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「インターネット上の海賊版対策について」学習会開催報告

 インターネット上の海賊版対策は、2018年、知的財産戦略本部の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」にて検討されたブロッキングという手法が大きな議論となり、全国消団連も同年8月に「海賊版サイトへのブロッキングを可能にする法制度整備に反対する意見」を提出しました。ブロッキングについては検討会議での議論も踏まえて「他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討」とされましたが、その後検討されたダウンロード違法化やリーチサイト対策を含む著作権法改正案も大きな議論となり、著作権法改正案の本年通常国会への法案提出は見送りとされました。

 侵害コンテンツのダウンロード違法化については、文化庁が「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの課題を両立した案の作成に向けて、9月に意見募集を行いました。全国消団連ではこれにあわせて、インターネット上の海賊版対策の論点と課題について学習・意見交換を行いました。

 【日 時】10月17日(木)18時00分〜20時00分

 【会 場】主婦会館プラザエフ 5階会議室

 【講 師】上沼 紫野さん(弁護士)

 【参 加】14人

概要(事務局による要約)

■海賊版サイト対策と違法ダウンロード

 著作権には経済的権利(お金をもらったら売ってもいい権利)があり、違法ダウンロード問題はこの中の複製権にかかわる問題になります。

 特許、商標などの知的財産権は、「業」として行う場合が権利侵害となります。一方、著作権は個人の行為(ノートに書き写すなど)であっても権利侵害となりうるので、私的生活領域への介入度が高く、誰でも違法状態となってしまいます。ただ、いくつかの権利制限規定(権利の及ばない範囲を定める規定)があるので、これまであまり問題となりませんでした。

 インターネットサイトについては、著作物のアップロードはいまでも著作権侵害ですが、海外に対しては法が及ばないこともあり対策が取りにくいのが現状です。

 アップロードした情報にリンクしたリーチサイトは裁判例だと非侵害ですが、ほう助になる可能性はあります。しかしほう助は不法行為ですが、著作権侵害行為そのものではないため、差し止めはできないとの解釈がされてきました。

 利用者がアクセスするCDN(content delivery network)は「キャッシュ(すぐ消えるコピー)の例外」があり非侵害になります(ほう助の可能性はあり)。「漫画村」に関しては、アップロードとリーチサイトが一体化した状態だから逮捕が可能でした。

 違法にアップロードされた情報への対策として政府が検討対象としていたのは、

①リーチサイト規制

②ブロッキング規制(「見に行く人が悪い」という考えから、インターネットへのアクセスを規制する)

③ダウンロード違法化(本来私的使用目的の複製は違法ではないが、違法にアップロードされた著作物とわかってダウンロードしたら違法とする考え方)

ですが、今回検討されているのはリーチサイト規制、ダウンロード違法化の対象拡大の2点です。

 このうちリーチサイト規制については7年間の検討を経て、リーチサイトの定義をきちんとすることで、インターネットの利用に影響の少ない形での規制案がほぼできています。

 ダウンロード違法化については、一部について、2008年(映画の盗撮)、2010年(違法な録音、録画のダウンロード違法化、ただし刑罰なし)、2012年(違法ダウンロード刑罰化、ただし対象は有償の著作物に限定)の規制がかかっています。さらに違法化の対象を録音・録画以外に広げるのが、今回の法改正です。これにより対象がすべての著作物に広がりますが、文化庁は知らなかった場合や、法律の解釈を誤った場合など違法とならない場合を明確化するので問題ない、との考えです。

 今回の意見募集は選択方式になっています。

ダウンロード違法化について、全国消団連は意見を提出しました。(10月29日)

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