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インターネット取引の消費者トラブルと課題 報告

 インターネット上のショッピングモールやマッチングサイト等、プラットフォームを介した取引が拡大しています。取引は、BtoC型だけではなく、CtoC型のものもあり、消費者が容易に取引に参加することが可能になっています。さらに、評価・レビュー・レーティングといった仕組みが、重要な取引の決定要因の1つとなっている点にも特徴があります。

 取引の素人である「消費者」が、安心して取引を利用することができるよう、必要なルール、仕組みについて調査・検討が必要であるとして、内閣府消費者委員会で「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会」が開催され、3月に報告書がまとまりました。

 今回は、専門調査会委員も務めた弁護士の森亮二さんから、オンラインプラットフォームの現状と課題として、基礎的な知識と専門調査会の報告書の概要についてご報告いただきました。

【日時】2019年5月28日(火)14時00分〜16時00分

【会場】主婦会館プラザエフ 5階 会議室

【参加】37人

【講師】森 亮二さん
(オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会委員、弁護士、国立情報学研究所客員教授)

【スケジュール】

14:00   開会
14:05   講演
「プラットフォームに関する法律問題」
「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書」
15:35   質疑応答
16:00   閉会

【主な内容】

■プラットフォームに関する法律問題

「プラットフォーム」とは何か

 プラットフォームは、情報や商品・サービスの流通の基盤・環境を提供するウェブサイトのことです。ウェブサイトを運営する事業者をプラットフォーマーといいます。プラットフォーマー自身は、提供者(店舗、発信者)と提供される人(消費者、閲覧者)の間の橋渡しをするだけです。

 「マッチング型プラットフォーム」の典型は、複数の店舗が集合したウェブサイト(モール)です。参加提供者(出店する店舗)は簡単に電子商取引に参入でき、参加利用者は関心ある商品を容易に見つけ出すことができます。購入契約は参加提供者と参加利用者で締結されます。モールと店舗の間、モールとモール利用者の間ではプラットフォーム利用契約が締結されます。シェアリングエコノミーはマッチング型のCtoCプラットフォームです。

 「非マッチング型プラットフォーム」は、掲示板やSNSなどのソーシャルメディアです。消費者である個人が互いに情報を提供し、消費することから『CGM(Consumer Generated Media)』とも呼ばれています。参加提供者は日記を書いたり動画を投稿したりする情報発信者で、閲覧者(参加利用者)は関心ある情報を検索などで簡単に見つけ出すことができます。表のサービス(SNS)と裏のマネタイズ(広告)に分かれていて、表は通常無償で提供されます。利用者(発信者と閲覧者)とソーシャルメディア運営事業者との間で利用契約が締結される場合もあります。

プラットフォーマーの法的責任

 マッチング型に関しては、2008年にオークション詐欺の裁判があり、プラットフォーマーの責任に関して注目を集めました。2014年頃から民泊、ライドシュアの規制緩和の議論が活発になりました。2016年に初めて国としてプラットフォーマーに関する報告、経産省「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書」が出ました。2018年には総務省・経産省・公正取引委員会の三省合同の「デジタルプラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」の中間論点整理が公表されました。2019年4月には消費者委員会「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書」が出ました。

 非マッチング型では、2000年頃から匿名掲示板の誹謗中傷の関する多数の訴訟があり、社会問題になりました。2016年にDeNAキュレーションサイトの問題、2018年に個人情報保護委員会によるフェイスブック社に対しての行政指導がありました。2019年に総務省の「プラットフォームサービスに関する研究会における中間報告書」が公表されました。

○非マッチング型 広報とプライバシー、個人情報保護について

 フェイスブックの「個人情報の保護に関する法律に基づく指導」では、「いいね!」ボタンが設置されているウェブサイトを閲覧した場合、ボタンを押さなくても情報がフェイスブック社に送信されてしまう事案で、個人情報保護委員会が行政指導を行いました。

 一般にウェブサイトを閲覧する時に、サーバからブラウザにクッキー(cookie識別子)が送られてきます。クッキーにはシリアル番号があり、サーバはブラウザを区別できることになります。これを使い、広告事業者サーバはユーザーの閲覧履歴(ウェブサイトを訪れた日時やアクセス先など)を収集しています。フェイスブックの場合は、ユーザー登録情報(名前、所属、性別、生年月日、学歴、趣味など)を持っているので、ブラウザのアクセス履歴と連動ができ、その結果、個人情報の取得の適正さの問題になりました。

○マッチング型、非マッチング型 独占禁止法

 BtoBの問題と考えられてきた独占禁止法ですが、優越的地位の濫用はBtoCにも適用できます。特に非マッチング型について消費者の個人情報には経済的価値があるため、その提供は有償の取引として優越的地位の濫用を適用する方向性が示されています。自民党の競争政策調査会では、優越的地位の濫用をBtoCに適用する考え方を本年夏までに整理すべきとしています。これは、消費者保護の新たなツールとなりうるものなので要注意です。

■「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書」概要について

 プラットフォームが介在する取引に係る規定として、特定商取引法では、CtoC取引で個人が販売業者に該当する場合の判断基準(どういう場合に事業者になるのかなど)や、個人が販売業者に概要する場合のプライバシー保護(氏名、住所、電話番号等の表示義務など)が論点であることが確認されました。また消費者契約法としても、CtoC取引で何が消費者契約にあたるかの判断基準についても同様です。

 提言では、プラットフォーム事業者の役割、CtoC取引における消費者としてのプラットフォーム利用者の役割、行政機関、国民生活センター、消費生活センター、消費者団体の役割などが提案されました。

 今後の課題として、専門調査会ではモール、オークション、フリマなどのマッチング型にフォーカスしており、非マッチング型の検討が不十分でした。プラットフォームに関する消費者の権利侵害は非マッチング型にこそ多くあり、フェイスブックのユーザー情報の取扱いも国際的に見て大きな問題になっています。日本では消費者からの強い声もないからなのか、非マッチング型に関する問題提起が弱いのですが、消費者保護の観点からも検討をすすめる必要があると思います。

以上

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