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「水素・燃料電池自動車関連学習会
〜水素社会の実現に向けて〜」を開催しました

 平成29年6月9日に閣議決定された規制改革実施計画において、次世代自動車(燃料電池自動車)関連規制の見直し事項として、計37項目が掲げられており、その中に「水素・燃料電池自動車関連規制に関する公開の場での検討」が挙げられています。

 そこで、安全確保を前提に水素・燃料電池自動車に関連する規制のあるべき姿を幅広く議論し、科学的知見に基づき規制の見直しを進めるべく、経済産業省に産業保安グループ・資源エネルギー庁共同事務局の検討会が設置され、平成29年8月より検討が始まっています。

 検討会の場で、消費者とのリスクコミュニケーションの必要性が指摘され、今回の学習会の開催となりました。学習の後には、燃料電池車を見学しました。

日 時:2018年7月4日(水)18:00〜19:45

会 場:主婦会館プラザエフ 5F会議室

参加者:42名

概要(事務局による要約)

「水素社会実現に向けた戦略と課題」(推進の面から)
泉田 大輔氏(経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部
 新エネルギーシステム課水素・燃料電池戦略室係長)
稲垣 有弥氏(経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部
 新エネルギーシステム課水素・燃料電池戦略室係長)

 現在、日本のエネルギー自給率は大変低く(2014年は約6%)、そのほとんどを海外の化石燃料に依存している。

 2017年12月に閣議決定された「水素基本戦略」では、水素を新たなエネルギーの選択肢として提示している。これにより、特定のエネルギー源に依存しないエネルギー供給構造変革や大幅な低炭素化が期待されている。

 しかし、現在はコストが高く、将来的にはガソリンやLNGと同程度のコスト実現を目標としている。また、現在は化石燃料に由来する水素製造を、将来は褐炭×CCS(CO2回収貯留)や再エネの活用によりCO2フリー水素としてエネルギーの低炭素化に貢献することを目指していく。

 水素を利用した燃料電池自動車(FCV)は約2,000台、水素ステーションは25都道府県108か所にまで普及している(参考:定置型の家庭用燃料電池システム「エネファーム」は現在約23万台まで普及している)。

 水素エネルギーについては「水素エネルギーナビ」(http://hydrogen-navi.jp/index.html)が開設されており、様々な情報発信をしている。

「水素社会実現に向けた戦略と課題」(規制の面から)
堀 宏行氏(経済産業省産業保安グループ保安課課長補佐)

 経済産業省の産業保安は公共安全を守る役割がある。水素に関連する法律は「高圧ガス保安法」。普及に向けた要望に応えて規制がどうあるべきかを今後も考えていくことになる。

「FCCJの組織について」
里見 知英氏(燃料電池実用化推進協議会(FCCJ))事務局次長

 FCCJは燃料電池の実用化と普及に向けた民間レベルの協議の場として、2001年に設立された。4つのワーキンググループのうち、FCV・水素インフラワーキンググループでFCVや水素ステーションの普及に向けた、ロードマップの策定や必要な法整備への提案などの取り組みを進めている。

 これまでのところ、実用化まで5年を目標にしていたが実際は15年ほどかかっている。

「燃料電池自動車(FCV)について」
岡本 英夫氏(本田技研工業株式会社ビジネス開発統括部エネルギービジネス開発部部長)

 水素に限らず、どのエネルギーにも危険は存在する。水素の場合、安全に使うためには、水素と空気の混合比の管理が大変重要になる。

 水素を利用した燃料電池(化学反応による電気エネルギーを利用)はガソリンエンジン(燃焼による熱エネルギーを利用)に比べ効率が高い、利用の際の排出物は水のみ、といった特徴がある。

FCVの水素充てんの所要時間は約3分、充てん1回あたりの走行距離は約700kmと、いずれもガソリン車と比べても遜色ない。

 また、FCVで発電した電気を非常用電源として活用することが可能(別途外部給電機が必要)。

 FCVの安全性について、大きな衝突も想定して「漏らさない」「検知して止める」「漏れた水素をためない」の3点が重要としている。その安全性を検証するために、評価やテストのための大規模施設が全国2か所にある。

 情報提供や啓発については、水素や水素社会についての書籍を刊行し、小学校の図書室等に寄贈している。

「水素スタンドについて」
辻 正寿氏(JXTGエネルギー株式会社新エネルギーカンパニー水素事業推進部副部長)

 水素ステーションは、設置方法(固定式/移動式)、運営方法(ガソリンスタンド一体型/単独型)、水素製造場所(水素製造装置がステーション内にあるオンサイト式/ステーション外にあるオフサイト式)などの違いにより分類される。

 水素ステーションの安全対策の考え方は「漏らさない」「早期に検知」「漏れてもためない」「漏れた水素に火がつかない」「周囲に影響を及ぼさない」の5ステップ。それぞれの対策前後のリスク評価を行い、一定レベル以下になるようにしている。

 横浜市・綱島の水素ステーションに、ショールーム「スイソテラス」を設置し、啓発・情報発信に努めている。

 質疑応答では、褐炭から水素を製造することがCO2削減にどう貢献できるのか、EV(電気自動車)とFCVとの違いとは、などの質問がありました。

 また、参加者アンケートでは以下の感想や意見が寄せられました。

  • 燃料・車・ステーションという多面的な話でとても勉強になった。
  • 全体像の中でFCVと定置(エネファーム)や他の位置づけについてもう少し整理してほしい。
  • 普及のために、安全性について異なった観点から、詰めていく必要があると思います。
  • 水素エネルギーは、日本がアドバンテージを獲得できる分野なので、積極的に推進していただきたい。
  • 目標ありきで急いでいるようなのが心配です。
  • 水素を何から作るかが肝心だと思った。しかしエネルギーを貯蔵する手段としては有効なので、活用できるよう整備が進むとよいと思う。
  • 経済性、安全性などを考慮して導入するためにはさらにハードルがあるように感じる。

参加者アンケートに寄せられた質問について、FCCJより回答をいただきました。

(1)事故や災害発生時の事業者と消防、警察等の対応や役割分担がどうなっているのか知りたい

→事故や災害等の緊急事態が発生した場合に備え、事前に地元消防と対応手順などを取り決めております。詳細は経済産業省第6回水素・燃料電池自動車関連規制に関する検討会資料 http://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/suiso_nenryo/pdf/006_01_00.pdf をご参照ください。

(2)水素の続けての充てんには弱いと聞いた事があります。その理由は何なのか知りたかったです。

→連続充填に弱いというわけではございません。水素の充填時には、水素の温度を−40℃まで冷やして充填いたしますが、連続して充填をすると空気中の水分によりノズルに霜がつく可能性があります。充填後はノズルにつく水分をふき取る等の対応で問題なく充填ができるものと考えています。

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