電話の説明で良いとした場合等は適用除外にしても良いのではないかとしています。

 次に、コロナの中で上位を占めた苦情の一つが解約条件や方法に関するトラブル(電話がつながりにくい、解約の手続き)でした。検討会では、電気通信事業者に対し、特段の合理的な事情がある場合を除き、利用者が遅滞なく解約できるような手段を提供しなければならないことを義務化することが適当としています。また、インターネットで契約可能ならば、同様にインターネット上で解約もできるようにすることが望ましいと考えています。

 検討会では、期間拘束契約の在り方も取り上げました。利用者が高額な違約金によって解約ができないというトラブルがあったこともあり、検討会では、利用者による解約の選択が不当に制限されないよう、特定商取引法の考え方も参考に、違約金の上限を1か月分の利用料相当額とすることが適当としています。また、EUの例も参考に、拘束期間についても、消費者保護の観点からは24か月以内にすることが望ましいとしています。

 このほか、苦情相談の処理の在り方について、ADR(裁判外紛争解決手続)機関の設置の必要性が指摘されているところです。この件については、個別の事業者を超えて業界として対応することで効果的に解決できるような課題に対処するための最適な体制について、検討会の下にタスクフォースを設置し、来年の夏を目途に一定の結論が出せるよう検討することとしています。

 最後に、携帯電話の販売代理店の在り方について考え方を示しています。販売代理店は、利用者にとって身近な窓口として必要不可欠な存在ですが、アンケート調査では、4割強のショップ定員が利用者のニーズ等を丁寧に確認せず高額な上位の料金プランを勧誘したことがあるとの結果が得られました。その背景として、携帯事業者と販売代理店との間の委託契約を挙げる声があったことから、その内容が適正かつ合理的でなく法令違反を助長しえるような形で設定されている場合は業務改善命令の対象になるとガイドラインに明確化すべきであるとしています。

 販売代理店には、一方で、政府の基本方針である「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」の実現の観点から、「地域のICT拠点」としての役割が期待されると考えています。販売代理店がこうした役割を十分に果たしていくためには、意欲のある販売代理店による独自商材の取扱も含めた創意工夫が、可能な限り尊重される必要があります。このため、MNO各社は、ブランドイメージを傷つけないといった合理的な制約を前提に独自商材の取扱いを許容することが望ましいのではないかと考えています。

以上

■全国消団連では、「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2021(案)」に対する意見を8月17日に提出しました。
http://www.shodanren.gr.jp/database/458.htm

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