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改正特商法・預託法 振り返りシンポジウム 開催報告

≪主催:全国消費者行政ウォッチねっと・全国消団連 共催:日本弁護士連合会≫

 特商法(特定商取引法)と預託法を改正する「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が、6月9日の参議院本会議において可決・成立しました。

 本改正では、販売預託商法の原則禁止や詐欺的な定期購入の規制など画期的なものとなりました が、突如盛り込まれた契約書面の電子化の問題では、全国の多くの団体から反対する意見書が出され、国会でも大きな論点となりました。シンポジウムでは、運動の振り返りと共に今後の課題について意見交換しました。

【日時】2021年7月31日(土)13時00分〜15時00分
〔Zoom ウェビナー活用のシンポジウム〕

【参加】218 人

【内容】第1部 改正特商法・預託法の概要と今後の課題
1.「改正特商法・預託法の概要」奥山剛さん(消費者庁 取引対策課長)
2.「改正特商法・預託法の今後の課題 (政省令の策定ほか)」池本誠司さん(弁護士)
第2部 運動の振り返りと今後の取組み
1.パネルディスカッション
 テーマ①改正特商法・預託法改正運動の経過と振り返り
②消費者委員会の役割と課題
③特商法5年後見直しでの獲得目標
 パネリスト 山本隆司さん(内閣府消費者委員会 委員長)
石戸谷豊さん(弁護士)
増田悦子さん(全国消費生活相談員協会 理事長)
国府泰道さん(弁護士)
浦郷由季 (全国消費者団体連絡会 事務局長)
 コーディネーター 拝師徳彦さん(全国消費者行政ウォッチねっと事務局長・弁護士)
2.各団体から今後に向けての決意表明

概要(事務局による要約)

第1部 改正特商法・預託法の概要と今後の課題
1.「改正特商法・預託法の概要」

消費者庁 取引対策課長 奥山剛さん

 特商法の主な改正内容は、①通販の「詐欺的な定期購入商法」対策、②送り付け商法対策(7 月に施行済み)、③消費者利益の擁護増進のための規制の整備です。預託法の改正は、販売預託の原則禁止がポイントです。

 詐欺的な定期購入商法に係る法改正では、申込みに係る最終確認画面等で一定の事項を表示する義務や誤認させるような表示を禁止とし、違反した場合は直罰の対象になります。ほかに広告する際の義務表示、契約の解除等を妨げる行為の禁止、違反表示により消費者が誤認して申し込みをした場合の取消権の創設、適格消費者団体の差止請求の対象に追加することなどがあります。インターネット通販における「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドラインを見直し、6月30日から運用しています。画面例として注目すべきポイントも明記しています。

 送り付け商法対策に係る法改正は、7月に既に施行され、これまで売買契約がないのに送り付けられた商品は14日間保管しなくてはならなかったところを保管は不要、直ちに処分可となっています。

 契約書面等の電子化は、消費者の承諾を得た場合に限り電磁的方法により提供することができるようになります。どのように承諾を取り、どのように提供すべきかについては、政省令で規定することになっており、現在、検討会を開催しています。

 預託法改正については、販売を伴う預託等取引は問題点が多く、大規模な消費者被害が発生していたので、原則禁止としました。例外的に、内閣総理大臣(消費者庁)の厳格な確認を受けた場合に限り、勧誘等及び契約の締結等が可能ですが、確認を受けないで締結等した契約は無効、確認を受けないで勧誘や契約の締結等をした場合は、厳正な罰則を設けています。

2.「改正特商法・預託法の今後の課題(政省令の策定ほか)」

弁護士 池本誠司さん

◇特商法・預託法の主な改正事項の評価と課題

①詐欺的な定期購入商法・・(課題)申込み画面や広告画面の表示や虚偽誇大広告禁止の具体的な目安を通達・ガイドラインで定め、周知すること。

②送り付け商法・・(課題)改正法の周知。法を無視する悪質業者を注視し、必要に応じ行政規制の検討をすること。

③販売預託商法・・(課題)脱法取引を注視し、集団投資スキームとのすき間が生じないよう対応すること。

◇書面の電子化に関する政省令に関して

 訪問販売等において販売業者は、契約の申込みを受けたら直ちに書面にて契約書等を交付しなければいけませんでしたが、政令で定めるところにより、申込者の承諾を得て電磁的方法により交付することができるようになってしまいます。電磁的方法での交付では、申込者のファイルへの記録がされた時に到達したものとみなすとされています。

 また、特商法の中には、契約締結前(勧誘段階)に契約の「概要書面」の交付義務と、契約締結時に「契約書面」の二段構えの書面交付義務を規定している取引がありますが、この「概要書面」に関しても電子化の対象になります。

 書面の電子化の主な問題点は、①書面交付義務の消費者保護機能(クーリング・オフの通知など)が確保されない、②消費者の承諾は歯止めにならない、③概要書面交付による契約内容告知機能が失われるおそれがある、④法案提出前に関係者の議論が全くないまま提案されたこと、があります。

 国会での附帯決議には、書面交付の電子化に関する消費者の承諾の要件を厳格化する必要があることや、政省令等を検討するに当たっての体制や手続きについて記載されました。また、国会論議で承諾要件について「口頭や電話による承諾は認めない」「オンラインで完結する分野は電子メールで、それ以外のものは当面紙で承諾を得た上で、その承諾を取った旨の控えを消費者に手交することも考えられる」「一定年齢以上の方の場合には家族などの第三者のメールアドレスにも送付することを行わせること」などの政府答弁がありました。

 今後、承諾要件や電子交付について具体化に向けて検討がされますが、例えば承諾を取るときに、契約内容を示した重要なものであることやクーリングオフの説明をすること、消費者の同意を得て録音をすること、承諾の控えにも契約内容の重要部分(商品名や代金、クーリングオフなど)がわかるように表示すること、概要書面の場合はそれを示して説明するべきであること、などがあります。また、電子データを渡す時は、PDFファイルだけ送るのではなく本文にも内容を記載すること、電子データを削除してしまった場合に再交付ができること、などについて検討会で議論することになります。

第2部 運動の振り返りと今後の取組み
1.パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは、改正特商法・預託法の運動の経過を振り返りとして「全国消団連の特商法・預託法改正運動の経過と評価」「消費者相談現場から見ての評価」「消費者委員会が2月に出した建議について」「今後の消費者委員会の取り組み」などの意見交換がありました。また、今後の課題として、特商法の平成28年改正で5年後見直しとなっている次回改正での獲得目標について、「不招請勧誘の禁止に向けた取り組み」や特商法45年経過の全般的な見直しも含めて、消費者委員会とも、各団体のみなさんとも連携しながら運動をしていくことが確認できました。

2.各団体から今後に向けての決意表明がされました

日本弁護士連合会 / 日本司法書士会連合会 / 全国消費生活相談員協会 / 日本消費生活アドバイザーコンサル タント相談員協会(NACS)/ 日本消費者協会 / 主婦連合会 / 労働者福祉中央協議会 / 日本退職者連合 / 不 招請勧誘規制を求める関西連絡会

閉会あいさつ

ウォッチねっと代表幹事 河村真紀子さん(主婦連合会会長)

 消費者庁の検討会の議論を受けて行われた法改正は、大筋で内容を評価していました。しかし、契約書面の電子化は、多くの反対の声の中で、残念ながら法改正に含まれて成立してしまいました。今後は政省令でどう定めるかが重要になります。脆弱な消費者が脆弱なままに電子書面の承諾をすることがないようなルール設定が求められます。また、特商法 5 年後見直し、施行後 45 年見直しについて、不招請勧誘の規制の検討が強く求められます。重要な施策のため、ご参加の多くの方の知見を結集して、連携運動を盛り上げ、消費者目線で応援をしていくことが大事です。一緒に頑張りましょう。

以上

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