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消費者基本計画について
〜みんなで工程表(素案)に意見を出そう〜 開催報告

 2020年3月、第4期消費者基本計画が策定され7月に1年目の工程表が示されました。工程表は、5年間の計画で、消費者庁をはじめ関係府省庁が行う政策について「誰が、いつまでに、何を実施するのか」が具体的に示され、毎年更新されています。

 基本計画策定から2年目を迎える中、コロナ禍で私たちの暮らしは大きく変わりました。社会の急速なデジタル化や悪質な消費者被害が拡大しており、工程表に示された各施策について考えることが大切です。消費者庁消費者政策課長より説明をいただき、意見交換を行いました。

【日時】4月13日(火)14時00分〜16時00分

【講師】内藤茂雄さん(消費者庁 消費者政策課長)

【参加】41人

概要(事務局による要約)

消費者基本計画及び同工程表の改正素案について

内藤茂雄さん(消費者庁 消費者政策課長)

■消費者基本計画(以下:基本計画)について

 第4期消費者基本計画は2020年3月末に閣議決定をされましたが、その後コロナ禍で社会のデジタル化が加速するなど、消費者を取り巻く環境はこの1年で大きく変わりました。そのため、通常は変更しない基本計画ですが、新しい生活様式の実践に関する部分等を改正しました。

 基本計画は5章建てで、第1章は前書き、第2章は現状認識、第3章は政策の基本方針、第4章は行政基盤の整備、第5章は重点的な政策の推進になります。

 改正のポイントとして、コロナ禍の巣ごもり需要等を背景としたインターネット取引やテレワーク等の活動が不可逆的に拡大しています。ECサイトの月1回以上の利用率は、コロナ前の5割から現在は6割に増えています。基本計画では、デジタル技術を活用した消費者選択の拡大と消費者利益の擁護・増進を両立する取り組みを進めるとしています。また、買い物や外食等でのソーシャルディスタンスなど、これまでと異なる対応が求められていますが、基本計画では、持続可能な社会生活に配慮した適切な消費行動の浸透を図ることにしています。コロナに便乗した悪質商法やトラブルとして、マスクの送り付け商法やコロナに効果があるなどの不当表示、ワクチン詐欺などがあります。基本計画では、被害防止の徹底や消費者の冷静な対応等を進めるとしています。

■工程表について

 基本計画に基づく具体的施策の年次計画です。毎年の見直しで、昨年度の実績を記載し、KPI(重要業績評価指標)を更新し、新しい取り組みを追加します。構成は基本計画の第5章とリンクをしていて、施策は今回3つ追加になり156個の項目があります。

◇工程表の改定のポイント(令和3年度に取り組む内容)

①「新しい生活様式」の実践への対応
「デジタル化に対応した消費者教育・普及啓発の推進」・・学校のオンライン授業に対応するデジタル教材の開発や情報発信をしていきます。消費者教育ポータルサイトの更新をしていきます。
「詐欺的な定期購入商法に対応する制度整備をすること」・・特定商取引法の改正案の国会提出がされています。
「コロナ禍における不当表示・悪質商法等への対応」・・ワクチン詐欺等に係る注意喚起やコロナに効くといった不当表示への対応を継続的にしていきます。

②デジタル社会への対応
「デジタル・プラットフォームを介した取引における消費者利益の確保」・・デジタルに慣れない消費者の被害防止や保護をしていきます。消費者教育推進会議で指摘された消費者教育に関する取り組みを進めます。
「消費生活相談業務のデジタル化の推進」・・SNS相談やAIチャットボット機能の実装、PIO-NETの刷新などを検討していきます。通販などECサイト上の食品表示についても検討していきます。

③成年年齢引下げを見据えた若年者への消費者教育・啓発
「成年年齢引下げに伴う消費者教育全力」キャンペーン・・3月から取り組んでいます。関係省庁と連携しつつ、自治体や大学等を巻き込んだ取り組みをしていきます。イベント・メディアを通じた周知、消費者庁ポータルサイトでは「ゆりやんレトリィバァのラップ動画」などもアップしています。

④食品ロス削減の推進等消費者・事業者の協働の推進
「制度的見直しを伴う課題への取組」・・災害用備蓄食品の賞味期限が切れる前にフードバンクへの寄附などで有効活用することを促進していきます。
「SDGsへ貢献する消費者志向経営の推進」・・今後取り組みを強化していきます。

⑤消費者被害の防止の強化・救済手段の充実
「国・地方における消費者行政の体制強化」・・見守りネットワークの設置促進などに従来通り取り組みます。消費生活相談員が力を発揮できる環境づくりも従来通り取り組みます。
「事故情報データベース等の情報集約、体制や機能強化」・・消費者安全調査委員会の発信力の強化をしていきます。
「消費者契約法改正に向けた検討」・・いわゆるつけ込み型勧誘の取消権等、平均的な損害の額の立証責任軽減など等、契約条項の不当条項等についての検討をしています。コロナ禍でのキャンセル問題について実態のヒアリングなどを実施しています。見直しが必要であれば、法改正に向けて進められればと思います。
「消費者裁判手続特例法改正に向けた検討」・・検討すべき内容について、必要に応じて法改正になるのではないかと思います。

〇そのほか
携帯料金について・・消費者が選択するときの料金表示の取り組みを工程表に盛り込んでいます。
エシカル消費について・・SDGsの中に取り組む必要があると思います。

〇新規の3項目について
コロナ対応・・消費者庁対応と関係省庁の連携の対応を分けました。
デジタル化・・デジタル化に係る消費者トラブル対策からオンラインゲームトラブルを分けました。
高齢者のITリテラシー・・高齢者に教えるデジタル支援員制度の取り組みを追加しました。

■主な質問や意見(抜粋)

 ネット通販上の食品表示のあり方が検討されたが、制度化の具体的に取組はあるか/「モデル事業」とはどのような内容か/地方自治体の消費者行政財政への支援はさらに強化が必要かと思うが、消費生活相談員が十分に力を発揮できる環境づくりに、人数増加や処遇改善なども含まれているのか/消費者行政の体制強化について、消費生活相談員不足の対策はどうなっているか/市町村の消費者行政に係る広域連携ガイドラインの改訂は予定されているか/デジタル非対応の高齢者支援があるが、具体的にどのような展開を考えているのか/ネット販売や通販が増える中でどこが管轄なのか、わかりやすくしてほしい、などの質問や意見が出されました。

※全国消団連では、4月26日に「消費者基本計画工程表改定素案」に関する意見(29項目について)を提出しました。

以上

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