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「健康食品との付き合い方」学習会 開催報告

 インターネット上やあらゆるメディアに健康をアピールする食品があふれています。安易に購入する人も多く見られますが、本当に効果はあるのでしょうか。健康の保持増進に資する食品全般を一般的な認識では健康食品と言いますが、健康食品やサプリメントと呼ばれるものに法令上の明確な定義はありません。摂取することで思わぬ影響を受けたり健康を害することもあります。健康食品の全体像、医薬品との違い、利用する際の注意点など、健康食品についての知識を深め、付き合い方を学ぶための学習会を開催しました。

【日 時】9月25日(金)14時00分〜15時30分
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講 師】秋元京子さん
(内閣府食品安全委員会事務局 リスクコミュニケーション官)

【参 加】61人

概要(事務局による要約)

■「健康食品」について 安全な選択をするために(19のメッセージ)

◇食べ物の安全とは?

 食品の安全性は、ハザード(食品の危害要因)とばく露量(食べた量・摂取量)の掛け算で表すことができます。食品の成分の働きかけの強さや性質は、成分によって異なりますが、摂った量によって良くも悪くも作用することがあります。どんなものも毒か毒でないかは量で決まります。食品の安全性の確保について、米や乳製品など長い食経験があるものは安全性が確保されていることがわかりますが、食品添加物や遺伝子組換え食品などは、個別にリスク評価をし、それぞれに適した管理を行い、安全性を確保しています。

◇「健康食品」ってどんなもの?

 健康食品の位置付けは一般の食品と同じです。私たちが口から摂取するものを食品か医薬品かで分類すると、健康食品は食品の方に含まれ、機能性が表示できるかできないかで、健康食品はさらに2つのグループに分かれます。機能性があることを科学的に証明できるものは表示ができます。それを保健機能食品といい、1、特定保健用食品(トクホ)、2、栄養機能食品、3、機能性表示食品があります。

 機能性を表示できないものが、その他「いわゆる健康食品」と言われるものです。食経験が少ないうえ、安全性の評価もしていない、作り方・使い方の基準やルールもない「いわゆる健康食品」は、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

1、特定保健用食品(トクホ)は、健康の維持や増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、国が保健効果と安全性を審査したうえで表示を許可されている食品で、マークがついています。

2、栄養機能食品は、不足がちなものを補給するものとして届出や審査はなくても機能性を表示できる食品です。

3、機能性表示食品は、安全性と機能性の根拠に関する情報を消費者庁に届出をし、事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。

◇「健康食品」と「医薬品」の違い

 健康食品は、成分量や品質は製造者の自主管理に委ねられ、摂取するかどうかは自分で判断して選択するものですが、医薬品は医者の処方箋がないと手に入りません。健康食品は有害な事象も有効性も利用した消費者が自分で評価するもの、消費者自身が選択するものなので、正確な情報を得ることが必要となります。

◇「健康食品」の19のメッセージ

 食品安全委員会には様々な相談が寄せられます。その相談事例や背景を踏まえ、以下の通り19のメッセージを作りました。健康食品を摂ることによって発生する健康被害を防止するためのメッセージです。消費者が健康食品を摂るかどうか判断するための基本事項となります。

【食品としての安全性】
①「食品」でも安全とは限らない
②「食品」だからたくさん摂っても大丈夫と考えてはいけない
③同じ食品や食品成分を長く続けて取った場合の安全性は正確にはわかっていない

 食品は未知の物質で安全性のリスクやアレルゲンもあります。ジャガイモやキュウリの芽・皮・ヘタに悪影響を及ぼす化学物質があるように、食品には健康へのリスクがあるものと捉える必要があります。粉末にした白インゲン豆を食べるダイエット法で健康被害が発生した例もありました。普段食べている方法とは異なる摂り方には注意が必要です。

【健康食品としての安全性(成分)】
④「健康食品」として販売されているからといって安全ということではない
⑤「天然」「自然」「ナチュラル」などのうたい文句は「安全」を連想させるが、
 科学的には「安全」を意味するものではない
⑥「健康食品」として販売されている「無承認無許可医薬品」に注意

 健康食品には食経験のない成分を含む場合や、健康食品に用いられる植物は適切な管理をされていない場合もあります。ビワの種などバラ科の植物の種子にはシアン化合物が含まれるので農水省から注意喚起される事例もありました。また「医薬品成分含有」という健康食品は違法なので注意が必要です。

【健康食品としての安全性(形態)】
⑦通常の食品と異なる形態の「健康食品」に注意
⑧ビタミンやミネラルのサプリメントによる過剰摂取のリスクに注意

 錠剤やカプセル、粉末顆粒状のものは特定の成分を多量に摂り易くなってしまうので注意が必要です。現在の日本人が通常の食事をしていれば、ビタミンやミネラルをサプリメントで摂取する必要はなく、足りているものをサプリメントで補うと過剰摂取が懸念されます。特にマルチビタミンは意図しない成分を過剰に摂ってしまう可能性があります。

【健康食品としての安全性(品質)】
⑨「健康食品」は、医薬品並みの品質管理がなされているものではない

 医薬品にはGMP(適正製造規範)の基準を守るための法律上の義務がありますが、健康食品のGMPは事業者の自主的な管理となっています。

【摂取者・摂取目的】
⑩「健康食品」は、多くの場合「健康な成人」が対象。
 高齢者、子ども、妊婦、病気の人が「健康食品」を摂ることには注意が必要
⑪病気の人が摂るとかえって病状を悪化させる「健康食品」がある
⑫治療のため医薬品を服用している場合は「健康食品」を併せて摂ることについて
 医師・薬剤師のアドバイスを受けること
⑬「健康食品」は薬の代わりにはならないので医薬品の服用を止めないこと
⑭ダイエットや筋力増強効果を期待させる食品には、特に注意
⑮「健康寿命の延伸(元気で長生き)」の効果を実証されている食品はない

 一般論として高齢者や子どもは健康な成人よりも成分の影響を受け易いことや、摂取する人の体質によって健康被害が発生する場合があることにも注意が必要です。また慢性腎障害でカリウム制限を指示されていた人が、野菜ジュースを摂取して高カリウム血症を発症した事例もあります。健康食品には血糖値や血圧が高めの人を対象にしているものがありますが、グレーゾーンを超えて薬が必要になった人には医師の診断による医薬品の服用が必要であり、健康食品で代用はできません。またダイエットに関して言えば、食べて痩せる食品は身体に何らか悪影響を与えるもの、つまり有害物の可能性が高いです。

【情報】
⑯知っていると思っている健康情報は、本当に(科学的に)正しいものか。
 情報が確かなものであるかを見極めて、摂るかどうか判断すること

 体験談はあくまでも個人の経験で、必ずしも効果を保証するものではありません。また研究対象が実験動物なのか人間なのか、報告の仕方、試験の方法、複数の研究で支持されているかなど、様々なエビデンスを見極める必要があります。

【摂取】
⑰「健康食品」を摂るかどうかの選択はわからない中での選択
⑱摂る際には、何を、いつ、どのくらい摂ったかと、効果や体調を記録
⑲「健康食品」を摂っていて体調が悪くなったときにはまずは摂るのを中止し
 因果関係を考えること

 健康食品の利用者の約4%から健康被害の報告があったというデータがありますが、実態はつかみにくく被害の情報は消費者に伝わりにくくなっています。消費者自身が注意すべき条件や医薬品との相互作用など予め知っておく必要があります。

 健康食品に関しての信頼できる情報源として以下の3つを紹介します。
●食品安全委員会のHP・SNS・紙媒体
●厚生労働省・消費者庁のHP
●国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所のHP
 (こちらは安全性、有効性の情報が満載かつ迅速なのでお勧めです。)

◇まとめ

 健康食品の情報は製造する側、販売する側からの提供が多く、被害の状況は掴みにくく伝わりにくい実態があります。健康食品を摂るかどうかの選択は消費者自身の判断に任されていることから、この19のメッセージが適切な選択をするための助けになることと思います。

 健康でいるためには、健全な食生活、適度な運動、休養や睡眠の3点が基本になることを頭におき、自分の健康に何が役立つのかを考えながら、信頼できる情報をもとに健康食品と付き合っていきましょう。

以上