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学習・意見交換会「輸入食品って安全なの?〜令和3年度版〜」開催報告

 「輸入食品監視指導計画」は、日本に輸入される食品・添加物・容器包装・おもちゃなどの安全性を確保するために、輸出国での生産から輸入時までのそれぞれの段階で、厚生労働省及び検疫所が取るべき対応について毎年定めるものです。毎日の生活に欠かせない輸入食品の安全性について、現在の状況と「令和3年度輸入食品監視指導計画(案)」の内容に沿って説明を聞き、その後に質疑応答と意見交換を行いました。

【日 時】1月22日(金)14:00〜15:30
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【参加者】65名

【内 容】

①報告「輸入食品の安全性確保の取組み」
厚生労働省 医薬・生活衛生局 食品監視安全課
輸入食品安全対策室長 蟹江 誠さん
監視調整係長 鈴木 康宏さん

②参加者との意見交換

概要<事務局による要約>

●輸入食品の現状

 日本はカロリーベースで62%を輸入に依存しています。輸入届出件数は増えていますが、輸入重量はほぼ横ばいで推移しています。重量ベースでは穀類を含む農産食品・農産加工食品が最も多くなっています。

●輸入食品の監視結果

 令和2年度の速報値(4〜9月)では届出件数1,164,822件に対し、検査件数98,296件、違反件数305件、違反割合0.03%でした。令和元年度の実績と比べると、違反割合は変わりませんが、届出件数では新型コロナウイルスの関係により航空貨物の減少が見られます。

●監視体制の概要

 輸出国対策・輸入時対策・国内対策の3段階で行われています。

【輸出国対策】

◇日本の食品衛生規制の周知 ◇二国間協議や現地調査 ◇輸出国への技術協力

 タイのマンゴー・おくら、フィリピンのバナナの残留農薬管理対策や、スペインの牛肉(令和2年1月より輸入手続再開)の日本向け輸出プログラムの作成など、目的に合わせて現地調査を行い、現地政府に改善対策を依頼しました。またインド産の養殖えびについては、合成抗菌剤管理対策の確認のため、現地での協議や生産段階での調査を行い、適切に行われていることを確認しました。

 日本に輸入されているフィリピン産バナナは、過去に農薬の問題があり輸入時に貨物を留置いて検査をしてきましたが、現在はフィリピン側で農薬の管理を徹底することで問題解消しています。

 このように輸出国対策は輸入時検査を効果的に実施するためにも引き続き力を入れていきます。

【輸入時対策】

 輸入者は輸入する食品等について届出事項に沿った内容を厚生労働大臣に提出する義務があります。厚生労働省の検疫所では、届出書の審査や相談室での届出前の相談対応を行い、輸入時の監視指導体制を強化しています。全国の検疫所での食品担当部署は32箇所、食品衛生監視員は現在422名の体制になっています。輸入前相談の結果、令和元年度で2.77%が日本の基準に合わないもの(違反に該当する)として発見されました。輸入前相談により、効率よく違反の防止ができています。

 輸入時には◇指導検査 ◇モニタリング検査 ◇検査命令というリスクに応じた検査制度があります。

 モニタリング検査は大きく網をかけるものとして、年間計画に基づいて無作為にサンプリングし、検査を実施していますが、検査命令の場合は全ての輸入届出について検査を実施しています。これらの検査は、統計学的に決められた採取量に基づき実施しています。また、検査で対応できないものについては「包括輸入禁止」として法的に禁止できる規定がありますが、これまでに該当する事案はありません。

 令和元年度は全体で約254万件の届出の中で約22万件の検査を実施し、実数763件、延べ数800件の違反が確認されました。

【国内対策】

 各都道府県等でも国と同様、食品衛生の監視指導計画を作成して、パブコメ募集やリスクコミュニケーションを行うとともに、結果も公表しています。国内での食中毒発生事案に基づいて監視強化を行った事例もあります。

●最近の状況①:輸入時対応事案「中国産乾燥きくらげ」

 昨年9月、サルモネラ食中毒の原因食品として中国産乾燥きくらげが米国とカナダで回収されている情報を入手したため、対象品については貨物を積み戻す措置をし、輸入時の検査を強化しました。検査においてサルモネラ属菌が検出された場合は、確実に加熱加工用として特定の施設で処理されるか確認を行い、合わせて、関係する都道府県への監視依頼を実施しています。

●最近の状況②:食品衛生法改正に関する対応

 HACCP義務化の完全施行(2021/6〜)に従い、輸入される食肉はHACCPに基づく衛生管理が確認できた国からしか輸入ができない体制になります。また乳・乳製品、ふぐ、生食用かきについては輸出国政府が発行する衛生証明書の添付義務がすでに始まっています。

●令和3年度輸入食品監視指導計画(案)について

 重点事項として、諸外国での食中毒情報や病原微生物など健康被害発生の可能性が高いと考えられる項目について速やかに監視を強化する体制をとるといったことや、食品衛生法の改正事項を着実に施行することを掲げています。モニタリングの検査計画数としては項目ごとに計画数を算出し、病原微生物やカビ毒など健康影響リスクの高い項目を強化しています。モニタリング検査計画件数の予定は約100,000件(前年度約99,700件)としています。ホームページ・パンフ・動画等で情報を提供していきます。

●新型コロナウイルスに関する情報提供

 中国で冷凍コンテナや貨物、冷凍食品の外箱からウイルスが検出されたという報道がされていますが、物品との接触による感染の報告はありません。ウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染なので基本的な予防策である手洗いや消毒、マスク着用を徹底することが重要です。厚生労働省のQ&Aでも情報提供しています。

 食品安全の観点からの国際的なメッセージとしては国立医薬品食品衛生研究所のHPにWHOや国際機関の情報の詳細が掲載されています。

 国際食品微生物規格委員会(ICMSF)が発表した見解では「新型コロナウイルスは食品安全ハザードと考えるべきではない(一部抜粋)」「食品が新型コロナウイルスの重要な感染源であることを証明する正式な文献は存在しない(一部抜粋)」とのメッセージを出しています。

(「輸入食品監視業務FAQ」を厚生労働省のホームページに掲載していますのでご確認ください)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000072466.html

以上

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