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2019年度定時総会 記念講演

ここでしか聞けない!消費者委員会のはなし 報告

 内閣府消費者委員会は、各種の消費者問題について、自ら調査・審議を行い、消費者行政全般に対しての意見表明などを行っています。

 消費者委員会の2019 年度重点課題は、「ジャパンライフ問題を踏まえた預託商法の再発防止策」「消費者法分野におけるルール形成のあり方」「プラットフォーム取引における消費者保護」「人口減少の中での地方消費者行政のあり方」「消費者庁・消費者委員会10 周年記念事業」などです。

 これらは全国消団連の重点課題とも通ずるものでもあり、消費者被害の防止など暮らしに直結するテーマでもあります。その内容について消費者委員会委員長代理の池本誠司弁護士に講演をいただくとともに、意見交換を行いました。

【日時】2019年5月17日(金)16時30分〜18時00分

【会場】主婦会館プラザエフ 5階会議室

【参加】51人

【講師】池本誠司さん (消費者委員会委員長代理・弁護士)

【スケジュール】

16:30   開会
16:35   講演「第5次消費者委員会の主な意見表明(2018年9月以降)と消費者団体への期待」
17:35   質疑応答
18:00   閉会

概要(事務局による要約)

■「第5次消費者委員会の主な意見表明(2018年9月以降)と消費者団体への期待」

1.第4次消費者基本計画の策定

 次期消費者基本計画が今年度中に策定される予定ですが、消費者庁は10年間で何を獲得し何が出来なかったかの振り返りをするとともに、特に「消費者団体等の育成・支援、連携・協働」の項目が重要と考えます。これまで消費者庁は適格消費者団体の設立支援はやってきましたが、その基盤となる消費者団体は高齢化など先細りしている状況で、消費者団体を活性化するために連携や支援を強化すべきです。

 今後、消費者庁が素案を作成し、消費者委員会でも意見を出し、基本計画を策定します。消費者団体としても4〜5年先を見据えて幅広く意見を提出してほしいです。

2.消費者基本計画工程表の改訂

 消費者委員会として毎年意見を出しています。消費者団体としても毎年意見を出しているかと思いますが、意見を出す時には消費者委員会にも参考送付をしてほしいです。委員会に届いた意見書は委員に配信され、課題認識について共有することができます。また、消費者委員会の調査やヒアリングなどの参考にする場合もあります。

3.公益通報者保護法の見直し

 昨年12月に消費者委員会の公益通報者保護専門調査会で報告書を出していますが、専門調査会では業界側からの強い反対意見があり、十分にまとまっていない論点もあります。委員意見が一致した論点は「すべきである」とし、方向性は一致したが具体的要件が詰め切れていない論点は「法制的・法技術的な観点から整理」となっています。

 たとえば、「通報者の範囲」では、退職者や役員も保護対象に加えるべきとの議論の中で「退職者にとって不利益はない」との一部反論もありましたが、損害賠償で訴えられることもあるということで「退職者も加えるべき」とまとまったのですが、その期間制限を設けるか否かで「法制的・法技術的観点から整理」となっています。

 また「通報体制の整備」では、民間事業者に内部通報窓口を設置すべき(ただし300人以下事業者については努力義務)となりましたが、窓口体制のあり方について議論になりました。「不利益取り扱いを防ぐためにも窓口担当者に守秘義務を課すことが必要」という意見もありましたが、「社内で調査をして違法行為を是正しないといけないのに内部で共有することもできないのは問題」との反対意見もありました。そこで、担当者個人の守秘義務ではないが、通報者が特定されないように情報の共有は最小限度に留める、不利益取扱いを禁止する、窓口体制として一定の義務は事業者の義務とする、ということで、かろうじて一致をしました。

 公益通報者保護法は制定時に5年後見直し条項が設けられましたが、見直しがないまま10年以上経過しています。今後は、専門調査会で意見が一致した事項を蒸し返すことなく、法制的・法技術的整理を速やかに行って法改正を進めるようにとの意見を出し、改正の流れを作る必要があるのではないかと思います。

4.オンラインプラットフォーム取引におけるプラットフォーム事業者の役割

 ショッピングモールサイトやオークションサイトなどプラットフォームによる取引が拡大している中、苦情相談も増えています。プラットフォーム事業者は取引当事者ではなく場所を提供しているだけであるとの姿勢がありますが、取引の場として活性化することで事業者は利益を得ているので、一定の管理責任はあるはずです。消費者委員会では専門調査会で1年間議論をして、本年4月に報告書を出しました。

 たとえば、プラットフォーム事業者の役割としてサービス提供者に係る審査(偽物や違法なものの出店や出品に対して注意や勧告)を実施すべきではないか、CtoC(個人間)取引の場合、氏名・住所を公表していませんが、プラットフォーム事業者は把握するべきではないか、など9項目の論点ごとにまとめています。しかし、プラットフォーム事業者が果たす役割の実効性の確保については、法規制、自主規制、ガイドライン、認証制度などの指摘にとどまり、何が法規制事項かは詰め切れませんでした。

 専門調査会ではヒアリングや海外法制度も調査し検討しましたが、まずは消費者保護の観点で整理をしたというところで、規制の手法については、被害実態と事業者の自主的対応の実情を踏まえて今後の課題となりました。

5.消費者法分野におけるルール形成のあり方

 消費者委員会の委員5人でワーキング会議をしています。設置のきっかけは、消費者契約法見直しの審議において、事業者委員から「提案する条文が抽象的で賛成できない」などの意見が繰り返されたことから、行政規制と民事ルールについて、法規制と自主規制の関係はどうなのかを論議をしようとしたのですが、実際にはより広範囲にルール形成のあり方を検討しました。ルールの実効性確保のための提言として、事業者のコンプライアンス体制の整備の有無を行政処分にあたり評価する仕組みづくり、企業の中に消費者問題の専門家を育成・配置すること、消費者・消費者団体の主体的な行動を行政が育成・支援・連携すること、適格消費者団体等による不当な取引行為の是正・排除と財政支援の具体的方策、行政による悪質商法への対処の徹底(違法収益はく奪等の措置)など、を課題として挙げました。

 提言を出したからと言って自然に動くわけではありません。この提言を具体化した意見を消費者団体などが次々に提出することで、各省庁の検討を促すことにつながります。

6.商品預託取引被害に対する対策の在り方

 預託商法、現物まがい商法被害(ジャパンライフ事件など)への対策のあり方について、消費者委員会内で調査検討をしています。ジャパンライフに対して消費者庁は1年間に4回の行政処分を行いましたが、その後も会社は1年以上にわたり存続し、破産決定後は財産はほとんど残っていませんでした。現状では、事業者に業務停止命令を出しても、既存の顧客にとっては引き続き配当を払ってほしいこともあり、また被害者でありたくないとの気持ちもあり、被害を名乗り出る人が多くありません。警察が対応するには被害者調書を集めないといけないので、破綻するまで立件ができないのです。

 こうした現状に対し、まずは典型的な現物まがい商法を罰則と行政規制によって早期に取り締まることができる方策を検討していますので、まとめが出たら、消費者団体からも意見を出して世論形成をしてほしいです。

7.消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会

 平成29年の「まち・ひと・しごと創生本部」における中央省庁の地方移転に関する議論から、徳島県に、実証に基づいた政策の分析・研究機能をベースとした消費者行政の発展・創造の拠点として「消費者行政新未来創造オフィス」が置かれました。ただし、創生本部の決定で、これまで行ってきた迅速な対応を要する業務、対外調整プロセスが重要な業務(国会対応、危機管理、法執行、司令塔機能、制度整備等)は引き続き東京で行うこととされていますから、消費者庁本庁の移転に向けたオフィスの活動ではないと整理しました。

 消費者委員会専門調査会では、消費者行政新未来創造オフィス(徳島)でこれまで行われた①消費者庁の各プロジェクト、②国民生活センターの研修事業・商品テスト事業、③オフィスでの働き方改革に関する取り組みを検証対象としました。消費者教育の高校での取り組みや見守りネットワークの設置、公益通報窓口の設置など、徳島県内で進んだ取り組みはありますが、これを全国に展開することがプロジェクトの目的であり、まだそこには至っていません。国民生活センターの研修事業は課題が多く、受講者の充足率は相模原では8割超である一方、交通の便が悪い徳島では5割前後です。また商品テスト事業は、給湯器の転倒事故テストなどは徳島の家庭訪問調査は実施できましたが、施設・設備の関係でテスト自体は相模原で行ったというのが実態です。

8.地方消費者行政の充実

 地方消費者行政は、この10年で交付金が注がれ、消費生活センターの設置が進むなど前進しましたが、消費者庁の地方消費者行政強化作戦は目標未達成のものもあり、道半ばです。しかし、こうした状態の中で、平成30年度に推進交付金が強化交付金に代わり、補助率も1/2になりました。自治体の自主財源確保は進んでいません。本当にこれでよいのかということで、消費者委員会では専門調査会を立ち上げる(再開する)予定になっています(6月24日開始)。

 主な課題(私見)としては、交付金による財政支援の充実と恒久的な財政措置の検討、自治体の自主財源確保に向けた施策、消費生活相談員の人材確保と資質の向上に向けた施策、消費者行政職員の人材確保と資質の向上に向けた施策、自治体における消費者行政の位置づけの見直し、です。また、消費者行政の担い手の育成も課題で、人口減少社会において消費者行政機能のフル装備はあきらめて広域連携での対応を検討すべきとの考え方も総務省から示されていますが、それよりも官民連携を進めることが重要であり、その観点からも消費者団体の育成の取り組みの再構築が必要です。

 消費者庁でも5月から「地方消費者行政強化作戦2020策定に関する懇談会」を開始しますが、そのねらいは次期強化作戦の獲得目標を整理することに加えて、次年度予算取りのための根拠(財務省交渉の材料)を整理したいことです。中長期的な視野での制度改革については消費者委員会専門調査会で議論することになると思います。

9.消費者委員会10周年記念シンポジウム

 6月23日(日)に、今後の消費者行政の充実に向けた視点でSDGsをテーマに開催します。

以上

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