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国際消費者機構 サミット2019 参加報告

 国際消費者機構(Consumers International、以下CI)は、1960年に結成された、英国ロンドンに本部を置く消費者利益のために活動する団体です。CIには世界100か国以上から200を超える消費者団体が加盟しており、全国消団連も正会員です。

 2019年4月29日〜5月2日の日程でCIサミット2019、並びにCI総会、CIアジア・太平洋地域会議、サイドイベント等がポルトガルで開催され、全国消団連事務局長 浦郷由季と通訳として日本生協連国際部 鶴田健氏が参加しました。その概要について報告します。

サミットで話し合われた内容を描いたグラフィックレコーディング

〜大会プログラムと総会について〜

 4年に一度開催されるCIの世界大会、今回はポルトガルの首都リスボンから車で30分ほどの海岸沿いにある都市エストリルで開催されました。テーマは『Consumers at the Heart of Digital Innovation:デジタルイノベーションの中心に消費者を』、世界80か国以上から消費者団体、政府、企業、NPOなどの代表460名以上が参加し、急速に進展するデジタル社会、グローバル社会の中で、デジタル製品やサービスが消費者に与える重要な問題について課題を共有しました。

 併せてCI総会では活動報告、次期計画、新会長及び評議員の承認がされました。

プログラム

4月29日
≪サイドイベント≫
午前
オーストラリア消費者連盟主催「ユニットプライスの必要性」 他4イベント
午後
IKEA基金主催「低所得世帯のクリーンで再生可能なエネルギー使用へのプロジェクト」

他3イベント

夕刻
ウェルカムイベント
4月30日
≪サミット1日目≫
午前
開会式「どのようにして、消費者をデジタル革命の中心にすることができるか」
全体講演1「未来のデジタル経済で、消費者の選択はどのようなものになるだろうか」
分散会1「データモビリティサンドボックス」 2「破壊する選択」 3「Clicks and Mortar」
4「急速な変化に対応した規制」 全体講演2「AI-アクセシビリティと公平性」
午後
全体講演「再創造されるデータ」 分散会1「デジタルの遊び場が来る時代」
2「プライバシーを誰が守るのか」 3「未来の銀行」 4「持続可能性はまだ選択肢か」
5月1日
≪サミット2日目≫
午前
オープニングセッション「消費者のIoTにおけるコネクションとプロテクション」
分散会1「IoTセキュリティのガイドライン」 2「AIは消費者にとって敵なのか味方なのか」
3「オンライン詐欺の一掃」
午後
全体講演「アクセスにどれだけのコストをかけるのか」
分散会1「クロスボーダーeコマース、信頼の構築のために」 2「すべての消費者の半分は?」
3「モバイル端末利用の消費者のメリット」 閉会式「未来へのインスピレーション」
夕刻
アジア太平洋地域会議
5月2日
≪CI総会≫
午前
開会挨拶CI会長のBart Combée
基調講演「国連消費者保護ガイドラインと消費者保護に立ちはだかる主要な課題」
メインセッション「消費者保護の主要な課題」 キーセッション「未来の消費者団体の資金調達」
分散会1「金融サービス―消費者のリテラシー促進」 2「持続可能な消費の選択」
キーセッション「脆弱な消費者の保護」
分散会3「持続可能な食糧システム」 4「国際電子商取引交渉リスクとチャンス」
午後
キーセッション「製品安全の効果的システム」
分散会1「健康的な食事へのアクセス」 2「集団的救済の進展」
CI総会

CI総会(5月2日)

(1)開会挨拶および基調講演

○開会挨拶は会長のBart Combée氏が登壇し、消費者団体の影響力を強めていくことの重要性と、デジタル経済が消費者に与える影響について重要性を強調し、CIがこれらを検討するうえで最適の場所であるということを述べました。


評議員選挙の投票

○基調講演はUNCTADのISABELLE DURANT副事務局長による「国連消費者保護ガイドライン改定と消費者保護の課題」というテーマの講演でした。私たちは消費者のためだけでなく、あらゆる市民のために働いていると述べて、変化の速度が極めて早いデジタル革新のなかで消費者の保護を徹底するためには、あらゆるステークホルダーがWinWinの関係で協力していくことが大事であるとのこと。消費者団体は、デジタル時代においてリソース不足に悩まされており、国際的なスタンダードを策定することは難しい。そんななかで2015年に改定されたガイドラインは大変重要な意味を持つ。UNCTADは、あらゆる消費者問題に関する情報が集まる場所であり、消費者団体の願いを実現することを使命としたタスクフォースがあり、消費者の願いを実現するために尽力している。私たちはみな同じボートに乗っており、世界・国・ローカルという様々なレベルであらゆる組織が協力していくことが大事であるとして、講演を締めました。

○その後のメインセッション「消費者保護の主要な課題」では、二日間のサミットに関して振り返りを含めたディスカッションが行われました。

(2)CI総会

○総会においてはCIの正会員、1団体につき1票を有し、議決に参加できます。全国消団連も正会員として議決に臨みました。当日は実参加63団体、委任状提出が17団体でした。(今回、日本のCI正会員4団体のうち、参加したのは全国消団連のみでした)


新会長Marimuthu Nadason氏が選出される

○会長のBart Combée氏より、前回総会(2015年ブラジル)以降のCIの活動についてと今後の活動計画についての報告がありました。

○Bart Combée会長の退任に伴う新会長候補として、推薦委員会よりマレーシア消費者協会(FOMCA)連盟会長のMarimuthu Nadason氏が推薦され、全会一致で承認されました。また、副会長は引き続き、香港消費者委員会の最高経営責任者(CEO)Gilly Wong氏となりました。

○評議員選挙は15人の定員のところ、23人が立候補。選挙は投票用紙に記載された候補者一覧の中から最大13人までを選ぶという方式で行われ、総会開会前に投票が行われました。

○選ばれた評議員は以下の通り
Crisologo Luis Caceres Valle(ペルー)Alan Kirkland(オーストラリア)
Saroja Sundaram(インド)Dmitriy Yanin(ロシア)Gerjan Huis in't Veld(オランダ)
Monye Felicia Nwanne(ナイジェリア)Rosemary Siyachitema(ジンバブエ)
Marta L. Tellado(アメリカ)Youkyung Huh(韓国)Anja Philip(デンマーク)
Gilly Wong(中国・香港)Yasir Merghani Abdelrahman Suliman(スーダン)
Ivo Mechels(ベルギー)Klaus Müller(ドイツ)Caroline Normand(イギリス)

〜CIアジア・太平洋地域会議と参加セッションについて〜
【CIアジア・太平洋地域会議】

5月1日 夕刻

○Bart Combée会長から、Amanda Long前事務局長の後任として、今年着任したHelena Leurent事務局長が紹介されました。2人よりCIに何を期待したいか、やってほしいこと、また共有したい問題意識、地域で連携するためにすべきことなど提起され、ざっくばらんに話し合いが行われました。

○インドからは、アジア・太平洋地域と言ってもひとくくりにできない。それぞれの国の事情がある。インド中心に南アジアのくくりで共有の場が作れないかという意見が出されました。またほかの国からは、今回はAI・IoTなどデジタルがテーマだったが、食や環境のテーマも取り上げてほしい。自分たちの国ではデジタルよりこちらのテーマのほうが先だという意見もありました。

○アジア・太平洋地域のネットワーカーは引き続きマレーシアのIndrani氏。

【参加したセッションから】

○AI - accessibility and fairness (AI‐アクセスと公平性)

どのようにAI利用者(消費者)の生活を改善し、オンラインとオフラインのサービスへのより大きなアクセスを提供することで、機会と公平な結果を作り出しているか。

モデレータ:
オーストラリア消費者団体CHOICE CEO  Alan Kirkland
スピーカー:
Google AIディレクター Eve Andersson
消費者団体DECOProteste 広報部長 Marco Pierani
イプソス 行動科学グローバルヘッド Colin Strong

  • 高齢者や体の不自由な人のために、音声に反応して様々応えたり、いろいろやってくれるAI、目の不自由な人が、スマホを手に持って向けるとそれが何か教えてくれるAIの可能性。
  • しかし、まだAIが判断できないものもたくさんある。

○Is sustainability still a choice? (持続可能性はまだ選択肢か?)

消費者を支援するためのデジタルツールを中心とした持続可能な消費を奨励するための取り組みを検証する。

モデレータ:
国際消費者機構Sustainable Consumption Manager Naomi Scott-Mearns
スピーカー:
ユーロコンシュマーズ Head Advocacy and Enforcement Els Bruggeman
Evocco CTO Hugh Weldon
Akatu研究所 CEO Helio Mattar

  • 商品の情報を消費者はよく知らない、その商品がどこでどのように作られて、どのように運ばれてきたのかが分かるアプリを開発している。
  • 教育が大事、消費者リテラシーをどのように消費者に伝えていくか。

○Connection and Protection in the consumer IoT(消費者のIoT、接続と保護)

スマート・バイ・デフォルトデバイスが主流になってきているが、ほとんどはまだ最も基本的なデータセキュリティ規定を欠いている。本当にスマート・バイ・デフォルトデバイスで世界の接続に保護を構築することができるか。

モデレータ:
国際消費者機構 事務局長 Helena Leurent
スピーカー:
インターネット協会 CEO Andrew Sullivan
ドイツ連邦司法消費者保護省 長官 Rita Hagl-Kehl
コンシューマー・レポート  Director  Justin Brookman
Mozilla 副社長 Ashley Boyd
  • 消費者はIoT、インターネットがものにつながることを便利に使っている。しかし、信用して(信頼して)使っているわけではない。調査では6割以上が信用していない。信頼を得るためには、リスクから守るための何らかの規制が世界的に必要なのではないか。

○Access at any cost?(アクセスにどれだけのコストをかけるのか)

モデレータ:
国連貿易開発会議 競争消費者政策部長 Teresa Moreira
スピーカー:
ワールド・ワイド・ウェブ財団 Senior Policy Manager Nanjira Sambuli
ウィキメディア Free Knowledge Ambassador Dimitar Dimitrov
CIPESA プログラムマネージャー Lillian Nalwoga
  • インターネットアクセスのためにどれだけコストをかけるのか? 貧しい国の人たちはインターネットを手に入れるために、権利を侵害されているのではないか。

○Half of all consumers(すべての消費者の半分は?)

デジタル技術革新の設計と配信はすべての人のニーズが中心、女性の声が大きくなってきている。

モデレータ:
ジンバブエの消費者委員会 事務局長 Rosemary Siyachitema
スピーカー:
インターネット協会 副社長 Joyce Dogniez
Girl Effect Technical Director Kecia Bertermann
Standpoint  CEO  Anat Katz-Arotchas
コンシューマー・レポート  Program Manager  Robert Richter

  • 調査によると男性はあらゆるアプリを使い、女性は一定のアプリを使う傾向がある。しかし、そもそもアプリの設計が男性向きなのではないか。あらゆるニーズに応える、でも知らずに性差が存在するのではないか。

○risks & opportunities of the international e-commerce talks for consumer rights

(国際電子商取引交渉リスクとチャンス)

貿易取引を消費者にとってどのように機能させるのか。電子商取引に関する国際交渉のリスクと機会について説明し、すべての取引に関する消費者の章のアイデアを紹介する。

スピーカー:
BEUC(欧州消費者機構)シニア貿易政策官 Lea Auffret
国際消費者機構 アドボカシーディレクター Justin Macmullan
国際消費者機構 デジタルプロジェクトマネージャー Lailah Nesbitt-Ahmed

  • 交渉により各国の現行法よりも優先される規則を確立すると、プライバシー規制に関するEU一般指令のような既存の法を損なう危険性がある。
  • 消費者団体は、各国がWTOに提出する提案を透明化するよう自国政府に要請すれば、各国は市民社会からの精査や提案を受け入れることができる。

このセッションがWTOの消費者団体との対話につながるものとなった。

〜サイドイベントについて〜

 サミット初日には様々な団体が主催するサイドイベントが開催され、2つのイベントに参加しました。そのうち、オーストラリア消費者連盟が主催するユニットプライスに関するミーティングでは報告者として参加し、日本のユニットプライスの現状と今後について報告をしました。

【サイドイベント】

○ユニットプライスの必要性   主催 オーストラリア消費者連盟


(オーストラリア消費者連盟のIan Jarratt氏)

 オーストラリア消費者連盟のIan Jarratt氏より、ユニットプライス(パッケージ製品の単位価格表示)とは何か、その用途とメリット、歴史、問題点、ISO 21041(単位価格に関するガイダンス)の説明があり、日本・ニュージーランド・オーストラリアの事例報告がされました。

 日本国内のユニットプライスに関しては、ISO・COPOLCO「ユニットプライス標準化国際委員会」委員を務める親子消費者教育サポートセンターの加藤絵美さんがまとめた報告を、通訳として同行した日本生協連の鶴田健氏が報告をしました。

 報告の内容の概要は以下の通りです。

 日本では1970年代半ば、多くの消費者団体による単位価格表示制度の必要性の訴えにより、法制化こそ見送られたが、自治体単位での制度化が進んだ。しかし時間の経過とともに地方自治体の取り組みが薄れ、近年では条例の廃止も見られる(現在、単位価格表示制度がある自治体は都道府県22地域、政令指定都市9地域)。しかし、昨年ユニットプライスのISO規格ができたことから全国消団連では単位価格表示制度のJIS化を求める意見書を今年1月に経済産業大臣に提出、これを機にJIS規格策定の作業委員会が立ち上がった。


(鶴田氏による日本のプレゼンテーション)

 これに先立ち主婦連合会が行なったユニットプライスに関する消費者意識調査では、ユニットプライス(単位価格表示)の言葉を知らない人は全体の65%だが、ユニットプライスを見たことはある人は59%、記載があれば必ず見るという人が全体の59%だった。そしてユニットプライスの表示が充実したら活用したいという人が81%にのぼった。

 現在の国内単位価格表示は、対象店舗や対象商品、単位が地域によって異なり、消費者にとって有効に活用できるレベルではないが、今後JIS規格制定により全国統一で表示制度が導入されれば消費者が有効に活用できると考える。

○低所得者世帯のクリーンエネルギー利用への切替え行動モデルの開発 主催 イケア財団

 CIがイケア財団とともに取り組んでいるプロジェクトで、子どもたちが安全で健康的な家庭で育てられることを目的としています。


(床に広げられたターゲットボードゲーム)

 例えば低所得者世帯ではランプを使っていたり、家の中で火を起こして調理することが行われ、換気が十分でなく煙が女性や子どもの健康に悪影響を与えている、また、きれいな水を手に入れることができない。これらの悪影響について知ることや、安全でクリーンなエネルギー(製品)と危険な製品を知ることが切替えの行動につながる。特に、18歳以下の子どもたちへの教育に力を入れ、消費者としての権利を教えている。子供が変わると大人も変わる。とのことです。

 2017年から3年かけてインドのスラム街など2つの地域とインドネシアにおいて人形劇、街頭演劇、クイズ、ターゲットボードゲームなどを使って取り組み、成果を上げているとの報告でした。