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2021年度PLオンブズ会議報告会

PL法の歴史とネット社会の新たなPL問題
〜新しい時代のPL法の在り方を問う〜 開催報告

 今年のPLオンブズ会議報告会は、2部形式で開催しました。第1部では、製造物責任法(以下、PL法)の制定にご尽力いただいた主婦連合会 故清水鳩子さんの足跡をたどりながら、PL法制定の歴史を振り返りました。第2部では、デジタル・プラットフォームを通じて購入した外国製品の欠陥による火災事故を事例に、ネット社会の新たなPL問題についてパネルディスカッションを行いました。最後に、PL オンブズ会議より提言が読み上げられました。

【日時】2021年7月1日(木)14時00分〜16時00分
〔Zoomを活用したオンライン報告会〕

【参加】121人

【内容】第1部 PL法の歴史を振り返る
第2部 ネット社会の新たなPL問題について
パネルディスカッション
パネリスト 川和功子さん(同志社大学教授)
松本恒雄さん(一橋大学名誉教授、国民生活センター前理事長)
早坂祐樹さん(国民生活センター)
加藤尚徳さん
コーディネーター 中村雅人さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)
PLオンブズ会議より提言

概要(事務局による要約)

■第1部 PL法の歴史を振り返る

太田吉泰さん(PLオンブズ会議メンバー:当時全国消団連事務局長)

 PL法制定運動は、消費者を中心に幅広い人々が参加した大きな運動でした。その成果はその後の消費者運動にも引き継がれています。

 主婦連合会の会長などを歴任され、消費者運動のリーダーとして活躍された清水鳩子さんが、2020年11月14日、96歳でお亡くなりになりました。
 PL法では、国民生活審議会委員や「製造物責任制度等に関する委員会」の委員も兼ねて、制度・法律の詳細にわたる検討に参加されました。
 法案の国会審議にあたっては、衆議院商工委員会で消費者を代表し、参考人として意見を述べました。PL法制定運動の推進役、PL法消費者全国連絡会の幹事として大きな役割を果たされました。
 清水さんの、消費者運動に対する貢献に心からの敬意を捧げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。

◇PL制度の検討の経過

 PL法制定までの検討について、1991年第13次国民生活審議会で審議され、実質的な検討は、審議会の下に置かれた「製造物責任制度等に関する委員会」で行われました。消費者委員は、清水鳩子さんのほか、田中里子さん(東京都地域婦人団体連盟)、原早苗さん(消費科学連合会)、大嶋茂男さん(元全国消団連事務局長)の4人が参加しました。この委員会は、1991年3月から1992年10月まで計34回開かれ、「製造物責任制度導入」の報告書をまとめる予定でしたが、アメリカのような濫訴社会にならないか、製造コストが上昇するのでは、との産業界の消極的な姿勢の影響で、「概ね1年以内に結論を取りまとめる」として、結論が先送りされました。1年後の1993年12月、第14次国民生活審議会にて製造物責任制度の導入がようやく提言され、「概ね1年以内に」の期間に、通産省など所管の産業界の了解を取り付けて足並みをそろえることになりました。そしてPL法は、1994年6月22日に成立しました。

◇PL法制定運動

 PL 法消費者全国連絡会には、22の消費者団体、101人の弁護士・学者などが参加しました。運動推進の中心的役割を果たしたのが全国連絡会の幹事会で、9 つの団体の代表と弁護士・研究者等で構成され、事務局は全国消団連が担当しました。消費者にわかりやすく解説する寸劇や紙芝居、チラシ・パンフレットを作るなど、創意ある学習活動が全国で取り組まれました。「欠陥商品110番」は 1990年〜1996年まで、延べ40カ所で 4,783件の相談を受けました。国会請願署名は 3,507,158人、自治体の312の議会で政府に早期制定を求める意見書が採択されました。12回の大規模な集会を開催し、そのうち消費者大会全体集会では日比谷野外音楽堂に 2,000人が参加し、国会までデモ行進し、請願署名を議員に渡して早期制定を訴えました。国会(政党・議員)などへの要請行動は、50回以上、延べ850人が議員会館を回りました。また、運動はその後の消費者契約法や消費者基本法など、消費者関連法の制定・改正運動に引き継がれていきます。PL法制定運動に共に取り組み、お互いに理解を深めたことが現在の全国消費者団体連絡会の組織に結実しています。

■第2部では、「ネット社会の新たなPL問題について」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。

 「デジタルプラットフォームを通じて購入した製品に関する相談事例」「デジタルプラットフォーム事業者に対して裁判をしている方からの報告」「アメリカやヨーロッパの事例」「今年度成立した『取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律』(新法)について」について意見交換がされました。

■PLオンブズ会議からの提言

 明治学院大学教授角田真理子さんより「2021年PLオンブズ会議報告会提言」が読み上げられました。

 7月5日に「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、経済産業大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出しました。

2021年PLオンブズ会議報告会提言

 私たちPLオンブズ会議は、1995年の製造物責任法(以下、PL法)の制定以来、同法にまつわる事象を監視し四半世紀にわたり毎年提言を発してきました。

 この間の社会の変化は目覚ましいものがあり、法制定時代には予想もしなかったようなIT化の推進により、今やだれもが持っているスマートフォンやパソコン、タブレットなどデジタル機器で、簡単にインターネットで買い物ができる時代となりました。

 その中で、いわゆるデジタル・プラットフォームを通じたネット取引で購入した外国製品の欠陥による火災事故が発生し、その救済が困難を極めるなど、PL法制定時には予想しなかった問題が生じています。

 本日の報告会で、消費生活相談の現場に寄せられている問題が報告され、実際の裁判でもデジタル・プラットフォーム事業者の責任を追及するケースが出ていることも報告されました。また、アメリカやヨーロッパにおけるデジタル・プラットフォーム事業者の責任について議論がなされている状況の報告も受けました。

 私たちは、欠陥商品による被害者が正しくかつ容易に救済される法としてPL法に期待してきましたが、今や日本のPL法ではデジタル社会に対応できていないことも明らかになりました。

 そこで、私たちは、社会のデジタル化に対応したPL法の改正を行い、その中で、デジタル・プラットフォーム事業者の責任を適切に位置づけることを明確にすべきと、提言します。

2021年7月1日
PLオンブズ会議
一般社団法人全国消費者団体連絡会

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