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2020年PLオンブズ会議報告会

PL裁判はこうあるべきだ!
〜最近のエアコン火災東京高裁判決を解読する〜
開催報告

 消費者運動の力で制定を実現した製造物責任法(PL法)が1995年に施行されて四半世紀が経過しました。しかし、この法律が十分機能して消費者被害の救済に役立ってきたか、というと必ずしもそうではありません。この間の裁判の場では、法施行前と変わらず立証を消費者に求める裁判官も多く、被害者の立証負担の軽減というPL法の趣旨が十分実現されていませんでした。しかし、2020年に入って言い渡された「エアコン火災東京高裁判決」では、PL法の趣旨をそのまま表した判断がなされました。この判決が、広く裁判所の内外に周知され、後に続くPL事件の被害者の救済に活用される必要があります。

 この報告会では、この判決を解説し、広く周知するために開催いたしました。

【日時】2020年10月1日(木)14時00分〜16時00分〔Zoomを活用したオンライン報告会〕

【参加】62人

【内容】

基調講演   ①最近のPL判例の動向   平野裕之さん(慶應義塾大学教授)
    ②エアコン火災事件の体験   津村さん(原告)
パネルディスカッション
 パネリスト   津村さん(原告)
河邉優子さん(代理人弁護士)
白井一さん(技術鑑定人)
平野裕之さん (慶應義塾大学教授)
 コーディネーター   中村雅人さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)
PLオンブズ会議からの提言

【概要】

●「最近のPL判例の動向」について、平野裕之さん(慶應義塾大学教授)より報告がありました。

 PL法(製造物責任法)では、製造物に対して「欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したとき〜」とあり、欠陥責任が生ずることになりました。欠陥ある製品を作って販売することは違法になり、そのポイントは「欠陥の法的評価」と「欠陥の証明」になります。

 過去の判例をみると、欠陥の証明ができない判決や安全を確保するための対策を講じず欠陥があるとされ、製造物責任を認めた判決もあります。欠陥の評価や証明は難しく、優しい判決と厳しい判決、様々な結果がでていると言えます。

●「エアコン火災事件の体験」を津村さん(原告)から報告がありました。

 40年前から悩みのある人の相談に関わり、10年ほど前に願いが叶い、教会の礼拝堂ができました。完成後1年10か月の平成24年10月9日午前2時に火災が発生しました。火災の焼損と消火活動による水損により、建物は全損しました。エアコン火災にあった被害者は、裁判も起こせず泣寝入りしていることを聞き、教会が黙っていたら誰が戦うのかという声なき声を聞き、良き弁護団に出会い、今日まで戦うことができました。この判例が、泣き寝入りの人の助けになり、また判例を伝える役割、使命をいただいたと思っています。

●「パネルディスカッション」は、パネリストとして津村さん(原告)、河邉優子さん(代理人弁護士)、白井一さん(技術鑑定人)、平野裕之さん(慶應義塾大学教授)と、コーディネーターは中村雅人さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)で行いました。

 「PL法制定後、25年間経つが、PL裁判をどう考えるか」「裁判の相談を受けたとき弁護士としてどう思ったか」「技術鑑定人の立場からPL事件はどんな印象か」「今回の東京高裁の判決についてどう位置付けられるか」について、意見交換を行いました。

●PLオンブズ会議からの提言

 「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、経済産業大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出しました。

提 言

 1995年に、消費者運動の力で制定を実現した製造物責任法(PL法)が施行されて四半世紀を経過した。しかし、この法律が消費者被害の救済に役立ってきたか、というと必ずしもそうではなかった。裁判の場では、相変わらずPL法施行前と変わらぬ立証を消費者に求める裁判官も多く、被害者の立証負担の軽減というPL法の趣旨が十分実現されてこなかった。

 しかし、2020年に入って言い渡された判決(東京高等裁判所令和2年2月27日)では、PL法の趣旨をそのまま表し、消費者が主張立証すべき範囲を「社会通念に照らして欠陥の存在(当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)を推認するに足りる諸事実が立証されていれば足り、必ずしも欠陥の部位・態様や技術的原因等の詳細まで立証を要するものではなく、また、因果関係の存在についても、必ずしも当該欠陥に起因する危険事象の発生に至る科学的機序等の詳細まで立証を要するものではないと解するのが相当である。」と明確にし、そのうえで証拠の当てはめ方を具体的に示した判断がなされた。この判決は、広く裁判所の内外に周知され、後に続くPL事件の被害者の救済に活用される必要がある。

 そこで、我々は、この判決を解説し周知するために2020年の新型コロナウィルスが猛威を振るった中でオンラインによる報告集会を開催した。

 PL法25年節目の年に消費者の製品事故被害の減少と救済の徹底を希求して活動することを誓い、本報告集会の提言とする。

2020年10月1日
PLオンブズ会議
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

●参加者感想

  • 当事者である原告のみならず、技術鑑定人、訴訟を担当した弁護士らの実際の声を聴くことができ、訴訟に至るまでのそれぞれの方の想いを受容できる機会となりました。
  • ディスカッションの中で,製品起因性と欠陥の位置付け,その認定方法を巡る判例理論の混乱については,全くそのとおりと感じられ,興味深く伺いました。
  • 製造物責任法は,まだまだ不完全な法制と思われ,今回の提言については,是非,今後の具体的な動きに繋げて,立法運動を展開して頂きたいと考えます。

以上

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