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2017年度 PLオンブズ会議報告会
「子どもの事故をどう防ぐ!?〜製品をめぐる子どもの安全〜」
を開催しました

 生活の中で子どもの事故ほど痛ましいことはありません。子どもの事故はどうすれば防げるのでしょうか。中でも製品に起因する子どもの事故はなぜ起こったのでしょうか。子どもの事故は親の責任だけではなく、製品を改善することで事故は減らせるはずです。しかし、子どもの事故が発生したときには、子どもの親は厳しいバッシングにさらされる状況があります。

 今回の報告会では、安全性の高い製品を開発するメーカーの責任や、社会全体が子どもの安全について関心を持つことの重要性について、そして、再発防止のために事業者・業界団体・行政に望みたいこと、また消費者・消費者団体にできることは何があるのか、といった点について、報告とパネルディスカッションで深め合いました。

【日  時】 6月30日(金)13:30〜16:00

【会  場】 主婦会館プラザエフ5階会議室

【参加者】 67名

【プログラム】

13:30 開会 開会挨拶:清水鳩子さん(主婦連合会)
13:35〜
報告1. 子どもの発達と起こりやすい事故
山中龍宏さん(緑園こどもクリニック院長)
報告2. 子どもの事故をめぐる裁判の状況 
伊藤崇さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)
14:45〜 パネルディスカッション
「子どもの事故をどう防ぐ!?〜製品をめぐる子どもの安全〜」
パネリスト: 山中龍宏さん(緑園こどもクリニック 院長)
西田佳史さん(産業技術総合研究所 首席研究員)
宗林さおりさん(国民生活センター 理事)
千代 勉さん(株式会社LIXIL 品質保証統括部品質マネジメント部)
コーディネーター: 中村雅人さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)
15:55 PLオンブズ会議からの提言
「製品の安全性を高めて子どもを事故から守りましょう」

〈ポイント(事務局による要約)〉

●報告1.山中龍宏さん(緑園こどもクリニック院長)

 今から20年ぐらい前から事故に対する考え方が、「事故」accident(予測できない、避けられない事象)から「傷害」injury(予測可能な事象)へと変わってきました。

 欧米では事故は技術問題と考えていますが、日本では努力すれば事故がゼロにできると考えています。一方、事故が起きると人の責任とされ管理体制が問われ規制が強化されます。しかし、事故が起こる前の予防については、対策が取られていません。

 傷害が起こった状況について、「変えたいもの」、「変えられないもの」、「変えられるもの」、の三つに分けて考えることが大切です。「変えたいもの」は(死亡数、重症度を下げる)ことが考えられますが、実際には変えられません。三つの因果関係を解明して、変えられるもの(製品の設計、製品の配置等)を使って、「変えたいもの」を制御する理論を開発する必要があります。

 傷害予防のために必要な三つのEとして、①環境・製品(Environment)、②教育(Education)、③法規制(Enforecement)が位置づけられています。

●報告2.伊藤崇さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)

 子どもの事故をめぐる裁判の状況の報告をいただきました。

 ①子どもの使用を製造者が想定している製品に関する判例として、「学校給食O-157食中毒死亡事件」「子ども靴前歯折損事件」「トイレブース開き戸型ドア親指切断事件」、②子どもの使用を製造者は想定していなかった製品に関する判例として、「菓子袋の角による目の負傷事件」「収納箱児童窒息死事件」など。また、「誤使用」という用語は誤解を招きやすく、子どものハザードに関して不適切な意思決定につながりかねないとの指摘がありました。

●パネルディスカッション「子どもの事故をどう防ぐ!?〜製品をめぐる子どもの安全〜」

 「子どもの事故はどこでどのような事故が発生しているのか」「事故情報は集まっているのか」「事故情報を活用して、製品が改善された事例」「子どもの事故を減らすための原因分析のポイント」などについて意見交換を行いました。

 事故情報は製品の開発・改善にとってたいへん重要で、ボタン電池の誤飲事故については、電池ぶたを開けにくくする、落下の衝撃によって壊れにくくすることや、クローゼットのドアに指が挟まれないようにするなど、具体的に改善した製品のお話がありました。

 子どもの事故情報が活かされないと予防につながらない、事故に遭われた方は、多くの人が遭うはずだった事故に最初に遭ってしまった被害者への配慮も必要、社会全体で支える仕組みが必要など、さまざまな立場からの発言がありました。

※最後に、「製品の安全性を高めて子どもを事故から守りましょう」と題して、行政・事業者・消費者それぞれが果たすべき役割についての提言を発表しました。

●参加者感想(抜粋)

  • 子どもの事故を一件でも減らせるよう、できることをすすめていきたいと思った。いろいろ勉強になることがあった。各専門家の先生の貴重なお話が伺えてよかった。
  • 子どもの製品事故情報の開示が大事だと思います。どんな状況で起きたのか、詳しい現場の状況がわかれば、予防につながり、製品づくりにもいかしてもらえるはずです。
  • 消費者目線を心がけているつもりでも、このような場に出てみると十分でないことを実感できました。判決した枠組みや解決は変化していくものだと改めて思いました。日頃の事故事例の情報収集が必要だと思います。
  • 企業側として参加させていただきましたが、企業という立場で何ができるか、何をすべきか、考えていきたいと思います。ありがとうございました。

 以下の提言は、2017年7月10日 内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、経済産業大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長へ提出しました。

(提言) 製品の安全性を高めて子どもを事故から守りましょう

 日常生活の中での子どもの製品事故はなかなかなくなりません。消費者庁・国民生活センターの資料(2014年度〜2016年度)から主な子どもの製品事故を拾ってみると、①乳幼児のボタン電池・医薬品・パック型液体洗剤等の誤飲、②子ども用マニキュアからホルムアルデヒド検出、③回転玩具による目の負傷、④エア遊具による事故、⑤ブラインド等のひもによる窒息事故、⑥暖房器具等でのやけど及びけが、⑦お店のショッピングカートからの転倒・転落事故、⑧歯磨き中の喉突き事故など、実にいろいろな場面で製品事故が起こっています。

 このような製品事故から子どもを守るためにはどうしたらよいのでしょうか。

 今年度のPLオンブズ会議報告会は「子どもの事故をどう防ぐ!?〜製品をめぐる子どもの安全〜」の表題で、子どもの製品事故の状況、子どもの発達や行動特性と事故の関係、事故情報の集約と活かし方、製品安全の向上に向けた取り組み、製品に関する情報(警告)のあり方など、さまざまな角度から論議を行いました。

 その論議を踏まえ、子どもの人権を尊重し、子どもを製品事故から守るために、つぎの通り提言します。

1.事故情報を再発防止に役立てるために、消費者庁および各省庁がリーダーシップを発揮し、保護者・事業者・施設・医療機関・消防・警察・学校等からより多くの事故予防につながる情報が収集できるよう、情報収集フォーマットを改善するなど、情報集約のあり方を改善すること。また、対策を行った際には、経年的にデータを追跡し効果評価を行うこと。

1.集約した事故情報を役立てることができるように、国は事業者や消費者に対し発信していくこと。また確実に情報が届くように、事業者団体や消費者団体等を巻き込みながら、発信方法を工夫・改善していくこと。

1.事業者は、子どもの発達や行動特性を十分考慮して、製品の安全性を高めること。
(製品の開発等にあたっては、つぎのような改善事例を参考にされたい。電気ケトルのお湯漏れ防止、炊飯器の蒸気やけど防止、ブラインドひもの事故防止、子ども用歯ブラシの喉突き防止、ボタン電池や医薬品等蓋の改善など)

1.事業者は、製品の危険・警告に関わる情報が的確に消費者に伝わるよう、「取扱説明書」をはじめ消費者に対する情報提供のあり方を再検討し、改善すること。

1.消費者は、生活の中で以下の点に留意すること。

  • 安全性に配慮した製品を選択すること
  • 取扱説明書・使用上の注意を必ず確認すること
  • 安全な使い方やヒヤリハットの体験を他の人にも伝えていくこと
  • 子どもの事故を「親の責任」にとどめず社会的に未然防止に取り組む観点から、事故の経験を消費生活センターに知らせるなどして社会全体で事故情報を共有し、社会の中で子どもの安全に対する関心を高めていくこと

2017年6月30日
PLオンブズ会議
(一社)全国消費者団体連絡会

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