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トクホを学ぼう〜特定保健用食品(トクホ)の表示に関する
公正競争規約と公正マークについて〜学習会報告

 2020年8月に「特定保健用食品公正取引協議会」が設立され、業界の自主的ルールを定めた「トクホの表示に関する公正競争規約」が策定されました。規約に従い適正な表示をしていると認められる会員事業者の商品には、容器包装や広告に「トクホの公正マーク」を付けることが許可されています。公正マークには「血圧」や「体脂肪」などのカテゴリーを表示できるものもあり、マークを見ることで消費者は目的に沿った合理的な商品の選択ができるようになります。

 今回は消費者庁の担当審議官とメーカーの開発研究所長を講師にお迎えし、トクホの表示に関する公正競争規約と公正マークについて学ぶための学習会を行いました。

【日 時】12月15日(火)10時30分〜12時00分
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講 師】消費者庁 審議官 片桐 一幸さん
花王(株)ヘルス&ウェルネス研究所長 桂木 能久さん

【参 加】37人

概要(事務局による要約)

■特定保健用食品公正競争規約について

(講師:消費者庁審議官 片桐 一幸さん)

◇景品表示法の規定に基づく公正競争規約とは

 公正競争規約は、表示又は景品類に関する事項について事業者団体等が定める業界の自主的ルールです。表示のルールを明確にすることで消費者は商品やサービスを安心して選択でき、公正競争規約が業界全体の信頼や健全性を向上させる役割を担っています。また規約に従って適正な表示がされている場合には公正マークや会員証の発行がされることから、消費者が安心して利用できる商品やお店であることがアピールできます。公正取引協議会は現在78団体あり、102件の様々な分野の公正競争規約があります。

◇特定保健用食品と機能性表示食品

 食品に機能性表示が可能なものを「保健機能食品」と言い、その中には①「特定保健用食品(トクホ)」②「機能性表示食品」③「栄養機能食品」の3つの制度があります。特定保健用食品(トクホ)は許可制、機能性表示食品は届出制、栄養機能食品は許可や届出の必要なく事業者が自主的に機能を表示できます。

 トクホは食品の有効性や安全性について国の審査を受け許可を得るものですが、機能性表示食品は事業者が科学的な根拠を届出することで国の審査を受けず事業者の責任で機能性の表示ができるものです。件数の推移として見ると、トクホより機能性表示食品の件数が伸長しています。また令和元年の意向調査によるとトクホの認知度は31.2%、摂取状況は17.6%でした。

◇トクホ規約の社会的意義

 少子高齢化・デジタル化が進展し消費者のニーズが複雑多様化する中で、消費者が適切に商品を選択でき、業界全体と日本経済が成長するために、公正競争規約の果たす役割は重要です。また高齢化により50歳以上の人口が半数を占めている中、健康寿命の延伸は個人だけでなく社会全体にとっても大きな課題になっています。トクホなど根拠のある商品を消費者が適切に選択できることがますます重要です。

◇トクホの公正マーク

 保健機能の用途に対応するカテゴリーが入った「トクホの公正マーク」が新設され、健康の維持増進に役立つ機能性の分かり易い表示や、消費者が選択しやすい表示が行われるようになりました。

 それぞれの保健の用途に対応する公正マークが現在25種類あります。

◇トクホの進展への期待

 公正競争規約の適切な運用でトクホに対する消費者の理解と関心が高まり、さらなるトクホ商品の開発や発展につながると共に、消費者の健康の維持増進や健康寿命の延伸に寄与することが期待されています。

■内臓脂肪を溜めない食生活の実現に向けた花王の取り組み

(講師:花王株式会社ヘルス&ウェルネス研究所長 桂木 能久さん)

◇内臓脂肪と花王のトクホ

 メタボリックシンドロームの予防について約30年研究開発を進めて来ました。メタボの元凶である「内臓脂肪」は生活習慣病を誘発することから2005年に内科学会ではガイドラインを策定しています。加齢と共に筋肉量や代謝が低下して内臓脂肪が蓄積し、それによってがんや認知症のリスクが高まるという研究データもあります。年齢を経ても代謝を高め消費エネルギーを増やし内臓脂肪を減らすこと、またその為の生活習慣の提案について研究をしています。

 2020年の10月に新たにトクホとして許可を得た商品「ヘルシア サッと健膳」(2020/12現在発売日未定)は、αリノレン酸ジアシルグリセロールという成分の働きにより 食べた脂肪を消費しやすくし、内臓脂肪を減らすのを助けるもので、食事にかけて食べるタイプの油です。

 トクホの申請に際しては、様々な試験データや文献情報によるエビデンスの審査を受け、安全性と有効性の両面から表示を裏付けるデータが取れたものとして許可を受けました。

◇内臓脂肪を溜めない食事研究

 ある臨床試験のデータから、いかに日常の食べ方や生活習慣が体重の減少に有効かということが明らかになり、それが食事研究のきっかけになりました。内臓脂肪を溜めない食事研究を始めるにあたり、日常的には測定が困難な内臓脂肪が簡単に計測できる「内臓脂肪測定器」を開発しました。内臓脂肪の量と食事解析とのマッチングで、内臓脂肪の多い人・少ない人の食事パターンを把握し、2万人のデータを収集して調査を行いました。その結果、豆・野菜・果物・魚介類を多く摂取し、肉類や油脂を控え目に摂取している人の内臓脂肪が少ない傾向にあることがわかりました。一方で、日常的な食生活においては摂取カロリーの量はあまり影響せず、食事の「質」の方が大事であることがわかりました。

 これらの実験結果と栄養素による食事組成のバランスや食事の開始時間との関連なども合わせ、研究の成果をまとめて「スマート和食」として他の企業や地方自治体にも提案をしています。また蓄積したデータを活かす形で、花王の全ての事業所では「スマート和食」のメニューを摂れるコーナーを設け、メタボや内臓脂肪が気になる人への提供を行っています。経過観察の範囲で、内臓脂肪、体重、血糖、コレステロール等の結果が改善されエネルギーの代謝や脂肪燃焼に効果があることがわかってきました。

◇花王の取り組みの姿勢と公正競争規約

 内臓脂肪にこだわって開発した商品でメタボケアの解決策を社会に提供することができます。しかしトクホの商品だけで消費者を健康にできるわけではありません。トクホの商品をスーパーの棚に並べるだけでなく、具体的な方策として実態を知ってもらうことや食生活の改善に取り組んでもらうサイクルを、消費者の健康改善の手助けとして示していくことが大切と考えています。これらを事業として取り組んでいく姿勢を大切にしています。

 現在、健康食品関係の業界団体は6団体あり健康食品産業協議会によって束ねられています。その中で、日本健康栄養食品協会がトクホ公正競争規約の策定に取り組みました。このように業界は、業界の発展と消費者から信頼されるため、さらに襟を正して取り組んでいく姿勢が最も大切と考えています。

■質疑応答(抜粋)

Q:公正取引協議会に所属していない事業者への徹底はどうするのか?

A:公正競争規約は業界の自主的なルールなので所属外の事業者への強制力はないが、景品表示法のもとに、不当表示については消費者庁が取締りをする。また協議会に分野の多くの企業が参加することで規約が業界全体のスタンダードになり、業界全体の健全化が進むと考えている。

Q:機能性表示食品にも公正競争規約が必要ではないか?

A:設定されれば望ましいと考えるが、業界側の自主的な発意によるものなので、動きがあれば消費者庁としても必要な協力は行う。

以上

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