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8月セミナー

情報銀行の仕組みと課題 学習会報告

 ECサイトでの買い物やSNSの利用など、幅広い世代でインターネットを活用する機会が増えてきました。これらを利用するためには一定の個人情報を登録する必要があります。個人情報は、サイトの利用以外にも個人が特定できない情報に加工したうえで、別の用途に活用される場合があり、利用規約などにその旨が書かれていることがあります。

 このようにインターネットを介して蓄積された個人情報が、別の用途として、本人の知らない間にどのように利用されているのか、多くの消費者は不安に思っています。こうした背景の中で、そもそも個人のデータは、本人の関与の下で活用すべきとの考えから、情報銀行の仕組みができたとされています。他方で情報銀行は、個人情報の利活用のための道具にすぎないという意見もあります。私たちは、情報銀行を信用し、そこに個人情報を預けていいのでしょうか。

 (一社)日本IT団体連盟による情報銀行の認定制度が2018年12月よりスタートしました。複数の事業者が認定を受けており、2020年3月には中部電力が地域型情報銀行として実施を始め、愛知県豊田市で市内の小売店や施設などにデータを提供し、ユーザーが預けたデータに基づいた情報やクーポンなどが受け取れる仕組みが始まっています。

 今回の学習会では、情報銀行の仕組みについて学び、消費者にとってのメリットや今後の課題について、意見交換を行いました。

【日 時】8月18日(火)15時00分〜17時00分 〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講 師】森 亮二さん(弁護士)

【参 加】59人

概要(事務局による要約)

■消費者視点から情報銀行に関する留意点

◇情報銀行とは何か

 情報銀行は、個人情報を個人(本人)から預かり、第三者(事業者)に提供するサービスです。その第三者から個人にポイントやサービスなどの利益が還元されます。

 例えば、ダイエットをしたいけど変な事業者に個人情報を渡すのは嫌だと考えた時、情報銀行では安心して個人情報を渡すことができる第三者(フィットネスジムやアプリなど)を仲介してくれます。

 情報銀行はしっかりした第三者を選んでくれるので、個人情報が漏洩したり、知らない間に転々と流通したりしません。また、個人は提供を止めるなど、情報のコントロールができます。

 第三者の提供先事業者にとっても、情報銀行からもらう個人情報は、しっかりした本人同意が取れている情報であるので安心して利用できると言えます。

 情報銀行は、安全な事業者を探して、個人の意志で選べるという「本人の主体性」が強調されていますが、実際は情報の利活用のために提案されたこともあり、ビジネスサイドに引っ張られることがあります。消費者にとっては、消費者保護が図られるバランスの取れたものであってほしいと思います。


出典:「AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめの概要」
(内閣官房IT総合戦略室)

◇提供先からの再提供の例外について

 第三者の提供先からの再提供は原則禁止ですが、例外を認めていることがあります。例外が認められるためには、どんなところに再提供するか、内容(業種や利用目的、提供する個人情報項目など)を情報銀行に報告すること、個人と第三者の提供先との間で契約が締結されること、再提供が本人の利益にもなると考えられる特別の事情があることが条件となっています。ただし、再提供先からの更なる第三者提供は認められていません。

 再提供禁止原則は大きな原則なので、例外の条件についてはさらなる検討が必要であると考えられます。

◇情報委員会に設置されるデータ倫理審査会とは

 個人にとって不利益の生じる利用がされないよう、各情報銀行に設置される「データ倫理審査会」での審査は重要になります。情報銀行からの定期的報告を受け、必要に応じて助言をします。構成員例として、エンジニア、セキュリティ専門家、法律実務家、データ倫理専門家、消費者などとなっています。

 審査の内容は、「個人の同意している提供先の条件について個人の予測できる範囲内で解釈され運用されているか」「個人にとって不利益となる利用がされていないか」「個人情報の利用によるリスクが伝えられているか」などがあります。

 運営の適切性の担保のため、構成員や議事録などは公表されるべきです。

◇消費者に期待されること

 データ利活用により便利で豊かな優しい社会は、消費者にとっても重要で、事業者も消費者も共に目指すものと考えます。

 その中で、情報銀行のデータ倫理審査会や、企業の個人情報の利用についてのアドバイザリーボード(専門家会議など)が設置されることが考えられ、消費者代表の果たす役割は増加し、重要になります。政府の審議会でも、民間の諮問機関でも、「消費者利益に反するものはダメ」と声を上げられるようにするためにも、消費者保護の精神だけでは不十分で、根拠を持って意見するためには仕組みの理解が必須になると考えます。

以上

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