[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


「食料システムサミットに関する学習・意見交換会」開催報告

 2021年9月にニューヨークで「国連食料システムサミット」が開催されます。本サミットでは2030年までのSDGs達成に向けた「行動の10年」の一環として、生産から消費に至る食料システム全体を持続可能なものに改革していくために必要な具体的行動が議論される予定です。サミットにおける日本の対応を有意義なものにするために、食料システムに関わる様々なステークホルダーとの対話(意見交換)が進められています。

 今回は消費者との対話を進めることを目的として、本サミットの概要やテーマについて、農水省の担当者からお話を聞き、意見交換を行いました。

【日時】2021年4月23日(金)10:30〜12:00 [Zoomを利用したオンライン学習会]

【講師】農林水産省 大臣官房国際部
国際機構グループ 参事官 本田光広さん

【内容】・食料システムサミットの概要説明(約30分)
・意見交換・質疑(約60分)

【参加】47名

概要<事務局による要約>

国連食料システムサミット2021の概要

日程:2021年9月ニューヨークで開催、2021年7月ローマにおいてプレサミットを開催

主催:アントニオ・グテーレス国連事務総長

出席者:国連加盟各国首脳、閣僚、国際機関の長、市民社会及び民間企業関係者等

目的と内容:食料システムとは食料の生産・加工・流通・消費などに関わる様々な活動を意味する。2030年までをSDGs達成に向けた「行動の10年」と位置付け、食料システムの改革を促すような行動を導きたいというのが国連の考え方。食料システムを改善することでSDGsの大部分が改善されるものと考えられている。サミットに向けた取組は以下の通り:
①食料システムへの転換に資する具体的な行動を5つのテーマに分けて議論し、7月のプレサミットまでにまとめる。
②生産者・消費者を含めた様々なステークホルダーと食料システムについての対話(意見交換)を進める。
対話の概要は国連に報告しホームページ上に公開する。

●国連食料システムサミットの5つのテーマ

  1. 質(栄養)・量(供給)両面にわたる食料安全保障
  2. 食料消費の持続可能性
  3. 環境に調和した農業の推進
  4. 農村地域の収入確保
  5. 食料システムの強靭化

●これら5つのテーマのうち、特に2番目の「食料消費の持続可能性」についての意見交換をしたいとのことで、このテーマを考える上で前提となる世界や日本の状況を説明いただきました。(要約)

・温室効果ガス排出量

 世界の温室効果ガス排出量はCO2換算で490億トン、このうち農業・林業・その他土地利用の排出は世界の排出全体の1/4を占めます。一方、日本の温室効果ガス排出量は12.4億トン(2018年度)、このうち農林水産業における排出は約5,001万トンで日本の全排出量の4.0%であり、世界と日本では大きな差があります。森林を伐採して農地を作るような形は日本では殆ど行われていないためです。

・農業による環境負荷への対応

 化学肥料や農薬は、国際比較においても我が国の使用量は多く、2050年までに、化学農薬の使用量(リスク換算)の50%削減などの目標を掲げて目指していきます。併せて、有機農業を拡大させていく目標を掲げます。昨年5月にEUでは「ファームtoフォーク戦略」を策定し、2030年までに有機農業の面積を25%に拡大するという意欲的な目標を設定しました。日本でも2050年までに有機農業の面積を25%に拡大する目標を掲げます。現状日本は欧米に比べ有機食品の消費額が極めて少ない状況です。物がないから買えないこともあるので消費をいかに作っていくかも含め取り組んでいきます。

・我が国の食料自給率

 日本の食料自給率は低下傾向で推移しており、令和元年度にはカロリーベースで38%、生産額ベースで66%でした。また食料生産を支える化学肥料等の資材も輸入に頼っています。

・持続可能な調達

 主に南米などでは農業が要因で伐採が実施されて森林が減少している状況です。ブラジルでは森林伐採をして牧草地の開発が行われ牛肉の輸出が増加し、東南アジアではパーム油の調達のために熱帯雨林の伐採が行われています。生態系を破壊しないパーム油生産のためRSPO認証制度が設けられました。日本としても「みどりの食料システム戦略」を策定し持続可能な調達に取り組んでいきます。

・食品ロスの削減

 食料生産の約3分の1(約13億トン)が食料のロス・廃棄となり、これは作物生産に使用される土地、水及び肥料の約4分の1に相当しています。先進国の傾向では消費者に渡ってから廃棄される食品が多いというデータがあります。日本の食品ロスの量は年間612万トンで国民一人当たり年間約48kgに及んでいます。

●「みどりの食料システム戦略」との関連、今後の進め方 及び コミットメントについて

 我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現することを目指した「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめが2021年3月に行われ、5月には戦略が策定されます。この戦略に盛り込まれる項目のうち、食料システムサミットにも共通する主な事項を我が国のコミットメントとして政府から国連へ発信していきます。また民間の企業や生産者、消費者団体など多くのステークホルダーからもコミットメントを積極的に集め、それらを取りまとめてサミットの事務局に提出し、プレサミット、サミットの議論に盛り込んでいきます。ぜひこの機会に、皆様が色々な目標を掲げて前向きに取り組んでいることを、対外的に発信していただければと思います。

●意見交換より(抜粋)

Q:食料の「量」の確保は世界的な課題だが、一方で遺伝子組み換え、ゲノム編集、化学肥料の使用等、食料の「質」に関わる問題もある。サミットにおいて、食の安全・安心について強調していただきたい。

A:食の安全は大前提と考えている。化学肥料や農薬については環境影響も含め、農薬はリスク換算で50%の軽減、化学肥料は30%の軽減という数値目標を示しながら取り組んでいく。また今回のサミットで国連は食料の「質」の問題をテーマに掲げているので消費者とのコミュニケーションを図りながら進めていきたい。

Q:地産地消で地場のものを食べたいと考えていても、TPP等で安い農産物が海外から輸入されてしまうと、地場消費を選び続けることが難しい。

A:TPPを踏まえた対応として影響のある品目に対しては支援策を掲げ農家への影響を緩和している。また、国産の自給率を下げないよう、環境影響を考えたうえで有機農業や地産地消を進めていくため「みどりの食料システム戦略」の中でも新たに対応を打ち出して取り組んでいく。

Q:有機農業の拡大、農薬使用の低減、肥料使用の低減について、単位面積当たりの収量減少は避けられないため、対策が必要。また、農産物の輸入を通じた外国の水や土地の使用をできる限り減らし、外国の環境に対し悪影響を及ぼさないようにすることが必要。

A:農薬や肥料を減らした中でいかに生産性を上げていくかは大きな課題。農薬を使わない害虫の防疫、収量を落とさない技術などは研究開発中で、時間をかけてのイノベーションとなる。輸入相手国との関係は、熱帯雨林の伐採などの認証制度と併せ世界的に議論が進められている。情報共有しながら意見交換をしていきたい。

Q:食料システムの持続可能性を向上させるにあたり、消費の在り方の変革が課題。現在は、心と体と社会の健康につながる望ましい消費を選択したくともできない人や、そもそも望ましい消費のために何を選択すればよいか分からない人が多い。健康な食生活の促進について、食・農・教育・労働環境の保障等を所管する他の行政機関とも連携した取組が必要。

A:複数の省庁と連携して「食育基本計画」を作成しており、食料生産や環境を配慮した食料供給についても食育の中で取り上げている。バランスの取れた食事の大切さなどを含め、食育の重要性を考慮しながら取り組んでいくと共に、日本での優れた食育の取り組みを海外へも発信していくことも必要と考える。

≫ 開催案内はこちら