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学習会「消費者契約法の次回改正に向けて 第2弾」 報告

 消費者契約法は2018年の通常国会で第2次改正が行われました。この時は、「消費者の不安をあおる商法」等、消費者トラブルが増加している勧誘行為についての取消権が新設されるなどしましたが、一方で「つけ込み型勧誘に対する取消権」や「平均的損害額の推定規定」などの論点については、次回改正への積み残しとなりました。

 そこで、消費者庁では2019年2月より、有識者をメンバーとする「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」を設け、9月に報告書がまとめられました。この内容についてわかりやすく解説をいただくとともに、意見交換を行いました。

【日 時】 10月18日(金)13時15分〜15時15分

【会 場】 主婦会館プラザエフ 5階 会議室

【講 師】 志部 淳之介さん(消費者庁消費者制度課)

【参 加】 31人

概要(事務局による要約)

■消費者庁「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」の報告書について

 消費者契約法は平成30年に法改正されたのですが、附帯決議において、いくつかの項目について早急に必要な措置を講ずべきとされました。その主な内容は、①「つけ込み型」勧誘、②キャンセル料の規定の見直し、③約款等の契約条項の事前開示と情報提供の考慮要件についてです。

 消費者庁では、民法、行動経済学、経済学の研究者などで構成された研究会(2〜9月)を開催し、多角的な視点(社会経済情勢の変化への対応、法制的・技術的な観点や行動経済学等の視点)で検討しました。9月にとりまとめ、10月にパブリックコメントを行い、現在はいただいた意見内容を精査しています。研究会が出した取りまとめが、このまま条文になるわけではありません。この後、関係者の意見も踏まえて検討をすすめる予定になっています。

第1.いわゆる「つけ込み型」勧誘について

 平成30年改正では、不安をあおる告知等の「つけ込み型」勧誘の取消権規定を創設しましたが、合理的判断ができない事情を不当に利用した勧誘による被害は、高齢者や若者等で多様化しています。今回は、人間の合理性には限界があるという行動経済学の視点も含めて検討されました。

 2018年11月からPIO-NETに「つけ込み」のキーワードを入れて分類を行いました。また、高齢者は、判断力低下した事案での相談が60%程度あり、過量と言えなくても必要ではないのに買ってしまう傾向があります。令和7年には認知症患者は 700 万人前後、65 歳以上の5人に1人となるとの推計もあり、全人口の7%になります。高齢者の一人暮らしは急速に増加していますが、令和2年には約700万人(世帯)に達すると推計されています。

 若年者は浅慮(深く考えずに契約)、幻惑(喜ばされて契約)など、深く考えずに契約してしまうことが40%程度あります。若年者の特徴としては、知識・経験が乏しく契約内容を熟慮して契約を行うことが難しいほか、人からの誘いを断るという判断がしにくい点が挙げられます。資力が乏しいことから、将来に向けての仕事に結び付く誘いなどにも乗ってしまいがちであることがわかってきています。

 研究会まとめとして以下の考え方が示されました。
【Ⅰ】 消費者の判断力に着目した規定
【Ⅱ】 「浅慮」、「幻惑」という心理状態に着目した規定
【Ⅲ】 困惑類型(第4条第3項)の包括的規定

第2.「平均的な損害の額」の立証負担の軽減

 キャンセル料の規定は現在もあり、高額すぎると無効になります。高額すぎるとは、事業者の平均的損害の額を超えてはいけないことになっています。その立証は消費者側が行うとされていますが、事業者の内部資料がないと難しいです。どうやって証明するかの手立てを考えることが課題です。

 以下の考え方が示されました。
【Ⅰ】推定規定
【Ⅱ】資料提出を促す規定

第3.契約条項の事前開示

 改正民法の定型約款の規定では、契約条項の事前開示の義務がないことから、消費者が契約条項を事前に認識できるようにする環境を整備することが必要という考え方が示されました。

第4.消費者に対する情報提供

 様々な消費者のトラブルが生じないよう、高齢者・若年者等、個々の消費者の事情に応じた情報提供が必要です。現行法でも知識・経験に応じた情報提供は必要とされていますが、年齢や財産や生活の状況などに応じた情報提供の規定を作ることが附帯決議に示された課題になっています。また、解約料の情報提供は重要ですが、契約をしている時に解約のことを言われても消費者は理解しづらいことが多いかと思います。契約後も含めて適切な時期の情報提供を目指すための規定整備が必要になります。

以上

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